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不完全少年の憂鬱  作者: 仲村薫
過去編
14/20

凡人

頑張って過去編四話にまとめようと思ったら少し長くなってしまいました。

翌朝、鈴芽から一本の電話があった。

『今日、一緒に学校行かない?』

特に用事もなく、断る理由もないから行くとは言ったのだが、一体何なのだろう。今まで、下校時は一緒に帰ることはあったが、一緒に登校したことは一度もない。

部屋を出ると、雨が降っていた。窓の外は見ていなかったから、気づかなかったのだ。慌てて部屋に戻り、傘を取る。

「あー、憂鬱だ」

一人で、そう呟く。鈴芽は、なぜこんな雨の日に誘ったのだろう。

鈴芽の家の前にたどり着く。徒歩一分もかからなかっただろう。二階建ての一軒家。羨ましい限りだ。一人でこんなところに住んでも、かえって寂しいだけかもしれないが。

それから一分くらい待っていると、入口のドアから、見慣れた制服を着た鈴芽が出てきた。

「ごめん、待たせちゃった?」

「いーや。僕が予定より早く来ただけだ」

「それって結局待ってるよねぇ......」

「そんなことより、早く行こう。雨が、大降りになってきたし」

この前読んだ小説で言うと、車軸を下したような。ざぁざぁと傘を打ちつける音が、より一層不快感を募らせる。雨はじめじめするから、嫌いだ。

「うん。行こっか」

それから。

僕と鈴芽は、何も喋らなかった。

いつも以上に、というより、いつも以下だ。

鈴芽は、何か喋ろうとしていたけど。

僕はずっと、雨が奏でるノイズに、耳を傾けていた。なんとなく。

雨よりも、この雰囲気の方が、居心地が悪かったから。


『囲島、お前、今日学校に秦野さんと来たんだって?』

『見間違いなんじゃないか?』

『いやいや、俺の友達が言ってたぜ。お前と秦野さんがイチャイチャしてるところを見たってな!!』

そんな会話をすることになるんじゃないかと警戒した自分が、馬鹿だった。

僕には、友達がいない。

それは別に、自分から敬遠してるわけじゃあ、ないんだけど。ただ、歩み寄っていないというだけで。それが原因だと鈴芽には言われた。

『でも、たかが中学で友達がいないなんて、大したことじゃないだろ』と鈴芽に言ったら、鈴芽に『中学はそれがすべてなのに』と言い返された。

いや、すべてではないだろ。勉強とか、色々あるだろ。

その時の鈴芽は、少し寂しそうな顔をしていた。なんでだ?僕に友達がいないから可哀想だとでも思ったのか?

まぁ、そんなことはいいとして。

問題は、その鈴芽だ。

今日この教室に入ってからというものの、ほとんど喋っていない。

声をかけても、うんだのへーだの返事をするだけ。

今も、何もかもが上の空とでも言うように、教室の天井を見つめてぼーっとしている。

何か––––––あったのだろうか。

「............はぁ」

心配するなんて、僕らしくもない。

物事は、静観していればいい。

出来事は、傍観していればいい。

僕は部外者。

僕は第三者。

僕は観測者。

関わるなんて、御免だ。

普通なんかに、関わるのは、

「くそっ............」


どうせ、言い訳なんだろ?

結局は。

異世界とか、超能力とか。

夢とか、理想とか。

全部、言い訳なんだろ?

言えよ。

逃げるな。

現実から、逃げるな。

主人公とかに、なりたいんだろ?

あんなに言ってたじゃないか。

なのに、なんで部外者なんだ?

なんで第三者なんだ?

なんで観測者なんだ?

そんなの、決まってるじゃないか。

それは。

お前が。

□□□□□。ただ、それだけだろ?


「あー。どうしたんだ?鈴芽。なんかあった?」

結局。

幼馴染だからとかなんだとか理由をつけて、折り合いをつけることにした。

面倒だけど、しょうがない。

幼馴染とは、そういうものだ。

「いや、何もないよ?なんでそんなこと聞くの?」

そう言って鈴芽は、小首をかしげる。

「いや、何でもないわけないだろ。授業中も、休憩中も、ずっとぼーっとしてたけど」

「いや、本当に、何でもないよ。大丈夫、囲島君が気にかけるようなことじゃないから」

なんだろう。もしかして僕は今、拒絶されてるのか。

退くべきか、退かぬべきか。

昔の武将達は、戦の時はいつも迷っていただろう。まぁ、冗談は置いといて。

「うーん、まぁ、なんかあったら、言ってくれよ。とりあえず、できる限りのことは、やれるだけは、最低限手伝ってやるから」

「うん。ありがとう」

その時、僕は久しぶりに、鈴芽の笑顔を見たような気がした。いや、朝笑ってたじゃん。

けど、こんなに笑ってなかったこと、今までなかったからなぁ。

鈴芽は、いつも笑ってたから。

そうして僕は、ひとまず席についた。

机の中で、ジジジジジ、と、携帯電話が震えた。

「メール?」

受信メールの欄を開くと、鈴芽からメールが来ていた。なんでわざわざ、メールで伝えるんだ?

内容は、『今日一緒に帰らない?』とのこと。尚更、直接伝えるべきだと思うが。

まぁ、どうでもいいけど。

『OK』。


帰り道。

特にいつもと代わり映えのない、見慣れた景色が、視界に入る。

「で?わざわざメールで聞いたってことは、なんかあるのか?」

「え?あ、うん、まぁ、ある、かな?」

「どっちだよ」

足を進めながら、横にいる鈴芽を見る。

緊張しているのか、動きがロボットみたいにだった。いや、ロボットだってもう少し滑らかに動くだろう。昨今のロボットを舐めるんじゃない。

「もう少し、肩の力を抜いたらどうだ?まず、なんでそんなに緊張してるのかって話だが」

「そんなに、カクカクかなぁ?自分ではなめなめに動いてるつもり、なんだけど」

「その言い方やめろ」

なんだなめなめって。スライムか。

「............」

「............」

沈黙。朝みたいで、流石に気まずい。

「あー、そういえばさー」

「あの、さ」

そうやって、僕が世間話をしようとすると。

鈴芽が、いきなり口を開いた。

「あの、私、今日一日と、あと昨日とか、ずっと考えてたんだけど」

たどたどしく。顔をよこに向けると、鈴芽も、こちらを向いていた。真っ直ぐに、見据えていた。途端に気恥ずかしくなり、顔を背けてしまう。

「私、ずっと考えてたんだけど」

そう言って、鈴芽が、僕の前に出る。

結果、顔を背けづらくなる。

鈴芽の顔は、真っ赤だった。

昨日みたいに。

「私、囲島君のことが––––––」

そして。

鈴芽が何かを言おうとして。

倒れた。

電源が切れたかのように。

そして、その後ろには、一人の男が立っていた。ばちばちと、電気のようなものを発する......まるで、スタンガン、のようなものを、持って。

「誰だよ、お前」

「答える義務がない。よって、その問いには答えない」

男は、まるで機械のような、喋り方だった。スーツを着て、眼鏡をかけている。歳は、30歳くらいだろうか。

「鈴芽を、どうするつもりだ」

「私は何も知らない。よって、その問いには答えられない」

そう言って男は鈴芽を担ぎ上げ、停めてあった車の助手席に座らせた。いや、この場合は、置いた、と言った方が、いいかもしれない。

「さっきから、何なんだよ、その喋り方!!なんで鈴芽を連れて行くんだよ!!お前誰なんだよ!!」

誘拐犯とは思えなかった。

明らかに、雰囲気が違う。

「喋り方は、このように訓練された。そして二つ目の問いと三つ目の問いは、答えられない。三つ目の問いにあえて答えるならば、私は、

『死神』と呼ばれる組織に、雇われた」

「『死神』?なんなんだよ、それ!!意味分かんねぇんだよ!!さっさと鈴芽を返して帰れ!!」

動転していた。

混乱していた。

状況に。

状態に。

思考が追いつかない。

思考が働かない。

言葉が考えられない。

感情的になってしまう。

理性が機能していない。

「それらの問いに、私が答える義務はない。よって、答えない」

そう言って、男は車に乗ろうとする。

「待てよ!!答えろよ!!おい!!」

「私はもう、お前の問いに応じるつもりはない。それでも、お前が問いを重ねるのならば。お前の意識も奪う。もしくは。

お前を殺す」

殺す?

それって、どういうことだ?

「おい、それって、どういう––––––」

「こういうことだ」

そう言って。

男は、僕の目の前に立っていた。

そして、拳銃で僕の腹を撃った。

撃った。

撃った。

撃った。

拳銃?って、なんだ?

エアガンじゃないのか?

これは、一体。

何なんだ?

「あ、、、、あ?、、、、

がぁあぁぁぁぁああっあっぁっぁぁっぁぁぁああああぁっぁっぁぁああ!!!!!!」

血。血。血。血。血。血。血。血。

どばどばと。絶え間無く、血が流れ出る。

痛い。

今までの人生で、感じたことのないような、痛み。痛み。痛み。

「が......はっ、......お、まえ、いった、い?」

「お前の問いに応じるつもりはない。よって、これはただの独り言だ。銃で撃った。ただ、それだけのことだ」

そう言って、男は車の方へ歩く。

それだけ?

それだけって、なんだよ。

死ぬかもしれないんだぞ?

殺されるんだぞ?

人が、死ぬんだぞ?

それが、それだけなのか?

「お、い、なんで、だよ?」

「問いが分からない。よって、私は答えない」

「なんで、う、つん、だよ」

「邪魔だからだ」

と。

急に、男は喋り方を変えた。

面倒臭くなったのだろうか。

「邪魔だから、殺す。邪魔者だから、殺す。当たり前のことだ。

私の回答は、これにて終了する」

そう言って、男は車に乗ろうとする。

地面を這いずって、その足を、掴んだ。

「何の真似だ」

「ま、てよ。鈴芽を、返せって、言って、るだろ」

「........................。分かった。そうか。この後に及んで、まだこの少女の身を案ずるのだな?」

「か、え、せ」

途端に、体が持ち上げられ、重く、鈍い衝撃が、鳩尾を襲う。

一瞬の、浮遊。

そして後から、壁に叩きつけられる。

「がっ、はっ、はぁっ、、っっ!!!」

「お前は、そこまでして殺されたいのだな?だったら、俺が殺してやろう」

先程とは打って変わって、残酷な笑みを浮かべた男は、言う。

「さっきのは、営業用、というやつだ。本来の俺は、もう少し、殺しに飢えている」

男が、近づいて来る。

「少年。お前は、必要以上に関わり過ぎた。あのまま、知らん顔をしておけば、なにもされずに済んだ。だが、お前は関わった」

そう言って。

男の顔は、狂気に歪む。

「死にはしない、ぎりぎりまでいたぶってやろう。あとは勝手に、野垂れ死んでくれ」



死んでるのか?

僕は、今どうなってるんだ?

鈴芽は?

「............っ!!」

身体中が、痛い。動かすだけで、激痛が走る。

目を開けると、そこは何ら変わりない、いつもの景色。

あの車は、もう無かった。

助けられなかった。

助けられなかった。

助けて、あげられなかった。

「くそ、が」

ああ。

なにが。

なにが、異世界だ。

なにが、超能力だ。

こんな近くのやつも、守れないで。

こんな日常で、殺されて。

「くそがぁぁぁあああっっぁぁっぁぁぁあぁああああぁあぁぁぁああぁぁぁぁぁああっぁっぁぁぁあああ!!!!!!!!」

怒り。

悔しさ。

悲しさ。

無念さ。

情けなさ。

無力さ。

すべてが、憎い。

助けたい。間に合うのなら。

助けられない。間に合わないから。

じゃあ。

あいつは。

秦野鈴芽は、誰が助けるんだ?

誰が、助けてくれるんだ?

まだ。

やることが、たくさんあるのに。

残ってるのに。

死にたくない。

死にたくない。

死にたくないまだやることがあるから生きたい死ねない鈴芽はどうなる僕はどうなる□□生きられる無理だ死ぬのかこんなあっさり嫌だ助けてくれよ誰が鈴芽を助けなきゃけどあいつと闘うまた死ぬ□□力が欲しい今もう死ぬのか死にたくない鈴芽があの時鈴芽はなんて言おうとしてた死ねないあいつを残して聞かなきゃ死ぬ前に生きたい□□鈴芽は残されてどうするんだ駄目だ力そうだ力があれば力が欲しいそうすれば僕でも助けられる鈴芽のことを鈴芽が鈴芽に鈴芽は鈴芽を。

鈴芽鈴芽鈴芽鈴芽鈴芽鈴芽鈴芽鈴芽。

「............鈴、芽」

助けたい、のに。

まだ。

□□□□□のか。

力がないから?

僕は。

馬鹿か。

いつまでもいつまでも。

なんで、そんなに、□□□□□んだ。

鈴芽を、助けなきゃ、いけないのに。

誰かが行ってくれるとか、甘えるなよ。

□□□なよ。

怖がるなよ。

「まだ!!!死ねないんだよぉあおあおああぁっぉあぉぉああおぉあお!!!!!!」

嗚咽にも聞こえるその叫びは。

確かに。

届いた。

一人の、男に。

「力は欲しいかい、少年君?」

水野、周太郎に。


答え合わせ!!

□□□□□・・・怖がってる

□□・・・怖い(恐い)

だからなんだ!!

次回、『力』!!

お楽しみに!!

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