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不完全少年の憂鬱  作者: 仲村薫
過去編
13/20

無力

過去編第一話です。一応二章目になってますが、ここから読んでくださっても構いません。

これは、二年前の、春のお話。


☆ ☆ ☆


「囲島君は、どこの高校に入るの?」

隣を歩く幼馴染は、ふと思いついたように、そんなことを聞いてきた。

秦野鈴芽。家が近いこともあり、小さい頃から親しかった、いわゆる幼馴染である。

「地元の××高校だよ。そんなに頭が良いわけでもないし、無難なところだろ?」

「ふーん。そっかぁー」

そう言って鈴芽は、なぜだか満足そうな顔をした。

散ってしまった桜の花びらが、地面を覆いつくすように、ピンクに染めている。

始業式も終わり、本格的に高校受験のことを考え出す頃。しかし僕の頭は、勉強など関係ないとばかりに、全く別のことを考えていた。

夢。将来の夢、とは似ても似つかない、妄想と呼ばれる類のものだ。

はっきり言えば。異世界とか、超能力とか。そういうのに、憧れているというわけだ。

僕は、本当は勇者だったー、とか。

実は、超能力者だったー、とか。

そんなことはあり得ない。そう思っている自分もいる。理性というやつだ。だけど、世界のどこかには、宇宙のどこかには、そのくらいの夢があってもいいじゃないか。それが、僕の手にあったって、不思議じゃない。そうやっていつも、理屈をねじ伏せているのだった。

「それで?鈴芽は、どこの高校に受験するんだ?」

「そこで、行くの、って聞かないところが、囲島君少し毒舌なんだよねぇ」

「いいだろー、別に。毒舌だって何だって」

「まぁね。だけど、もう少しみんなと仲良くなった方がいいよ?中学の同窓会とかがあったら、一人で寂しいよー」

鈴芽は少し意地悪な笑みを浮かべて、僕の前で後ろ歩きをする。ちょうど、向かい合って歩いている感じだ。

「んー。まぁ、鈴芽がいれば充分だろ」

友達作るの、苦手だし。

そう言うと、鈴芽はいきなり立ち止まった。

「え、あ、うん、そ、そうだね」

見ると、鈴芽の顔はトマトみたいに真っ赤だった。

「お、おい。大丈夫か?真っ赤だけど」

そう言って、鈴芽の額に手を伸ばそうとすると、鈴芽は逃げるように後ろへ下がり、

「だ、大丈夫だから!!きょ、今日は塾あるから、先帰るね!!じゃあねー!!」

鈴芽はそう言って、走っていってしまった。

すぐに、鈴芽の姿が見えなくなる。50m六秒台だからなぁ。確か鈴芽は、文芸部だったはず。運動部でもないのに、どうしてあそこまで足が速いのだろうか。ちなみに、僕はペーパークラフト部。見事なまでに、部員全員幽霊部員だった。確か、今年で無くなったはずだ。いや、だってなにするか分からない部活なんてねぇ。

それはともかく。

「うーん............」

最近、なんだか鈴芽の様子がおかしい。ああやって、いきなり逃げるように去っていくことが多くなった気がする。

まぁ、関係ないけど。

春の風は暖かく、撫でるように、僕らの町を通り過ぎていった。



ピコピコピコ。

ピコピコピコ。

ピコピコピコドーン。

「あぁぁぁー」

ゲームの中で、僕の分身とも言える女性キャラが消えていく。上にあるカーソルには、『ミツキ』という名前と一緒に、死亡を示すマークが付いていた。『ミツキ』は無数のキラキラした欠片を飛び散らせ、風に乗ってどこかへ飛んでいってしまった。これでまた、拠点の街からやり直しである。

「はぁぁぁー」

なぜ女性なのかと言うと。

いや、みなさんもありませんか?キャラを女性にしたくなること。ないですかそうですか。まぁ、思春期的な衝動ですよ。

名前は自分の名前にちなんで、というかもろそのままなんだけど。両親はもう少しいい名前を考えられなかったのだろうか。三月に生まれたから三月って。単純過ぎる。そのせいで、名前は僕のコンプレックスの一つだ。

僕は、一人暮らしをしている。

名前を付けてくれた両親は子供の頃死んでしまい、中学二年生までは叔母さんと暮らしていたんだけど。厄介みたいだったから、アパートに一人暮らしをすることにした。両親の家族から毎月仕送りを貰っているので、金に困っているということはないけれど。これが、一人で家事をやるとなると、結構大変なのだ。

最初は鈴芽の家に来ないかと誘われたけど、断った。向こうも、嫌がるかもしれないし。年頃の女の子の家に突然男子が来たら、普通は拒絶するだろう。

「あー........................本当に」

夢を見るのは、大変だ。

どれもこれも、悪いのは。

現実が、こんなにつまらないから。

だから僕らは、夢を見てしまう。

大人はよく、「現実を見ろ」と言うけれど。

「綺麗事だ」とか言うけれど。

こんな腐った現実(リアル)を見て、何になる?

こんな汚れた世界で、何が綺麗事だ。

こんな世界で生きるなら、まだ夢を見ていた方がいい。

夢は、美しいから。

夢は、理想だから。

だから。

「はぁぁあぁー」

だからせめて。

眠る時くらいは、夢を見させてくれ。


主人公の名前を決めてみました。

特に重要でもなんでもないんですけど。

次回、『凡人』!!

お楽しみに!!

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