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不完全少年の憂鬱  作者: 仲村薫
終わりの始まり
12/20

『思考伝導』

『思考伝導』・・・第三のチート能力ですね。

僕は白石に連れられ、体育館の裏に来ていた。周りからすれば、告白でもされているように見えるだろう。

逆に、本人達は至ってシリアスなんだけど。白石の目が笑っていない。それはいつものことか。

「お前に話したいことというのは、私の能力のことだ」

白石は、そう切り出した。

「私の能力は、『思考伝導』。あの人......母親からは、そう呼ばれた」

「『思考伝導』......って、ちょっと待てよ。お前の能力は身体のスペックが上がるってやつじゃ、なかったのか?」

能力とその名前が、全く結びついていない。

「あれは、嘘だ......本心を、知られたくなかったから」

「本心?」

白石が目をそらす。

「私の思考は、直接的に周囲に影響する。私が他人を拒絶していれば、誰とも関わり合いたくないと思っていれば、物理的にと言うより、精神的に、周りは私に関わろうとしなくなる。それが、『思考伝導』」

「でも、お前は昔、火災に遭ったんだろ?その時は、なんで......」

「対象が、人間だけとは言っていない。私はその時、生きたいと思った。それが周囲の炎に影響し、助かった。その時父親のことも考えていれば、父親も助かったかもしれないがな」

そう言って、目を伏せる。

悔しそうに。哀しそうに。

それは、自分の所為だと。白石は、そう言いたいのか?

もしかしたら白石は、今まで起こった、今までに目にした全ての不幸を、自分にも責任があると、考えているのか?

それは、流石に。

背負い過ぎだろう。

「思いが強ければ強いほど、周囲への影響も強くなる。できる限り、頑張ろうとはした。他人が問題に直面していれば、それを乗り越えられるように願ったりな。でも、そんな軽い気持ちじゃあ、駄目らしい。そうやって、思いが力にならなかった時は、自分のその人に対する思いが足りなかったんだと、いつも後悔していた。次第に、疲れていったよ。なんで私が、辛い思いをしなきゃならないんだろう、他人のことで、ここまで悩まないといけないいだろう、とな。そして、私は人を拒絶するようになった。そしたら、今まで周りにいた人も、どんどん離れていく。自分が、怖かった。他人を、心の底から拒絶できる自分が、怖かった。私は結局、周りの人のことをそれだけにしか思っていなかったということだからな。自己嫌悪に陥ったよ」

力のある者は、助けることが出来るから、他人の不幸を目にした時、自責の念にかられる。助けるか、助けないか、葛藤する。けれど、彼女は、その力が大き過ぎるから。普通の人間では手の届かない問題でさえも、葛藤してしまう。

「それじゃあ、本心って言うのは......」

「口ではああも拒絶しておきながら、心の奥深くでは、助けて欲しいと、そう思っていたんだろう。だから、お前が来た。私の力の影響でな」

「そんなことは––––––」

「ないと、言い切れるか?」

「............っ」

思わず、言い淀んでしまう。

「100%なんて、あり得ない。お前は、そう言ったよな。お前の、助けたいという気持ちに、私の力の影響がなかったと、お前はそう言い切れるのか?」

「............」

沈黙してしまう。

「お前が、何の影響もなく、たった一人で私を助けると、言い切れるのか?もしも私に力がなかったら、あの時、お前は私の前に立って、私を庇ったのか?」

白石は、俯いたまま。

地面には、ぽつぽつと、涙が零れていた。

僕は。

僕は。

「私が、昔助けられなかった人に似ていると言ったな............じゃあ、もしも私がその人と似ていなかったら、お前は私を助けたか!?」

「............」

「何とか言えよ......」

僕は。

僕は。

「お前は、私を助けてくれたのか!?」

そう言って、白石は僕の胸倉を掴み、体育館の外壁に打ちつける。

「助けろよ!!あの時みたいに!!助けるって、言ってくれよ!!」

白石は、泣いていた。

大声を張り上げて、泣いていた。

「助けろよ!!助けろよ!!助けろよ!!

私を、助けてくれよ............」

そう言って、白石は僕の胸に顔を押し付けた。涙を、隠すように。


何分経っただろうか。

白石は顔を上げて、僕から離れた。

「すまなかった。みっともないところを見せてしまって」

白石は、そう言って苦笑いした。

「そろそろ、次の授業が始まるから、もう行く。お前も、留年したくなかったら、少しは授業に出ろ。じゃあな」

そう言って去っていく白石に、僕は何も言えなかった。


白石は僕に、何を求めていた?

僕は白石に、何を求めていた?

僕は。

僕は一体、誰を助けたかったんだ?

白石百合乃か。

それとも。

鈴芽の、面影か。

僕は、どちらを、助けようとした?

答えは、出なかった。

授業の開始を告げるチャイムが鳴り響く。

シャツの胸元に触れると、まだ少し、濡れていた。




次回からは3、4話ほど、過去編を書いていきたいと思います。ついに囲島君の謎が明らかに!?

次回、『無力』!!

お楽しみに!!

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