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42 妖怪大戦争?

「お姉ちゃん見て。河童」


「あ、ホントだ」


窓の外では河童の集団が素手で戦っています。


「河童の抗争だね」


「難しい言葉知ってるんだね」


「偉い?」


「うん。偉いよ」


「じゃあぎゅってして」


「うん」


ぎゅー。

私はくうちゃんを両手で抱きしめますが、人間の子供を抱きしめている感覚じゃありません。

どうしたって重さがないので、人形を抱きしめている感じです、でもとても暖かいです。


「さっきの本当に河童駅だったんだね」


「ねー。お姉ちゃん河童は初めて?」


河童は初めて?

なんというか、今後の人生で絶対聞かれなさそう。

人生初河童。


「うん。初めてだよ。結構血の気、多いんだね」


「ねー。こわーい」


河童ってもっとのんびりした感じだと思ってた。

水辺で呑気に釣りしてるようなイメージ。

なんか信じられないくらい好戦的。

重そうなパンチを繰り出している。

い、痛そう。

それともあの河童さん達は河童界でも異端、なのかな。

と思っていたら、ぞくぞくと河童が増えていきます。

怒涛の河童。

ひょっとしてこれは河童界の天下分け目というやつなのでしょうか。

河童の関ケ原。

河童駅で降りたハンター達はこれを見に来たんでしょうか、それとも参戦するつもりでしょうか。

総大将はどこにいるのでしょう。

あ、多分いた。

あのおっきい河童さん。

凄い、巨神兵みたい。

え、あ、あっちからも出てきた。

わー、河童の巨神兵対決。

普通サイズの河童さん達の戦闘が止まります。

最初からこうすれば良かったんじゃ。

電車はどうしたって進んでしまうため、勝負の行方を知ることはできなさそうです。

残念。


「お姉ちゃん、見てー。だいだらぼっち」


くうちゃんが窓を開けて身を乗り出したので、私は慌ててその小さな背中を抱きしめます。


「危ないよ、くうちゃん」


「見てー、あそこの山だいだらぼっち」


「あ」


山と山の間から歯を食いしばった厳しいお顔が見えています、頭はスキンヘッドです。


「あれがだいだらぼっち?」


「そうだよ。おっきいね?」


「そうだね。でもくうちゃん危ないよ」


「だいじょーぶ。僕強いから」


「うん。でもおっこちちゃうかもしれないからね。お姉ちゃんのお膝乗ってて」


「うん。僕いいこだからお姉ちゃんが心配ならやめてあげるね」


「ありがとう」


電車が止まりました。

駅の名前らしきものは見えません。

着物姿のおじいさんが私達の目の前の席に腰を下ろします。

他にもいっぱい空いてるのに何故向かいの席に?

よく見るとおじいさんはとても、とても大きな頭をしています。

首が細いので重そうです。

もしかして。

 

くうちゃんが私に囁きます。

 

ぬらりひょん。


やっぱり。

そうだよね。

そうに決まってるよね。

ぬらりひょんってどんな妖怪だっけ?

確か勝手によそのお家に上がり込んで、ご主人様面するだけで、無害なんだったよね。

必殺技とかなかったし。


「お嬢ちゃん」


私?

なんか、思ってた声と違う。

かっこいいおじさんの声だ。

声だけなら自分ラスボスいけます、みたいな。


「はい」


「どこまでいく?」


「終点までです」


「そうか」


会話終わり?

なんだろ、このダンジョン。

妖怪大戦争でもあるの?

あ、違うか。

ここはダンジョン。

ハンターの狩場だから、さっき降りた人達はだいだらぼっちを倒しに来たんだよね。

妖怪をただ見に来たわけじゃないんだよね。

なんかでも、ぬらりひょんさん倒すのやだなー、私。

だってどう見てもただのちょっと頭の大きなおじいさんんだし。

目の前ではじけ飛んだらやだ。

可哀そう。

お願いだから何もしてこないでー。


「お姉ちゃん見て。海坊主」


「ホントだー」


ぬらりひょんのおじいさんは次の駅で降りていきました。

電車が動き出すと自動ドアが開き、しわしわの頬っぺたのような質感の壁が現れ、狭いドアがぐにゃっとゆがむと卵のような形をした頭のような、瞼のように見えるしわのような、よくわからない謎の塊になりました。


「ぬっぺふほふだよ」


「あ、知ってる」


モンスター図鑑で見た。

あれ見るの結構好きなんだよね。

気が付いたらずっと見てたりする。

ぬっぺふほふはいくらでも席が空いているのに私達の目の前に腰を下ろします。


「たぷたぷしてる」


くうちゃんがぬっぺふほふのたれに垂れ下がった顎っぽい部分を掌で下から揺らします。

わー、刺激しないでー。

あ、でも、モンスターが攻撃してこなかったらカウンターは発動しないわけだから、大丈夫、かな。


「わー、やーらかーい。お姉ちゃんも触ってみなよー」


「え、あ、うん」


私はぬっぺふほふの頬っぽいところをそうっとつつきます。

わ、柔らかい。

赤ちゃんのほっぺみたい。

怒ってないかな、大丈夫かな。


「ねー、やらかいでしょー」


「うん」


ぬっぺふほふは口っぽく見える部分もありますが、一言も発しないまま次の駅で降りていきました。


「もう次終点だよ」


「え、もう?」


「うん」


そっか。

なんかあっという間に時間すぎちゃったな。

もうちょっと妖怪見たかった。

あれ、さっきの駅結構沢山ハンター降りてたよね。

皆終点まで行かないんだ。

終点ひょっとして何もなかったりする?


次は終点と大人のお姉さんっぽい声がします。

さっきのろくろ首車掌さんでしょうか。


次は終点ジゴク、ジゴクと聞こえました。

ジゴク?

聞き間違いでしょうか。


















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