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41 強いハンターは眠るのも上手

ドアが開いて車掌さんが入ってきました。

長い黒髪に赤い目をした威圧感溢れる美人さんです。

あ、そういえば切符買ってない。

これ無賃乗車になっちゃうんじゃ。

捕まっちゃう、どうしようと思っていると車掌さんの首が伸びてきて美人さんの顔が今目の前に。

どうやらろくろ首みたいです。

ひー。

綺麗な顔でもこれは怖い。

かじられちゃう。

ろくろ首車掌さんは目を細め妖艶な笑みを浮かべると、首を元に戻し何事もなかったかのように去っていきました。

どうやら大丈夫みたいです。

セーフ。


あー、ドキドキした。

もう二度と来られないかもしれないし、せっかくだから景色見ておこ。

電車は非常にゆっくりとしたスピードで進んでいきます。

窓の外では春を思わせるピンク色の花畑が視界いっぱいに広がっています。

どこまで続いているのでしょう、まるでピンクの海です。

あ、ピクシー。

初めて見た。

透明な羽が綺麗。

沢山いるなぁ。

ドレスの見せあいっこしてる、皆こったの着てるなぁ、フリルがいっぱい。

あ、ウインクしてくれた、手振ってくれた。

かーわいー。

花畑は秋を思わせる夕焼けみたいな色に変わっていきトンネルの中に入りました。

長いトンネルを抜けると、氷漬けにされたガーゴイルが出迎えてくれました。

あたり一面氷の世界です。

大中小とサイズの違うガーゴイルがいっぱいいます。

氷が解けたら今にも動き出し、電車の窓を突き破ってきそうです。

あ、凍らされたゾンビ。

先ほどまでのメルヘンふわふわファンタジー妖精の国から一気に厳しい現実を見せつける氷河の国へ。

なんというか、殺伐、不穏、寒そう。

あちこちに雪だるまも点在しています。

わ、なんておっきな雪だるま。

三階建てのお家くらいありそう。

作るだけで大変。

何人がかりで作ったんだろう。

あ、氷のお城。

ちょっと入ってみたい。

ひょっとして終点には雪の女王様でもいるのでしょうか。

というか、どういう世界観?

ダンジョン自由すぎる。

先輩は、見なくていいんだよね。

すごく疲れているみたいだし、見たことあるよね先輩なら。

ピクシーも氷漬けのガーゴイルも、凍ったゾンビも、巨大な雪だるまも、氷のお城もきっと先輩には珍しいものじゃないんだろうな。


お姉ちゃん。


弾むような小さな子供らしき声がしました。


窓の外に夢中になっていたので気づきませんでしたが、向かいの席には小さな男の子が座っています。

いつの間に。

男の子は水色の髪に青いビー玉のような目をしています。

白い長袖のTシャツに白のパンツ、靴も白の全身白コーデで可愛らしい小さな足をぶらぶらさせ、こちらをまっすぐに見ています。


「おねーちゃん」


私、だよね。

この車両私達しかいないし。


「えっと、なに、かな?」


「お兄ちゃんひどいね。デートなのに寝ちゃうなんて。そんな男は良くないよ。やめときなよ、お姉ちゃん」


「えっとね、デートじゃないよ。学校の授業だから。あとね、お兄ちゃんは疲れているから寝ててもいいんだよ」


「疲れてても女の子を一人で寂しそうにさせちゃだめだよ」


おませさんだ。

小学校にも入ってないよね、この小ささなら。

でもダンジョンにいるってことはハンターだよね。

私よりずっと、ずうっと強そう。

ここ多分C級ダンジョンだよね。

ってことはC級ハンター以上だから、この年で凄いな。

先輩も昔こんなだったのかな。


「お兄ちゃんは忙しい人だから寝てないとだめなの。身を粉にして働いているからちょっとでも回復しないと」


「みをこ?」


「えっと、ものすごーく一生懸命働いているってこと。お兄ちゃんは、沢山の人のために毎日頑張って戦っているの。だから寝られるうちにいっぱい寝とかないと」


「でも僕なら寝ないよ。一生懸命働いてるからって一緒に来た彼女をほっとくなんてひどいよ。お姉ちゃん可哀そうだから僕話し相手になってあげるね」


「え、ありがとう。えっと、僕は一人なのかな?」


「そうだよ。僕強いから」


「そうなんだ。凄いね」


「うん。お姉ちゃん寂しそうだから可愛い僕がお膝乗ってあげるね」


男の子は私の膝に飛び乗ってきましたが、それほどの衝撃はありませんでした。


「あれ、軽いね?」


ちょっと軽すぎるかも。

ぬいぐるみを膝に乗せているような、重みを感じさせません。

雪のように真っ白な肌、青い瞳は雪だるまについているみたいにまん丸です。

お人形さんみたい。

というより、お人形さんですって人に紹介しても、そうですよねって言われそう。


「お姉ちゃんのために軽くなったよ。偉いでしょ?」


「うん偉いね。ありがとう」


体重の調節ってことかな。

そんなことできるんだ。

あ、なんか先輩もできそう。

先輩が軽くなったら私でも眠っている先輩を運んであげられるのにな。

先輩をお姫様抱っこする私。

うーん。


「くうちゃんって呼んでいいよ」


「くうちゃん?」


「うん。くうちゃん。本名はナイショ。だからお姉ちゃんも名乗らなくていいよ」


「そっか。じゃあくうちゃんって呼ぶね」


「お姉ちゃん」


「あ、くうちゃん。ちょっと声、大きいかな。お兄ちゃん起きちゃうからもう少し声ちっちゃくできる?」


「お兄ちゃんなら終点まで起きないから大丈夫だよ。強いハンターは眠るのも上手だから、絶対に起きないよ」


「そうなんだ」


確かに先輩微動だにしない。

眠るのも能力なんだ。

なんか悲しい。

先輩に平穏な時間なんてないってことだもん。

今眠ってるのだってまたダンジョンで戦うためだし。

しょうがないのかな。

先輩はダンジョンに行くために生きてるんだし。

でも眠るときくらい全部から解放されていたらいいのに。


電車が止まりました。

どうやら駅みたいです。

ぞろぞろと他の車両からハンター達が降りていきます。


「終点はもうちょっと先だよ」


「くうちゃんも終点まで行くの?」


「うん。一緒だよ」


「そっか。行ったことあるの?」


「初めてだよ」


「そうなんだ」


電車が動き出しました。

駅の名前が河童、に見えたのですが見間違い、でしょうか。

















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