34 どうやって強くなったのかわからない
「あれ、帰っとったんやね。お疲れさん。偉いかかったなぁ。飯食うてきたん?」
「柿の葉寿司もらったからそれ食った。ダンジョンはすぐ終わったよ。中に入るのに時間がかかったんだよ」
「あー、世界遺産あるもんなぁ」
「それ。すぐ近くに世界遺産があるから、ハンターに暴れられたら困るって。で、協会が交渉するから、それまで待機してて下さいって言われてさー。しょうがないから近くにあるC級ダンジョンに行ってたんだけど、つまんなくてさー」
「そりゃお前からしたらつまらんやろ、しゃーないやん」
「楓連れてきたら良かったのになーって思ったよ。そしたらC級ダンジョンでも楽しかったのに」
「楓ちゃん?」
「うん。あ、そっか、楓連れてけたなら観光すればいいのか。世界遺産あるんだから」
「S級が暴れるかもしれへんのに楓ちゃん連れてくのはあかんやろ」
「でもさー。なんか最近一人でダンジョン行ってもつまんないからさー。いつでも楓連れてきたい。ハンターってさ、お守り持ってる人とか結構いるでしょ?」
「そやね。おるね」
「俺もお守りみたいにいつも楓のこと持っていたい」
「お守りにするには楓ちゃんちょっと大きいなぁ」
「ちっさいよ」
「まあ、お前からしたら誰でもちっさいやろけど」
「なー、ゆーとー」
「なーにー?」
「楓がさー、どうやったら強くなれるかって聞いてきたんだよね」
「なんて答えたん?」
「毎日ダンジョンに行くことって」
「うーん。三点やね」
「え、そう?」
「二点かも」
「えー、でもさー、俺自分が何で強くなったかわかんないんだよね。父さんにさー、今日から一日も欠かさずダンジョンに行くんだよって言われてさー、それ守って、毎日行ってたらいつの間にか世界最強になってた。ホントにそれ以外何にもしてないんだよ俺」
「そうなんや」
「うん。あのさー、勇人は、組んでる子、かのん、ちゃん?」
「かのんちゃん。選球眼のええかのんちゃん」
「せんきゅうがん?」
「ボール球振らんゆうことや。一番ええよ。くそボール三振すんのいっちばん萎えるわぁ」
「勇人はさ、かのんちゃんのこと強くしようとか思ってる?」
「思てへんよ。そもそもハンターなんて自分で強うなるもんやん。一緒にダンジョン行って倒せそうもないモンスター出てきたら補助してあげるくらいでええんちゃうの」
「でもせっかくタッグバトルなんて言い出したんだから、一年生を三年生は育てないといけないのかなって、それがこの卒業試験の趣旨なのかなって」
「珍しなぁ。お前がそんなこと考えとるなんて」
「そう?」
「うん。お前なーんも興味なかったやん。ダンジョン以外」
「そだっけ?」
「そやで」
「なんかさー、俺毎日楓とダンジョン行ってるけど、何もさせてないわけでしょ?」
「そうなん?」
「うん。だって楓回復はできるらしいんだけど、俺は回復してもらうことがないから何かさせるの難しいんだよね。魔法なんて人に教えたことないからわかんないし」
「まあ別に気にせんでええんちゃう」
「でもさー、俺が楓の成長妨げてんのかなって。回復以外なんかできるようにした方がいいのかなって」
「ほー」
「うん。なんか考えちゃって、昨日の昼からずっと時間あったから」
「ほーかー」
「うん。おかしいな、俺」
「おかしいかもしれへんね」
「もうわかんないこと考えないで寝よっかな」
「そやね、ゆっくり寝い」
「でもさー、明日楓校外学習だから明日も一緒にダンジョン行けないんだよね。あー、つまんないのー」
「あー、そういやそやったね、横浜やったっけ?」
「うん。俺らん時埼玉じゃなかった?」
「そやで、去年の一年は千葉。埼玉、千葉、神奈川を順番に回っとるんやろ」
「明日もつまんない一日確定か」
「なんやねん、それ。わからんやろ、まだ」
「わかるよ。楓に会えない」
「そんなに毎日会いたいん?」
「うん。会いたい。毎日あの顔が見たい」
「可愛から?」
「うん。可愛い。俺今楓のこと驚かせたいんだよね」
「そうなんや」
「うん。だから、どのダンジョン行ったら驚くかなーって」
「へー」
「楓見てるとすごく楽しい。全然飽きない。もっと見たいもっと見たいって思う」
「ええ子と組めて良かったねぇ」
「うん。でも楓何でも平気そうなんだよね。全然モンスター怖がったりしないし。可愛い可愛い言ってる」
「ああ見えて度胸があるゆうこと?」
「うーん、そうなのかな。なんか意外と平然としてる。ギャーとか言わないし」
「言って欲しいん?」
「うーん、そういうわけじゃないんだけど、あ、言ってくれてもいいけど、なんだろ、驚いた顔とか笑った顔とか、いろんな顔が見たい、まだ見たことない顔が見たい、楓の」
「見たことない顔」
「ゆーとー。どうやったら楓驚くと思う?」
「さあ、知らんよ。俺お前より楓ちゃんのこと知らんもん。それに俺が考えてええん?」
「あ、やだ。俺が楓のこと驚かせたい」
「ほうか。ほな自分で頑張るしかないなぁ」
「あ、でもあれだからね。驚かせたいけど怖がらせたいわけじゃないから。嬉しい、楽しい驚きだから」
「わかっとるよ」
「あー、びっくりしたっていうのでいいんだよ」
「そういうお前こそびっくりしたことあるん?」
「ないかも」
「ないんかい」
「楓びっくりしないんだよね。してるのかもしれないけど、なんか思ったより動じないっていうか、面白いんだよね。目が離せない。離しちゃったらもったいない」
「じゃあ常に見とかんとね」
「もう明日起きたら火曜日になってないかな」
「なるかい。明日はどう転んでも月曜や」




