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31 先輩が好きなのか、先輩の顔が好きなのか

「先輩のことが好きかもしれない、どうしよう?」


「うん」


恵美ちゃんは盛大に噴出した。


「笑うこと?」


「だって、まんまなんだもん」


「まんま?」


「想定通り過ぎて」


「でも、好きかもっていうかね、あのね、あの、先輩のことが本当に好きなのかわかんないんだよね、これで本当に好きなのかなって、えっと、確信が持てないんだよね」


「本当に好きって?」


「その、先輩の顔が好きなのか、それとも本当に先輩本人が好きなのか」


「顔だって先輩本人でしょ。あ、あれ、首から上しか好きじゃないってこと?」


「首から上って」


「だってそうでしょ。顔だけなら首から上じゃない。首から下の先輩に価値を見出してないってことなんじゃないかって思ってるわけでしょ?」


「首から上だけじゃないよ。おっきな背中も広い肩幅もかっこいいし、長い脚も腕も、先輩指も長いの、でも全部これ見た目だよね。見てたら誰にでもわかることだよね」


「うん」


「見た目が好きなだけなら、同じ見た目なら誰だっていいってことにならない?」


「なるんじゃない。でもそれの何が問題なの?」


「問題しかないよ」


「どこが?顔が好きって好きな理由として一番まともだと思うけど」


「どこが?」


「だってどんな人かなんて本当のところわかんないじゃない。本当は何考えてるかなんてわかるわけないんだから」


「なんか、こう、見た目が好きっていうの先輩に対して失礼な気がする」


「え、どこが?」


「え、失礼じゃない?だってあんなに親切にしてくれて、私みたいな人間に気を使ってくれて、心を砕いてくれてるのに、見た目が好きなんて」


「そう?人なんて見た目が好きがほぼ百なんじゃないの。むしろ見た目が好きだったら性格がどれだけクズだったとしても好きでいられるんじゃ」


「それはないんじゃないかなぁ」


「あの見た目ならしょうがないよ。というより先輩のことを好きな人間なんて皆あの顔しか見てないって、もしくは財力、あと世界一の強さ」


「先輩はそれだけじゃないよ。優しいし、優しいし、優しいし」


「どんだけ優しいの先輩」


「ううう、ん」


「だーいじょーぶー?」


「わかんない。先輩のことどう話したらいいのかわかんなくて。優しくて、とても素敵でずっと見ていたいんだけど、それがあの見た目だからだったら、それは違うなって思ってて」


「先輩の優しさとやらに気づけてるならそれはもう見た目だけとは言わないんじゃないの?」


「でも、あの、あの見た目で優しくしてくれるから、嬉しいだけなのかなって、先輩といると恥ずかしくて、ドキドキして、泣きたくなって、でも、ずっと見ていたいなって、思っちゃうんだよ」


「それはもう好きだよ。完全に好きだよ」


「そうなのかなぁ」


「そうだって、かのんもなんか言ってよー」


今日は土曜日です。

午前の授業の後いつものように先輩とダンジョンに行く予定だったのですが、奈良県にS級ダンジョンが出現したので先輩が急遽行くことになり、午後からの予定がすっぽりと空いてしまい、恵美ちゃんとかのんちゃんのお部屋で三人でお菓子を食べてだらだらと過ごすことになりました。

かのんちゃんは明日ハンター協会主催の草野球大会に出場するためイメージトレーニングに余念がありません。

今もパソコンで大好きな東京グレートジャイアンツの速水北斗選手のスーパー守備集を見ています。


「顔が好きでもいいと思うよ。私も北斗顔から入ったし。今は北斗の全てが好きだけど」


速水選手は野球界最高のイケメン選手として有名です。

結婚した時はネット上は阿鼻叫喚、日本のトレンドの一位から三十位まで全て関連項目で埋まるほどの人気を見せつけました。


「奥さんまで好きなんだもんね」


「私は北斗の全てが大好き。バッティングフォームも走り方も投げ方も笑った顔も背高いのに高い声も、でも一番好きなのは必ず打って欲しいところで打ってくれるところ。何回も言ってるけど初めて見に行った試合でサヨナラホームラン打ってくれたの。あんなことしてくれたら一生好きでいられる。一生ついていく。琴葉は北斗の息子を二人も生んでくれて、私が北斗の息子がプロ野球選手になる姿を見るという夢を叶えてくれたので感謝しかない。美人だし、背も高いし」


「かのんー、まだその夢は叶ってはいないんじゃないの。息子ちゃんまだ生まれたばっかなんでしょ」


「生まれた時点で勝ち確だから、間違いなく何らかのスポーツ選手にはなるはず。それが野球だったなら最高。ショートならなお良し。あ、でも外野守備も捨てがたい。二人いるから一人はセンターで」


「奥さんもスポーツ選手だもんね」


「結婚によって北斗が信用できる男だって確信した。女性の趣味のいい男間違いなく信用できる」


なんか、格言きちゃった。

かのんちゃんは速水選手に小学校一年生の時に一目惚れして野球を始めたそうです。

ハンターになったのも速水選手が引退後はハンターの資格を取ってダンジョンに行きたいという記事を読んだからだそうで、かのんちゃんは強くなれるだけなっておいて、いつかダンジョンで速水選手と遭遇するのが夢だそうです。

それができたら満足して死ねると思うとまで言いました。

かのんちゃんといい先輩といい、好きなものがあると人間はそんな風に死を覚悟できるものなのでしょうか。

私にはまだそんなものはないです。

いつかそういうものが私にも見つかるのでしょうか。

見つけたいと思います。

そのために死んでもいいと思えるもの。

生まれてきた意味はそれだと先輩を見ていると最近思うのです。


あ、今は目下の課題を片付けなければ。


私は先輩を本当に好きなのか。

それが私にとって今一番の問題なのです。













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