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最初の村から、最難関異世界『インフェルノ』の洗礼を浴びる

 宇田川は眩しさから開放され、目をゆっくりと開くと見知らぬ村の広場に居た。


 周りを見渡すと他の43名も同じ場所へと転移させられていた。これが新たな人生……自分の胸に手を当てると、確かに心臓が脈打っている。


 44名は異世界転生を果たしたのだ。


「デュフフ!!夢の異世界転生ですぞ!!さてさて、小生のスキルは――」




「お主らは転生者……じゃな?」


 根倉が自身のスキルを確認しようとしていた矢先、老人に話し掛けられた。


「デュフ!!緑色の服に白い(ヒゲ)の老人……!!まさに最初の村!!貴方は村長さんですな!?」


「うむ……。悪い事は言わん、外には出ずにこの村の中で静かに暮らすんじゃ……。転生者達は皆、最初の村だと侮る……そして(ことごと)く死んでいくのじゃ……」


「デュフフ!!心配ご無用!!小生達は全員が女神様にスキルを(たまわ)った、()わば勇者ですぞ!?最難関異世界だろうと敵じゃない!!」


 興奮が収まらない根倉は、体育の授業ですら見せた事の無い速度で村の外へと駆けていく。




「な……ッ!!止まれ、根倉君!!」


 宇田川は責任感から根倉を追い掛けて行く。




「ッ!!クソ!!お前ら止まれ!!


 冷泉先生、六島先生、残りの生徒達を頼みます!!」


 返答を待たずして類家も後を追っていく。




「任せて下さいって言ってももう聞こえてないか」


 冷泉は呆れ果てた顔で三人の小さくなっていく背中を傍観していた。


「ハーイ!!皆サーン!!勝手な行動はとらナーイで下サーイ!!分かりましたかー??♡」


「「「はーーーい♡♡♡」」」


 六島の呼び掛けに男子数名が目をハートにしてデレデレになっていた。


「うわっ。男子きっしょー。


 つーか、あーしらにスキル……?とやらが与えられたなら、先に確認しといた方が良きじゃねー?」


 綺更はまともなギャルだった。そして隠れゲーマーの彼女は、勿論異世界転生の知識も兼ね備えている。無知な演技をしているのだ……。


「あら、確かに♡如月さん流石ですわね♡」


 六島と人気を二分しているこの女子生徒は『花房(はなぶさ) (はな)』。自他ともに認める学校一の美女だった。


「それでは、ワタクシのスキルは……『花』?」


 ステータスを表示させ、スキル名を確認した瞬間。まるで前世からその能力を持っていたのではと思える位に自然に、やり方を知り尽くしていた。腕の、手の、指の動かし方を何も考えずに出来るのと同義な程に。


 花房が能力を行使しようとした、その瞬間だった。






 ――グパァ……。


「……へ?」


 花房の足元の地面が抜け落ち、代わりに巨大なワームが彼女の胸から下を呑み込み、3階建てのビル程の高さまで上昇した。


「ひっ……な、なんですの!?やめっ……!!


 だ、誰か助け――




 おっっっ!?」


 涙を垂れ流しながらワームを叩いていた花房が突然野太い声を上げて仰け反り、痙攣(けいれん)して動かなくなった。


「は、花房さん!!一体何が!?」


 内気な男子、『絵川(えがわ) 栄治(えいじ)』は怯えていた。




「……!!(ちん)に従え!!その子を離せ!!」


 坊主頭の男子、『(ちん) 珍珍(ちんちん)』は片手を前に出しワームへと命令を下す!!


 珍の能力は『朕』!!相手に命令を下し自身の言いなりにする能力!!


 ――しかし、ワームは従う様子を見せない。


「……?何故、朕の言う事が――」




 ――ベチャッッッ!!




「……っ!!」


 綺更は目の前の光景が信じられなかった。クラスメイトが、朕の上半身が地中から出て来たワームの尻尾の一振りで地面に散らかったのだ。


 あまりの凄惨な事態に、叫ぶ女子は居なかった。鮎川は思わず地面へと崩れ落ち失禁していたが、それに気付く人物が居ない程に緊迫している。




 誰一人として動けないでいると、ワームは物凄い勢いで尻尾と身体を地面へと戻していき、完全に地中へと姿を消した。




「……彼女はもう助からん。この村の中でも、『スキル』を使うと『アレ』に喰われるんじゃ……。他の異世界ならば終盤のダンジョンに出るレベルの強力なモンスター……初見殺しのトラップじゃ」


「……ケッ。んじゃ別に此処も安全じゃねーって事かよ。なら――」


「それでも『この村がこの世界で一番安全』なんじゃよ」


「……ッ」


 老人とは思えない村長の眼光に裂人は思わず気圧される。


「……ワシも異世界転生者なんじゃ。


 そして、此処で共に転生した者達が数人喰われ、村を後にしたんじゃが……外はもっと地獄じゃった。最後の一人になったら、ワシを此処へと飛ばした女神が言いおった。


 『永遠の生命を与えるから、この最初の村で転生者達の案内をしろ』


 とな。今でも覚えておる……忌々しい『ゑヒモセス』……!!」


「!!


 ……村長さん。村長さんは最後の一人になれば好きな願いを一つ叶えると?」


 冷泉は冷や汗を垂らしながら尋ねる。


「……いや?そんな話は無かった。


 只々、この地獄の世界へと送り込まれたのじゃ……」


「そう……ですか」




「……冷泉センセー?もしかして最後の一人を狙ってるデスカー?ダメですよー?」


「そんな事しませんよ、六島先生。


 只、言われていたならあの女神が信用出来ないって事になるから聞いてみただけです」


「フーン?」


 ジト目で見てくる六島を無視して冷泉は生徒と鰐淵に対して言葉を発する。


「皆自分の能力を確認しておいて!確認だけして絶対に使わないで!


 この村にずっと居ても仕方無い!


 駆けていった3人と合流したら次の場所へ向かいましょう!」


「……ワシはもう止めんよ。


 同じ世界の者かは知らんが、武運を祈っておる」


 それだけ言うと村長は去っていった。




 冷泉はプロフィールから五十音の生存者リストを見る。珍が抜け落ちていて、3人と花房は未だ生きていた。花房を助け出す術はもう残っていないが……。




「よし、行きましょう!」


 39人は3人が駆けていった方向へと歩き出す。

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 (ちん) 珍珍(ちんちん) チンチン・チン

 出席番号17。転生した44名の最初の犠牲者。坊主頭で将来は寺を継ぐ予定だった。身長は低めだが威圧的な態度を取る。罪人では無いが、好き嫌いをしていた事が寺を継ぐ者としての葛藤があり女神に名乗り出れなかった。

 能力は『(ちん)』。他者を従わせる。が、『自身より弱い相手』に呑み有効なハズレスキル。最難関異世界のインフェルノではゴミスキルに等しい。


 花房(はなぶさ) (はな) ハナ・ハナブサ

 出席番号26。モデル体型で学校一の美女。やや垂れ目で髪は茶髪ストレート。アイドルグループに居そうな印象。喋り方はお嬢様風だが一般家庭。

 能力は『花』。花を咲かし花を操る。現実世界では使えない能力だが、インフェルノの花は次元が違う為使えるスキルだった。しかし発動の猶予が無かった事、この世界の花を何一つ知らなかった事が重なり無駄となった。


 村長

 最初の村の村長。緑色のベストに薄汚れた白と茶色の服という、THE村長。白く長い(ひげ)が特徴。異世界転生者の案内人として最初の村に永住させられている。永遠に死ねない、異世界転生者の成れの果て。名前すら思い出せない程の年月を過ごした。


 インプレグネイト・ワーム

 最初の村に居て良い存在では無い魔物。他世界では終盤ダンジョンクラスの化け物で、最初の村でスキルを使った者の地面ごと喰らう。雄は食い千切り、雌は苗床にして利用する為地中へと連れ帰る。

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