女神様が善人だとは限らない
赤い後光が差している女性は続ける。
『我は汝らの世界の女神『ゑヒモセス』なり』
「僕達の……世界……?」
「――!!
も、もしやこれは『異世界転生』ですかな!?
デュフフ!!キタコレェェェエエエエエ!!」
突然今まで大人しかった小太りの男子、『根倉 寧』が歓喜の声をあげた。
女子は皆引いている……。
「根倉君、異世界転生……とは?」
「デュフフ、流石の委員長もアニメとかには詳しくないんだね……。
現実世界で『死んだ』人間が、別の世界にチート能力を与えられて第二の人生を始めるんだよ!!」
『死んだ』というワードに宇田川を始め根倉以外の人間全員が目を見開く。
『その者の言う通り、汝らは既に死人。
しかし我は強制はせぬ。選べ。道は二つに一つ。
「異世界転生」を果たすか、完全に消滅するか』
「か、完全に消滅……?」
宇田川は復唱した。声に出しても、あまりの予想外の選択肢に理解は追い付いていない。
『汝らは「罪人」。
故に、最難関の異世界「インフェルノ」へと異世界転生を果たすか、我の手で完全に消滅するか。
それでしか汝らの罪は消せぬのだ』
「……あぁ!?テメェ、黙って聞いてりゃ、さっきからフザケてんじゃねーぞ!?
俺の何が罪人だッ――」
『「鮫嶋 裂人」。
汝は中学二年の夏――。
続けても良いのか?』
「――!?」
裂人は冷や汗を流す。その様子を見ていた誰もが口を噤む。
『異論が有る者は居ないな。
此処で消滅したい者は手を挙げよ』
――静寂。誰も手を挙げない。
『なれば汝ら全員をインフェルノへと転生させる。
能力は汝らの名前、性格、特技等から我が勝手に与える。罪人には過ぎたる力だが、我にも慈悲は有る。
汝らが転生するインフェルノは余りにも難関な世界。故に救済措置を設ける。
転生後、ゲームの要領で自身のプロフィールを見たいと念じればコマンドを表示出来る。コレは自身の目にのみ映る。其処に「リスト」を追加した。
汝らは全員頭文字が五十音に相当している。
そのリストは汝らの安否確認なり。
インフェルノで死亡、若しくはインフェルノ以外の異世界へと移動した場合、対応する文字が消え落ちる。
最後の一人になった者には褒美を一つ与える。
インフェルノ以外の異世界へと転移するか、転移は出来ぬが望む力を一つ手に入れるか。
どのような力を得ようともその者が後者を選べばインフェルノからは未来永劫出る事は叶わぬ』
全員が息を呑む。
『しかしこのルールだと汝らは殺し合いを行いしかねない。
故に、汝らがインフェルノの悪の頂点である「魔王」を見事討伐した際には、その時点でのインフェルノで生き残っていた生存者全員に同等の褒美を約束するなり』
「デュフフ、つまり小生達全員で魔王を倒せたら全員で違う世界に行けるんだね……」
『但し汝らが元居た世界には還れぬ。
汝らのバスは大破し大規模な山火事も起きている。
生存が不可能過ぎた』
「デュフフ、元居た世界に還るつもりは無いよ、別の異世界でモテモテハーレム生活を送るんだ!!」
「……」
宇田川は根倉を見ながら思っていた。別の世界に行こうとも見た目が変わらないなら無意味なのではないかと。
『では、始める。
言ノ葉の女神『ゑヒモセス・アマテラス』の何に於いて、この者らをインフェルノへと転生させる!!
――インフェルノにて魔王を打倒する事を願うなり』
赤い後光が更に眩しく煌めき発光すると、白の空間から人間が消え失せていた。
『本当に愚かよのう、人の子らは。
ふふ……くく……。
――ギャハハハハハハハッ!!
全員が罪人!?そんな訳が無かろうて!!』
ゑヒモセスには分かっていたのだ。人間誰しも大なり小なり他人に知られたくない過去は存在する。そして此処は未知の世界であり女神という未知の存在からの問い。
そして『罪』の基準も分からない。現実世界と違い法律等何も分からないのだから。
『さて、余興として汝らのインフェルノでの活躍、楽しませてもらおうか!!
あの世界の魔王を倒す等汝らには不可能だろうがな!!ギャハハハハハハハ!!
最初の村から何人が出られるのか見ものだなァ!?』
白の部屋。赤の後光で未だに眩しく煌めくゑヒモセスは、後光の光を台風のように渦巻かせると、台風の目をインフェルノの世界を覗けるモニターのような物へと変化させる。
彼女にとって、これから起こる44名の悲劇は娯楽でしかなかったのだ。
設定
根倉 寧
出席番号24。小太りのオタク。異世界転生物の作品が主食の彼だけが異世界転生に喜んでいる。彼は『不細工がイケメンとされている世界への異世界転生』を望んでいるのだが、そんな世界は存在していない。
ゑヒモセス・アマテラス
言ノ葉の女神。娯楽とインフェルノの調査・戦力実験として44名の人間を送り込む。
インフェルノ
最難関の異世界。女神ですら立ち入らない程の難易度を誇る。




