楽しい修学旅行からの急転直下、それは文字通り真っ逆さまに落ちていった
春。地域によっては桜が綺麗に咲くこの時期に、色葉高等学校の三年生120名は修学旅行へと旅立っていた。
多くの高校が二年生時に行う中、色葉高校は三年生のこの時期に実施する。他の高校と時期をズラす意味が有るのかは不明だが、昔からそうらしい。
三年生は三クラス。バスを三台貸し切って、其々のバスに一クラス毎乗り込んでいた。
三年A組のバスには男子20人と女子20人の計40人の生徒の他、担任の『類家 類』、副担任の『冷泉 礼華』、英語教師の『六島 ロッティ』も乗っていた。
普通の修学旅行の風景。
運転手の『鰐淵 恒』も普段と何も変わらず、運転に集中していた。寝不足や過労も無く、今日も仕事を普通にこなしていく。
――その筈だった。
――ガンッッッッッ!!
「……へ?」
鰐淵は目を疑う。道なりに走行していた筈なのに、目の前には道が無く、バスが宙を飛んでいた。
「きゃっ!?」
「なんだ!?」
「っ!?」
生徒達も突然の浮遊感にパニックに陥る。
「お、落ち着けお前ら!!慌て――」
――ドォォォオオオオオンッッッ!!!!!
バスは崖から真っ逆さまに落下し、激しく爆発し炎上。周囲の木々をも焼き払う山火事へと発展。そのあまりの火の勢いに数日間燃え続ける。
消防隊や自衛隊による決死の消火活動、そして恵みの雨により鎮火。その後捜索活動をしたものの。焼け焦げ溶け落ちていたバスの残骸の内部や周りにも遺体や身体の一部は何一つ残されていなかった。
しかし後続していた三年B組のバスの運転手や教師の証言で死亡と断定。捜索活動は打ち切られた。
彼らの話によると、カーブを直進しガードレールを突き破り落下したとの事。
バス会社に警察の調べが入ったが、運営には何の問題も無く、運転手の鰐淵にも目立った病気や精神的な病等の通院歴も確認出来なかった。
真相は謎のまま、数多くのメディアで散々報道されたこの事件も、他の事件等によって遺族以外の記憶からは徐々に消えていく……。
「……っ!?此処は!?」
類家は目を覚ました。思わず自分の身体に触れる。あの瞬間、確かに死を覚悟したが……生きている実感が湧くのを感じていた。
「先生!良かった……」
「『宇田川』!無事だったか!他の皆は――」
「皆無事ですよ、先生が最後です。下手に起こして頭を打っていたら悪化しかねないので起こさずに待っていたんです……」
『宇田川 右京』。このクラスの学級委員長兼生徒会長というリーダーになるべくしてなっている、責任感の塊のような青年。
宇田川は眼鏡の位置を中指で直すと、類家を見ながら告げる。
「……先生、僕達は一体如何したんでしょうか。
バスが……道を外れて落下して……確かに今僕達は生きている筈……。その筈なのに……下に落下した衝撃も、あの爆発の瞬間の熱さも、全て覚えてな――」
「ひっ――!」
宇田川の言葉を聞きフラッシュバックをしてしまったのだろう。大人しそうな女の子、『鮎川 彩海』は震える身体を必死に抑えていた。
「ちょっと委員長ー。鮎川さんが怯えてるじゃん。もうちょっと言葉選びなよー」
「ん……済まない……」
圧倒的褐色ギャル、『如月 綺更』は平然としていた。
「……君は怖くないのか?」
「えー?だってどーしよーもなくなーい?あーし達以外だーれもいないし」
床も天井も壁も、四方八方が真っ白な世界……。生徒40名に教師3名、其処に運転手の鰐淵を入れた計44名……。あのバスに乗っていた全員がこの訳の分からない空間に居た。
「つーかよォー!?この運転手のオッサンの所為じゃねーか!ちゃんと運転してやがったのか!?あぁ!?」
歯がギザギザな男、『鮫嶋 裂人』は鰐淵の胸ぐらを掴み上げる。
「ひぃ!?わ、私はちゃんと運転していましたよ!?道なりに!!それなのに!!急に地面が消えたんですよ!!」
「ッ!!テメェ、ウダウダ言い訳して――」
『――静まれ、人の子らよ』
本来ならば裂人を止めるべきは引率の教師だっただろう。しかし大人とはいえ、明らかに『死後の世界』を連想させる場所と状況を前にそんな余裕等無かった。
彼らの代わりに裂人を止め、他の生徒達全員の注目を集めた人物……。
――それは後光が輝く美しい女性のシルエットだった。
設定
宇田川 右京
出席番号03。生徒会長であり三年A組の学級委員長。眼鏡を掛けているが地味系では無く爽やかインテリイケメン側。フレームレス眼鏡にサラサラの黒髪。しかし口調は堅く、ややオタクに見られがち。目は鋭く眼鏡を外すだけで一部の女子は湧く。喋らないで欲しいと全女子は願っている。
鮎川 彩海
出席番号01。内気な性格。一番怯えていた。黒髪ボブ。何処にでも居る地味目な女の子。実はお洒落が好きなので頭には何かを常に着けている。修学旅行時には赤のリボンを左側に。
如月 綺更
出席番号07。褐色肌のギャル。地味子な鮎川の事も気にかける面倒見の良い子。髪の毛はグレイッシュに染めている。修学旅行時はお団子ヘア。校則なんてクソ喰らえ、スカートは一番短いがスパッツを着用して完全武装。
鮫嶋 裂人
出席番号11。本物の鮫かと思うようなギザっ歯。青黒い髪はワックスで立たせている。おでこ全開。趣味は筋トレ。血の気が多い。
類家 類
担任。THE生徒に好かれる教師。校則違反には目を瞑り、生徒との距離は近い。一緒に巫山戯る事もあるがダメな事はダメと叱れる教師。後ろを刈り上げた茶髪だが地毛。一応ストライプのスーツを着用しているが、本音はTシャツで過ごしたい。
冷泉 礼華
副担任。アイスブルーの髪の前髪ぱっつんのクール女性。暑がりの為、修学旅行は春なのに半袖シャツにクロップド丈のパンツ。類家が起きるまで、真っ白な空間を調べてはいたが何も得られなかった。
六島 ロッティ
英語教師。余りの恐怖に終始無言だった。ピンク髪は膝丈。インナーカラーとメッシュにチョコレート色を入れている。身長が低くマスコット扱いされている。大人っぽく見せる為だけに常に桃色のスーツ姿。
鰐淵 恒
運転手。オッサンと言われたがまだまだ若いらしい。『鰐』と名のつく苗字だが気弱。何処にでも居そうな男性。黒髪のツーブロック。垂れ目。
後光が差している女性
シルエットしか見えていないが『美しい女性』だと44名全員が思ってしまっていた。後光は黄色では無く赤色。




