2.
(あーあ。ウブそうだったのにあの子初めてじゃなかったなー。まあでも反応的に2回目か3回目?経験は少なそうだったから、あと1回ぐらいは遊んでやっても良かったかもな。生でやれたし)
タイチの日常はこんな感じだった。
「タイチ、最近学園の成績はどうだ?」
「それなりに」
「将来うちで働くなら、前回のような成績で満足してもらっては困るぞ」
「学園5位はちょっとなー。せめて3位以内にはいないと」
「んもう、そんな意地悪言わないの。タイチだってきちんと頑張っているのよ」
「それにしては時々帰るのが遅いじゃないか」
「まあ色々とあって……」
「ふんっ、どんな用事なんだか。どうせロクでもないことだろ」
「あなただって学園の頃から帰るのが遅かったじゃない。同じなのよ。兄弟揃って誰に似たんだか……」
家族にそんな風に言われていたが、タイチは働くつもりなんて全くなかった。勿論、親の会社ででもある。
(働きたくねえな……。でも多夫多妻なら、学園のやつらが話してたみたいに金持ちの女を捕まえればいいわけか。ちょっと試しにやってみるかー)
大体、兄も父も母には隠れてあちらこちらで女と遊びまくっているのはタイチだって知っていた。母だって、やたら綺麗に化粧していそいそと出かけていく日があるから、何かあるのかもしれない。ただ、母は兄や父ほどはあからさまではなかったから、タイチには実際どうなのかは分からなかった。
タイチほどではないが、彼らも顔がいいのである。
だから、ヒモになりたいタイチがまず接触を図ったのは、学園一金のある財閥の令嬢メルリだった。
(財閥の娘なら将来的にも金持ち確定だろ。お嬢様ってあんまり趣味じゃないけど、顔は結構いいしな。背が高いのもいい。でも胸がなー……。ま、結婚に見た目は関係ないか)
そもそもタイチは顔よりも身体重視だった。顔は自身の方が良いし、家族以外と比べると誰だって顔のレベルはやはり落ちてしまう。それに、顔だけが好みの女なんて今まで何人とも繋がってきていた。
(女は身体だな。顔は魔法や化粧でいくらでも変えられるけど、胸や尻はポテンシャルが違う。中も全然違うしな)
身体にだって魔法はかけられるのだが、経験的にタイチは顔には飽きやすかったのだ。
(……そういえば、中が最高すぎて何回やっても1分も我慢できなかった女もいたな。でもあいつ、地味な顔のわりに遊びまくってたんだよな……。名器だからか?まあ俺が言えたことじゃないか。あの女は1年ぐらいでリリースしたんだっけ……?)
タイチは19ではあったが、かなり経験豊富だった。
(今ならもう少し耐えられるかもな。また連絡したらやらせてくれそうだけど、あいつの彼氏、ちょっと束縛激しかったんだよなー。んー……でも、今も付き合ってるかは分からないか。ただ、もし今も付き合っててそいつにバレたら面倒なことになりそうなのがきつい)
何故か女の浮気には気付かない男が多い。特に単発的な浮気は。神経質な男でもそうである。理由は分からないが……。
だから、タイチはやりたい放題であった。
(とりあえずお嬢様だな。どうせ経験も殆どないだろうし、ウブなら落とすだけならすぐだろ)
メルリが空財閥の娘で一人っ子である以上、ほとんど財閥を継ぐことは決まっているようなのだし、もし彼女が財閥を継がなかったとしても多額の財産が転がり込んでくるだろう。
(それに、お嬢様が財閥を継がなくても継がなきゃいけない場合でも、俺が正式に財閥入りさえしなきゃ、こっちは仕事もせずに優雅な生活を送れる。あー……でも、跡継ぎの配偶者ってのも結構忙しいんだよな)
タイチはそれをよく知っていた。幼い頃から両親を見ていたからだ。
幼い頃からタイチや兄の教育はほとんどシッターたちに任されていたし、食事の時間ぐらいしか接触はなかったが、会社の祝賀会などには彼らも同席することがあった。
(俺が先に落として夫になれるように仕組んで、後は他の男を第一の夫にしてくれって言えば悠々自適だな。……どうしても他の男と繋がるのが嫌そうなら、良さそうな男との接点を取り持ってやってもいいか)
「メルリさん、また学園1位らしいぜ……」
「すげーよな。美人だし」
「でも、俺はちょっと好みじゃないかなー。なんか見下されそうじゃね?」
「頭いい女ってなんとなくいけすかないよな」
「お高く止まってるっていうか、こっちを下に見てるっていうか」
「常に値踏みされてそうじゃね?」
「言えてるな」
(ふーん。あのお嬢様、学園の成績もいいんだ。それならやっぱ財閥を継ぐのはあの子かもな。かなり条件が良さそうだ。ちょっと真面目に計画するか)
「へー。そのメルリさんって、有名なの?」
「ん?あ、いやあ、タイチが気にするほどの女じゃない……と思うな。見た目はいいけどあまり笑わないとかで……なあ?」
「そうそう。しかもガリガリだし」
「女はもっと肉が付いてた方がいいよな!」
「サリナさんとかいいよな」
「胸がいいよなあ」
「そうそう。抱き心地が良さそうだよなー。いつも笑顔だし、何でも許してくれそうな雰囲気あるよな!」
「ああいうタイプは俺らにも優しそうだもんな」
「メルリさんは男なんて嫌ってそうだし」
「冷たい雰囲気だし、下品なことでも言おうもんなら睨まれそー」
「財閥の娘だから、俺ら下民には興味ないって感じのとこあるだろ?あれがきつい」
「辛辣すぎて泣いたわ」
「いやいや、俺らを下民は言いすぎだろ!せめて庶民って言ってくれよ!」
「俺は一般人1号で」
「あ、俺2号!」
「3号は貰った!」
「いや何の話してんだよお前ら」
「タイチは御曹司だから一般人4号にはなれないな」
「俺も一般人だろ、どう考えても」
「確かに有名ではないけどな」
「いやいや、タイチが本気出せばすぐ有名になれるって!魔法だって要らないだろ!」
「俳優オーディションとか受ければいいのに!勿体無いよなー」
「そんなガラじゃないよ」
「俺がタイチの顔ならもっと自分を売り込みまくるけどなー」
「俺だったら動画撮影用魔道具で毎日投稿しちゃうね!」
「んな大した顔してないよ」
「おいおい、謙虚も度がすぎると嫌味だぜ」
タイチはそんな彼らとの会話に笑って肩をすくめた。
(なるほどね。メルリって子は高嶺の花で手を出せないけどみんな気になるって感じか。それなら尚更悪くないな)
こうしてタイチはメルリを手に入れるため、動き始めたのである。




