幸福を捕らえる代償 8
「あの商人どもは、きっと何か後ろ暗いことでもやってるんだ。だからこそ、あんなものに金を出すのさ」鍛冶屋の徒弟が、誰にともなく言った。
私は、店主がこのあいだ修理に出した鉄具を片づけ終えたところだった。
「何だ? 首飾りか?」修理代を徒弟の前の卓に放る。
銀貨が卓の上で立てた甲高い音に、徒弟の注意がこちらへ向いた。
「ちがうよ。羊皮紙だ、ええと、なんて名前だったか……」彼は金をしまいこみながら言った。
「贖罪券」と、別の客が口を添える。
「おうおう、そうだ、贖罪券だ。信じられるか、これが結構売れてるんだよ」
その客は身を乗り出し、声を整えて言った。「この目で見たんだ、教会から坊主が、何袋も金を詰め込んで帰っていくのを。教会のすぐそばでだぜ。ミシェルのあのデブだけでも、何束も買ってたらしい。どう見積もっても、銀貨三、四枚はくだらないだろうな」
それを聞いた徒弟の顔色が、さっと曇った。
「ほんとかよ。つい最近、あいつバンデリに、いま手持ちがなくて、今度まとめて払うって言ったばかりなのに」
相手が確かにそうだと返すなり、彼は慌てて身の回りを片づけ始めた。
「くそったれ、俺の工賃、まだ払われてないんだよ」
彼は私たちを外に追い出し、扉を閉めるやいなや走り去った。おそらく、バンデリのところへ泣き込むつもりだろう。
扉の閉まる音が、まだ背後に残っていた。
教会。
その言葉が、頭のなかでひと巡りする。
もし本当にあの連中の言うとおり、一枚の羊皮紙で罪が清められるというなら、そりゃあ鍛冶屋の仕事よりずっと楽な商売だ。鉄は何度も打ってようやくかたちになるのに、人の罪は金を出すだけでいい。
クレインのやつが言っていたのと似たような話だが、まあ、動き出す理由にはなった。
まずは、道順と場所を確かめておく。金がどこに置かれているかを知っておくのは、悪いことじゃない。
いつか必要になったときに、まるきり無防備というのだけは、ごめんだからな。
それに、あの金袋のなかに入っているのは、商人たち自身の良心だけじゃない。農民たちのあても、きっと混ざっている。
そう考えると、心はかえって静まった。
あとで、教会にでも行って様子を見てこよう。
私は修理の終わった鉄具を店に戻し、店主にひと声かけると、教会へ抜ける小道へと足を向けた。




