幸福を捕らえる代償 2
ジェスを家まで送り届けた帰り道、ちょうど村役人が前を通り過ぎていくのが見えた。
そして翌日、ジェスは酒場に姿を見せなかった。私は卓にもたれてぼんやりと座り込んでいた。毎年この時期はたしかに賑わう。だが、それが良いことだとはどうしても思えない。
いくら店が儲かろうと、私のふところに多く入るわけではないのだから。
そんなふうに不満に思うこともあるが、それでも店主には心底感謝している。
「どうも、村役人がジェスの今年前半の地代がまだ納められていないと言い出したらしくてな。いままとめて取り立てるって話だ。それでいまは、あちこち金をかき集めるのに躍起になっているらしい」
ジェス?
私はそちらへ身を寄せた。
「俺たちはみんな、ジェスがちゃんと納めたことを知ってる。だけどな、上の連中のふところが寂しくなると、どこかに必ず貧乏籤を引くやつが出るんだ。それがたまたま、今回はジェスだったってだけの話さ」
税金のことで言えば、私もずいぶん店主に助けられていた。私の分はいつも店主が立て替えて納めてくれていたからだ。しかも給金から差し引くと言いながら、実際には一度だって私の手取りを減らしたことはなかった。それに、村役人たちはたいていここの常連客でもあるから、今のところ私が「貧乏籤」を引かされたことはない。
ジェスには心から同情する。けれど、その同情も、どうしたってそこまでだった。
「クローズ、あとでこの金を、あのジェスのところへ届けてやってくれ」
店主が歩み寄ってきて、前もって用意してあった金を私に渡した。
それでいいと思う。たとえ私がただの使い走りにすぎなくても、この手からジェスに渡すのであれば、いくらかは何かをしたことになるのだから。
「ジェスですか? あの男に、ずいぶん目をかけているように見えますが。この前、家まで送らせたときもそうですし」
「考えすぎだ。ああいう貧乏籤を引くやつは、一年にそう何人もいるわけじゃない。このくらいの金でどうにかなる話でもないがな。まあ、神様の慈悲とでも思っておけ」そう言って、彼は背を向けた。
店主はたしかに筋金入りのお人好しだが、ここまでするのはやはり珍しい。おそらく、彼自身も父親になったからなのだろう、と私はあたりをつけた。
私は金を手に取り、外に出ようとしたところで、店主のつぶやきが耳に入った。
「あの忌々しい神様ってやつだな。まったく、あいつはひどくついてなかった」




