風に乗せて歌おう 13
マーガレットは白い布のスカートをまとい、生姜色の長い髪を編み込んでいた。道端の柵のあいだに立ち、朝の陽が斜めにその半面を照らし、もう半面は影のなかにある。服そのものは、貴族の華やかな装いに比べれば、どこまでも地味で、それ以上ないほど地味だった。けれど、ちょうどよい清潔さを湛えた顔のせいか、彼女のこちらへ向けた視線と目が合ったとき、私の顔はかっと熱くなった。私は視線を彷徨わせ、別の場所へと逃がした。
「どうしたの」マーガレットはうつむいて自分の服を見て、それから顔を上げて私を見た。眉がわずかに寄せられ、ほんとうに心もとないようすだった。「どこか、変なところがある?」
私は、ない、と言った。声は自分でも嘘くさく感じるほどかすれていた。
これが、サシスが暇つぶしに話していたことなのかはわからない——人は共に過ごすうちに、相手のなかにいつも違ったところを見つけるものだ、と。
マーガレットは私をちらりと見たが、それ以上は追及しなかった。ただ私のほうへ一歩近づき、「行こ」と言った。
私たちは並んで、落ち葉に埋もれた小道を歩き出した。市へ向かう人々はすでに露天商と値段の駆け引きを始めており、芋を担いだ男が私たちの横を通り過ぎていく。私たちはそのあいだを歩きながら、まるで道行くすべての人とすれ違っているようだった。まるですべての視線の隙間に身を隠しているように。誰も、マーガレットが髪を編み上げたことに気づかないし、誰も、あの白い布スカートが朝の光に浮かぶさまにも気づかない。
私は心のなかで密かに嬉しかった。まるで誰も見つけていない秘密を、自分だけが見つけたような気がした。
マーガレットの生家の邸は町の郊外にあり、歩けば半日ほどはかかると聞いていた。私たちはまず小さな町を抜け、それからその土の道に沿って、坂のうえまでずいぶん長く歩いた。早朝に水を撒きにきた農夫のせいか、木桶からこぼれた水が土の道をしっとりと湿らせている。朝のうちに荷を運んだ荷車の車輪が、深い轍を二本刻み、その轍には水が溜まって、灰色がかった空の半片を映していた。
マーガレットは私の右側を、ゆったりとした歩幅で進みながら、ときおり私の顔をちらりと見て、何かを確かめているようだった。指先は袖口から出た糸端を、くるくると巻きつけては解き、また巻きつけている。
「そういえば、ロードさんには話した?」マーガレットは尋ねた。
「朝、姿を見かけなかったから」と私は言った。「サシスに伝言を頼んでおいた」
マーガレットはうなずいた。「うん、そう」
「うん」
数歩歩いてから、マーガレットはまた口を開いた。「カレンにも話した?帰りは、たぶん遅くなるから」
「昨日、家に帰るときに話した。安心してくれ」
マーガレットは聞き終えると、唇がかすかに動いた。何かもう少し言いたそうだったが、結局は小さく「うん」とだけ応じた。
私は横目でそれを確かめ、歩幅を半歩だけ緩めて、そのそばへ身体を寄せた。
「そういえば、この前お前が言ってたあの本、読み終わったか?」
マーガレットは少しぼんやりしてから、顔を上げて私を見た。「本?」
「ほら、こないだお前が家に帰る途中で抱えてたやつだ」
マーガレットは考えて、ようやく思い当たったらしかった。「うん、あれね。もう読み終わったよ」少し間をおいてから、「それがどうしたの?」
「べつに。読み終わったなら、私も読んでみたい。お前が面白いと思った本なら」
マーガレットは首をかしげて私を見ると、口元にほのかな笑みを浮かべた。「いいよ。読み終わったら、カレンにも話してあげよう」
「うん。それで、どんな話なんだ?ちょうど今、時間があるし、先に少し話してくれないか」
「今?」マーガレットは視線を手前に戻し、手で耳元の髪をそっと払いながら、しばらく考えていた。「たしか、一羽の鳥の話だったと思う。その鳥は島に住んでいて、その島はほんとうは大きな海亀の甲羅の上にあるの。ある日、その海亀が海のなかに沈もうとするんだ」
「海のなかに沈もうとする」と言ったところで、語調がほんの少しゆるんだ。まるで本のなかの文章をなぞるように。私は急かさず、言葉がまとまるのを待った。
「その鳥はどうしても諦められなくて、海亀と一緒に沈もうとした。でも、仲間たちから聞いたんだ。遠くに島があるって。美味しい果実があって、林が一面に広がって、甘い小川もあって、暖かい巣もあるんだって。だからその鳥は飛び立った。足を休める場所もない海の上を、ずっと飛び続けた」
「見つかったのか?」
マーガレットはかすかに首を振った。「失敗したの。ずいぶん長く飛んで、途中で、仲間の教えてくれた方角さえわからなくなって、ついにその島を見つけることはできなかった」
「そうか」と私がかすかに漏らした声を、マーガレットは耳にしたらしい。喉のあたりを軽く清め、まるで逆に私を慰めるかのように、一言を付け足した。「でも、その鳥は成功もしたの」
「なに?」
マーガレットは歩く速度を速めた。
「ついに、その壊れてしまう島を離れるための、理由ができたんだ」
私も速度を上げて追いついた。
「……本に、そう書いてあったのか?」
「うん。本には、そう書いてあった」
マーガレットは笑いながら言った。首をかしげて、追いついてきた私を見る。袖口のあの糸端は、いつしか指先からするりと抜けて手首のあたりに垂れ、向かい風にそよいでいた。




