風に乗せて歌おう 3
翌日の午後、私とカレンは仕分けた骨を提げ、城壁際の煮出し工房へと、壁伝いに歩いていた。
ずっと引っかかっていたことがある。カレンの家には祖父と二人しかいない。骨を職人や煮出し業者に売るだけでは、とても食い扶持にはならないはずだ。たまに花を摘んで売りに行ったところで、焼け石に水だろう。けれど、少女はまじめに答えてくれたのだから、私はそれ以上、尋ねなかった。
煮出し工房は市の端にあった。戸口には粗末な小屋が掛けられ、蠅除けに大きな古い麻袋が被せてある。それでも空気には淡い腐臭が漂い、商人たちが入れ代わり立ち代わり漏らす不平が混ざっていた。鼻を刺す匂いにもかかわらず、周りの空き地はぎっしりと人で埋まっている。考えてみれば、そろそろ施肥の季節だ。骨粉を売り買いする者はひっきりなしに訪れる。臭気と汗の匂いが混じり合い、喧騒とともに、ここではとっくに当たり前の光景になっていた。
入り口に立つ老人は、周囲の苦情に応対しながら麻袋によもぎを振りかけ、かすかに刺すような臭いを抑えている。私は人混みをどうにか掻き分け、背後で私の裾をぎゅっと掴んでいるカレンを一緒に連れ出した。
「おや、カレンじゃないか。また骨を届けに来たのかい」
老人はよもぎをしまい、眉をひそめて迎えた。カレンは小さく頷き、籠を差し出した。
私は半開きの扉の内側に目をやった。赤く焼けた二つの大きな鉄鍋のそばに、上半身裸の大男が立ち、鍋の中身を勢いよくかき混ぜている。火の光に赤く染まった肌から、大粒の汗が転がり落ちていた。腕の青筋が浮き上がり、また緩む。男は片手を空けると、肩に掛けた布で汗を拭った。私は目を逸らしたが、あの焼けつくような赤い光はまだ視界に残っていた。屋内からは熱気が波のように絶えず押し寄せ、体にまとわりつく。一瞬、ついこのあいだまでの盛夏へと引き戻されたような気がした。
老人は骨の重さを量り終え、銅貨を二枚カレンに渡すと、籠に黒パンを二つ、そっと忍ばせた。私の視線に気づくと、ただ私に向かって笑いかけただけだった。
私はその親切をわざわざ口には出さず、ただ目を逸らして、人混みを抜け出す道を探した。
周りのざわめきのなかには、妙に言い表しがたい穏やかさが滲んでいた。
私がカレンを連れて立ち去ろうとしたとき、修道服を着た女が人に押されてよろめき、こちらにぶつかってきた。私は手を伸ばしてカレンを傍らにかばったが、その女は私たち二人のあいだにまともに倒れ込んだ。周囲は騒がしく、女が倒れるときに何を言ったのか、私には聞き取れなかった。そのまま立ち去ろうとした。
そのとき、ぼんやりとした噂話が、ふわりと耳に飛び込んできた。
「このあいだ騒ぎを起こしたあの…… 結局どうなったんだ?」
「誰だっけ?」
「いや…… もういい、よく思い出せん」
心臓がぎゅっと縮み上がり、私は言葉の断片を追った。
「死んだのか?」
「おいおいおい、そんな不吉な話はやめてくれよ……」一人が慌てて遮り、また誰かにそっと小突かれたように、それきり口を閉ざした。
別の男がすぐに手を振った。「もう済んだことだ。そんな話を持ち出してどうする」
そばで藁の束にもたれて休んでいた男は、口を歪めた。口調に悪意はなく、ただ面倒くさそうな響きがあった。「おれはもう関わりたくねえよ。この前だって呼び出されて、もともと行きたくなかったのに、ついてない話だ」
その声に、私は気づいた。彼はあの雨の日、ジェスの妻に外套を届けたあの男だ。
そばの婦人は陰った顔で声を潜めて相槌を打つ。その表情は、愚痴なのか無関心なのか、区別がつかなかった。
「誰を責められようか。余裕のある家なんてどこにもないのに。それに彼女だって…… あんな大雨の日に、あんなところへ」
心臓が重たい巨石のように浮き上がり、落ちた。背中ににじみかけたむっとする汗が、一瞬で冷たく変わる。
私はその場に立ち尽くし、何も言わなかった。カレンも顔を上げて、静かに私を見ていた。
倒れた修道女は起き上がり、場の空気が変わったのに気づいたのか、慌てて手を振りながら説明した。「わ、私もこちらに来たばかりでして…… ただ、神父様から伺いました。あの方はご自分で、そこで跪いて祈っておられたのだと。亡くなられた後は、教会もすぐに慰めの言葉を差し上げたと聞いています」
もともと工房の外にいた老人が歩み寄り、修道女の手をそっと押さえ、先ほどと同じ慈しみ深い口調で慰めながら、周囲の皆に向けて言い聞かせるように話した。「大丈夫だよ、坊や。教会は十分に良くしてくださった。みんな知っていることだ」。老人は一呼吸おいて、声をわずかに張った。「その後、私も教会に行ったら、神父様が彼女のために祈りを捧げておられたよ」
周りの者たちは火がついたように、それまで遠慮がちだったささやき声を、次第に正当な裁きへと変えていった。
「やりすぎたんだよ。領主様がお怒りになって、二日ほど納税を待ってくれとも言えなくなった」
「そうそう、教会だって今じゃ俺たちにいい顔をしてくれない。みんなあの騒ぎのせいだ」
誰一人、自分が間違ったことを言っているとは思っていない。まるで教会が紡いだ偽りが、あの贖罪券のように、真実の品に変わってしまったかのようだった。
まさか、ほかの者の目に、ジェス一家のあの出来事は…… そう映っていたのか。
私は知らず歯を食いしばり、自分が知っている真実を口にしようとした。
真実。真実…… だが、これこそが真実ではないのか。彼らにとっては。
ただ、いつもは穏やかで親しみ深く、優しげに見えたあの下層の人々が、一瞬のうちに急に知らない顔になった。周りのざわめきに、急に冷えすぎた現実が滲む。私は自分に言い聞かせるしかなかった。彼らは悪人じゃない。ただ平凡で、あまりに平凡で、自分の目の前にある暮らししか見えないだけなのだと。
ジェスの絶望も、彼の母の懇願も…… この広い町にとっては、吹き抜けて消える一陣の風にすぎなかったのだ。
カレンが私の裾をそっと引き、小さな声で呼んだ。「クローズ」
私はうつむき、澄んだその瞳を見つめ、胸のあたりで渦巻く冷たいものを必死に押し込んだ。
「大丈夫だ」。私は少しすっぱくなった目をこすった。かすかに震える声は、ほとんど聞き取れないほど小さかった。
「行こう」
私たちは人混みを抜け、ゆっくりと歩き戻った。午後の痛いほどの陽射しが、頭をくらくらさせる。むしろ、わずかに麦の香りを帯びた秋風が、冷たさとともにいくぶんの目覚めを運んできた。
カレンはおとなしく隣を歩き、ときおり私の顔を見上げては、またうつむき、自分の足元の影を見つめていた。早々と手を伸ばして、私の裾をそっと掴んでいた。道をかなり歩いてから、ようやく軽く引きながら、小さな声で口を開いた。
「クローズ…… 悲しんでるの?」
私はうつむいて浅く息を吸い、できるだけ軽い口調を装って、まだ自分の影を見つめているカレンのほうに振り返った。
「いや、陽射しが眩しすぎただけだ」
カレンは顔を上げ、その視線をゆっくりと私の顔に移し、とても小さな声で言った。
「騎士だって万能じゃないんだよ…… 悲しくても、いいんだよ」
胸の奥がぐっと締めつけられ、私は顔を背けて、こみ上げてきた湿り気を強く押し殺した。しばらく黙ったあと、かすれた声で尋ねた。
「カレン、どんな人が…… 悪い人なんだ?」
カレンに答えられるとは思わなかったが、心のどこかで、なにかを言ってほしいと密かに願っていた。
カレンは首を振り、金色の髪がさらさらと揺れた。
「でも、クローズはいい人だよ」
「俺は悪い人だ」と、私は小さな声で言った。
カレンは一瞬きょとんとして、声をひそめて問い返した。
「…… 悪い人も、悲しくなるの?」
私はその場に立ち尽くした。麦畑から風が吹いてきて、さわさわと音を立てる。陽の光が少女の髪に当たり、金色にきらきらと輝いていた。口を開きかけたが、どう答えればいいのかわからず、ただ私の影のなかに立つこの少女を見つめて、もう一度繰り返した。
「悲しくなんかない。陽射しが眩しすぎただけだ」
カレンは近づいてきて、私の手を引いてしゃがませた。そして左右を見てから、私の前の、陽の当たる側に立つと、両手を広げて、笑いながら言った。
「これでもう眩しくないよ」
私はカレンを見つめたまま、何も言えなかった。
ただカレンと一緒に、吹き抜ける風のなかにいた。
そして私は、ずっと影のなかにいた。




