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あたかも  作者: sankarea
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幸福を捕らえる代償 16 終わり

ベッドに横になると、やっと一件落着したような恍惚感が心に広がった。頭の中にはジェスが喜んで礼を言う姿、家族が生まれたばかりの赤ちゃんを囲んで穏やかに笑う光景が浮かんだ。全てが完璧に癒され、元の通りに戻ったかのように——私は気楽に酒場の木の椅子に座り、出入りする酒客を眺めていた……。


心に大きな満足感が広がり、サンデルから感じた不安をほとんど消し去ってくれた。


ずっとこのままでいられたら、どんなにいいだろう。


私は静かに期待し、明日の訪れを待った。


だが明日はやってきた。昨夜の雨はやむどころか、ますます激しくなっていた。細かい雨音が溝を叩き、騒がしく胸を詰まらせた。ジェスの家に行く予定は、やむを得ず延期になった。


午後になって、雨足が少し弱まった。私は焦りを抑えきれず、贖罪券を丁寧に包み、慌てて飛び出した。


ジェスの家の戸を叩くと、出てきたのは妻だけだった。彼女は愁いに満ちた顔をし、唇は青白く、まぶたには黒ずみが浮かび、一晩中眠っていない様子だった。私を見た瞬間、彼女の瞳の憂いに、隠しきれない落胆が一層重なった。


「ジェスはいないのか?」


彼女は首を横に振り、苦笑いしながら視線を逸らした。


「贖罪券のことで、一昨日、彼は外へ金を調達しに行きました。ここ数日中には戻ってくるはずです」


私の髪の先に雨粒がついているのを見て、彼女は慌てて布を取って差し出した。私は受け取らず、懐から包んだ贖罪券を取り出し、彼女の前に差し出した。


「これで、助かるはずだ」


彼女は最初驚いたが、本能的に伸ばした手を突然引っ込めた。


「これ……どこで手に入れたの?今、これを買うのはとても難しいのに」


彼女の慌てふためく様子を見て、私は店主を盾にした。


「店主が私に持ってくるように言った。彼はコネが多いから」


私は贖罪券をそっと彼女の手元に差し出した。


「私たち……すぐには返せないかもしれません。でも……」彼女はためらいながらも受け取った。彼女が一番分かっていた。彼らはこれをどれほど必要としているか。「必ず返します。本当にありがとうございます」


「礼は後で言えばいい。店主も、子供を連れてみんなで来るのを喜ぶはずだ」


「クローズさん、ありがとう。こんなに助けていただいて、口下手で何と言えばいいのか……」


人間とは不思議なものだ。私はいつも他人の感謝をまともに受けるのが苦手で、どこか利益のにおいがすると感じていた。だがこんな純粋な感謝を前にすると、拒む決心さえ持てなくなる。


「大丈夫だ」


私はボロボロのベッドをちらっと眺めた。誰もいない。ふと何かに気づいた。


「君だけなのか?お婆さんは出かけたの?」


彼女の顔の憂いが一気に濃くなった。開けかけた口を閉じ、しばらくためらった末、小さく話した。


「昨日の午後、出かけたきり、帰ってきません。こんな大雨なのに、探しに行こうと思ったら、ちょうどあなたが来てくれました」


私は突然、入った時の彼女の落胆に気づいた。私のせいじゃなく、一晩中彼女が心配していたからだ。


彼女はちらっと私を見上げ、声をさらに小さくした。


「クローズさん、お手数をおかけするのは分かっています……でも、お婆さんを探してくれませんか?」


私は考える余地もなく、すぐに承諾した。この時の気持ちは、異常に軽やかだった。


「もちろん。私は市場の方へ探しに行く。君は知り合いの所に聞いてみたら?」


彼女は嬉しそうに頷いた。部屋からボロ切れだらけのマントを取って私に渡した。


私はそれを羽織り、長居せずに外へ出た。真っ暗になりかけた空を見て、市場の方へ歩いた。


重い雲が日光を遮り、雨の日の市場の帆布の下は夜のように暗かった。油脂の明かりがかすかに揺れ、客たちは体を縮めて雨風を凌ぎ、店主と入り乱れていた。帆布を叩く雨音、木の天井の弾ける音、泥の中のべちゃつく音、肉屋の呼び声が一つに混ざり合う。時折、豚の叫び声も聞こえた。私はジェスの母を見たかどうか肉屋に尋ねたが、何度か繰り返してから首を横に振った。


私はさらに進んで尋ねた。


女たちはスカートを持ち上げ、裸足で板や石の上を飛び跳ねるように歩き、それでも泥はねを免れない。腐った野菜と泥、羊毛の生臭さが混ざり、私は吐き気を催した。早くここを逃れようと加速したが、香料を売る男に引き止められた。


「ジェスの母さんを探しているのか?あの聖典を抱えた婆さんのことだな?」


彼の険しい表情を見て、私は思わずマントの袖を握り締めた。


「ああ、見たのか?」


彼は困ったように私を見つめ、複雑な表情で言い出せずにいる様子が私を焦らせた。


最後に、一言吐き出した。


「西の町だ。西の町へ行ったことはないのか?早く行け。そうしなければ臭くなるぞ」


私は意味が分からず、強い嫌な予感に駆られ、具体的な場所も聞かずに西の町へ走り出した。店先の肉桂や丁子のにおいは雨に濡れ、重く粘り気を帯びていた。隣のまな板の血生臭さと混ざり合い、得体の知れない臭いになっていた。


西の町に着いたが、場所が分からず、あちこち探し回った。


どれだけ時間が経ったか分からない。雨音がますます激しくなり、マントはびしょ濡れになり、鉛のように重く頭に乗っかった。


私は遠くから、伝道用の木台の下に、判別困難な形があるのを見つけた。


吐き気が込み上げ、私は口を押さえ、くるぶしまである泥の中にひざまづいた。考えようとする脳が、目の前の光景で一瞬にして押し潰された。


指の隙間から流れ出るのが雨なのか、吐瀉物なのか分からず、すべてが茶色い濁流となって雨に流され、波紋を立てた。


私はよろけながら立ち上がった。もともと誰もいなかった広場に、一つの影が増えていた。


ジェスの妻が、私の少し先の軒下にぼんやりと立っていた。雨除けのボロ布が泥の流れの中に落ちている。


彼女は震える手で声の出そうな口を押さえ、喉から途切れ途切れに漏れるすすり泣きは、泣き叫べない叫び声のようだった。力なくなった足が一瞬踏み外し、肩を軒柱にもたれてやっと倒れずに済んだ。


なぜ大声で泣かないのか?


なぜ胸を裂くような叫び声が上がらないのか?


あまりに静かすぎる光景が、かえって私をからっぽにし、何を言えばいいのか、どう反応すればいいのか分からなくなった。


彼女は勢いよく走り寄せたが、バランスを崩して一歩目で雨たまりの中に倒れた。


激しい呼吸で考える余裕もなく、びしょ濡れのズボンは千斤のように重く、一歩踏み出すのもやっとだった。それでも私は飛び出し、濡れたマントを脱ぎ捨て、まだ乾いていた上着で彼女に雨除けをした。


降りしきる雨で視界が滲んでいるのか、周りのすべてが灰色に変わってしまった。何も聞こえない。私がどんな口調で「子供に気をつけて」と言ったのか。


自分の声も聞こえない。雨のぽつり、ぽつりという音だけが響いていた。


でも彼女に聞こえてほしかった。たぶん、もう聞こえないだろう。


周りを動き回る影が増え、口ごもって何かを囁いているが、何の行動も起こさない。


ついに、押されて近づいてきた男が、いらだたしげに別の者からマントを受け取り、走って私に渡すと、不満そうに去っていった。


私はマントを彼女に羽織らせ、支えながらゆっくり広場の真ん中へ歩いた。踏み出す足跡が次々と波紋を立て、最後の一つが死体にぶつかった。


耐えがたい悪臭が彼女を止めることはなかった。水に浸かって膨れ上がった四肢、皮膚の皺さえ目立たなくなった体を見つめていた。


彼女は確かめようとしていた。あまりに明白でありながら、まだ確かめていた。


ついに爆発した泣き声が、私を音のない世界から引き戻してくれた。


すすり泣きの合間に、受け入れがたい途切れが入る。


自分の顔の表情が分からなかった。だが頭の中にはいつも一つの考えが浮かんでくる。もしあの男から場所をはっきり聞いていたら、もっと早く着いていたら、ジェスの母を助けられたのだろうか?


もちろん、無理だ……。


自分でもくだらない考えだと否定しているのに、何かやり残したことがあるように感じる。


私は突然、昨日サンデルと修道士が話していた西の町の出来事を思い出した。あれはジェスの母のことだったのだ。水浸しになって腐りかけた聖典が死体のそばに浮かび、バラバラになった頁は砕けた命のように周りに浮かんでいた。


もしかしたら昨日の午後、ここで説教していた修道士は、聖典を抱えた老婆の嘆願にも耳を貸さなかったのかもしれない。誰もが帰った後も、足の不自由な老婆が死んだことに気づかなかったのかもしれない。


なぜ彼女はここまで来たのか?聖典の信仰にすがって?


雨の冷たさで意識が朦朧となり、どうやって死体を包み、どうやってここを離れたのか覚えていない。


だけど、ジェスの妻の、最後の空洞な瞳だけは覚えている。


その後、他人から聞いた話では、教会はジェスの母の件で譲歩し、立派な言葉でこれを信心深い信仰の物語に仕立て上げ、彼らの家の贖罪を免除したという。だが私の手に残された得体の知れない罪は、もう償えなくなっていた。


サンデルはあの日、西の町の出来事で贖罪券の価値が下がるかもしれないと知っていたのだろう。だから最後に私がボロを出しても、売ってくれた。もしかしたら彼にとっては、半額になるリスクの方が、その夜に死んだ人間よりも価値があったのかもしれない。


再びジェスに会ったのは、数日後のことだった。


彼は贖罪券と一袋の金を持って私の前に立っていた。姿は昔と変わらないのに、どうしても以前とは違うように感じた。老け込んだわけでも、言葉にならない悲しみに沈んでいるわけでもない。もっと本質的な、もっと……単純な何かが変わった。


「私は、もう行くことにした。妻と子供と一緒に」


彼は相変わらず、無理やり笑顔を作り、他人に不満や愚痴を少しも見せまいとしていた。


「どこへ?」


彼は黙ったまま、声が詰まりそうになった。感情が溢れてきたのか、行き先がまだ決まっていないのか。


彼は贖罪券と金袋を私の手に渡した。


贖罪券は、もう必要なかった。もしかしたら最初から必要なかったのかもしれない。金については、私は彼に返した。


彼は手持ちの金袋を見て苦笑いした。


「クローズ、お前は本当に、全然変わらないな」


私は黙った。私もすべてが変わらなければいいと願った。だが「これから」へ続く道が、何も変わらないはずがないじゃないか。彼が何を言っているのか、私には分からなかった。


もう話すことは何もないと分かった。


彼が去るまで、私は結局、あの言葉を口に出せなかった。


今の彼に、「きっと良くなる」と言える勇気は、まだ残っているだろうか?


この問いに、もう答えは出ない……。


あの日から、すべてがぼんやりとして感じられるようになった。すべてが嘘と現実の間をさまよっているようだった。


それがいつのことだったかも覚えていない。一週間後なのか、一月後なのか、一年後なのか。ただ一つの記憶だけが残っている。誰から聞いたのか、店主なのか、酒客なのか、それとも他の誰なのか。本当のことなのか、嘘なのか、判断もできない。


町から姿を消したジェス一家。彼と、子供は……生まれて数日で感染症で亡くなった。そして最後に、精神的に崩れた妻と共に、人海に沈んだ。


もしかしたら、こんな時代には、善良さは運命を変えられず、信仰はただの枷になることの方が多いのかもしれない。


もしかしたら……


これが、幸福を捕らえる代償なのだろう。

                        幸福を捕らえる代償 終わり


ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。

この物語は 1 月末から執筆を始めました。これまで一度も最後まで書き上げた物語がなかったのですが、文字への渇望に突き動かされ、拙いながら挑戦してみようと思いました。仕事や日常の隙間時間を縫って数ヶ月かけて少しずつ書き進め、今の内容まで仕上げています。『幸福を捕らえる代償』の章は 3 月 18 日に完稿しました。

執筆経験が皆無なこともあり、出来上がった文章に自分自身すら満足できず、多くの箇所を何度も書き直しました。今の段階に至っても、これを「合格した小説」だと胸を張って言うことはできません。しかし、当初の思いに照らして言うなら、一つの物語として、最低限の水準に達していればと願っています。

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