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こんなはずではなかった!~悪役令嬢バーブラに転生した高齢者、梅子の運命はいかに!?  作者: 星野 満


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9. 僕の乙女になったバーブラ

 ✧ ✧ ✧ ✧



 放課後の生徒会室──。

 いつしか生徒会室の窓から美しい紅色(くれないいろ)の夕日が西に輝き、部屋中に陽光が差し込み始めていた。


 今日もレッドフォード王子とバーブラは、来たる各学年対抗の芸術祭の資料作りを行っていた。


 来るはずだった数名の生徒役員は、急用で休みと連絡があった。


 いつものように、王子とバーブラだけで資料作りに(いそ)しむしかなかった。



✧ ✧



 ようやく面倒な資料整理が済んで、レッドフォード王子とバーブラは遅めのティータイムを取った。


 バーブラは杏子(アンズ)ジャムのついたビスケットを食べながら、時折じっと王子を見つめる。



 ──あ、まただ。


 王子はバーブラの目線に気付いた。


「バーブラ、さっきから何だね?」

「あ、いえ殿下⋯⋯何でもないですわ」


 バーブラは慌ててハート型のビスケットを、もぐもぐと森に棲む()()()のように咀嚼(そしやく)した。


 そのまま目線を(そら)らして熱い紅茶をクビっと飲む。


「ア、アチアチィ……」

「おいおい、そんなに一息に飲むとヤケドするぞ!」

「すみません……アチ……」


 バーブラは熱そうに舌をふーふ―した。

 その仕草もなんとも愛嬌がある。

 以前のバーブラだったら一度も見たことのない変顔であり、とっても可愛らしい仕草だった。


 そのままバーブラは頬に熱を帯びたみたいに、チラチラ王子を見つめる。



 ──はあ、この雰囲気?


 レッドフォード王子はまたもや面食らった。


 どうやらバーブラは王子と目が合うと、慌ててサッと目を逸らすのがクセなのか、挙動不審(きょどうふしん)みたいになる。


 だがこういう()()()()を王子はいつも見慣れていた。



 ──そう、これでは他の令嬢たちと同じように『僕の乙女』の一人ではないのか!


 『僕の乙女』と称したのは、レッドフォード王子を、憧れの対象の(まなこ)で見つめる学園の令嬢たちのことだった。


 王族特有の金髪碧眼(きんぱつへきがん)と端正な顔。

 レッドフォード王子は学園でも一、二位を争うほどの美男子である。

 本人も自分が令嬢たちから崇拝されてることに気づいていた。


 うん、間違いない!

 明らかにバーブラは僕を()()として意識している!と王子は直感した。


 しかし、面白い。

 以前のバーブラではとうてい信じられないが、()()()()()()()がそこにいるのだ。



 恋などとは無縁、冷酷無比なのあの『氷の女』が……僕をみて赤面するとな?


 この何週間かバーブラの突然の変化に王子も、振り回されてばかりいた。


 同時にバーブラの不可解な行動と態度は、この上なく心地良いものだとも感じて、王子は王子でこそばゆかった。


 王子の心は俄然、高鳴る!



 ──うん、いい加減、素直に認めよう。


 最近はバーブラといると僕は楽しい。

 少年みたいに心が躍る。


 こうして、ずっと彼女と一緒に過ごしていたいくらいだ。  


 王子はバーブラの全てのリアクションが愛らしくて、コケティッシュで毎回笑いを抑えるのに必死だった。


 とはいえ、王子たる者、舐められては如何(いかん)如何(いかん)


 厳然たる尊厳を失くしてはならない、と自分を戒めた。


「コホン」と王子は小さく咳きばらいをした。


「バーブラ、先日の奇怪(きっかい)な話、マリリン嬢について、本当は話がしたいんだろう?」


「え、殿下?」


 バーブラは顔を上げた。

「マリリン嬢のことを、お話してもよろしいのですか?」


「ああ、君がそこまでマリリン嬢に(こだわ)るのがずっと気に……」


「まあ、ありがとうございます殿下!」

 すかさず、バーブラは王子の話を(さえぎ)って即答した。


 王子はその速さに苦笑した。


 どうやらバーブラはマリリン嬢のことを、王子に話したくてたまらないぞ!という(まなこ)を向けた。


「殿下、マリリン様はこの王国のヒロインとして生まれついた令嬢です。この王国には無くてはならぬ御方なのです。何より彼女は聖女の偉大なパワーがありますわ!」


「聖女の偉大なパワー?」

「そうですわ」

 といってバーブラはスッと席を立ちあがった。


「うっ!」

 珍しくバーブラのシルバーグレーの瞳が、以前の氷の公女を思わせる冷酷に見えたのだ。

 その姿に王子はゾッとした。


「殿下、驚かないで聞いてくださいまし。近い将来、王都は大天災に見舞われます!」


「何だと?」

「駄目です殿下、私の話を最後までお聞き下さい!」

 とバーブラはシルバーグレーの瞳をカッと見開き、眉間(みけん)にしわを寄せて王子を(にら)んだ。


「あ⋯⋯すまん」


  バーブラは王子を(とが)めた後、静かに目を(つぶ)り始めた。


  「──それは千年に一度という、滅多にない大災害でございます。多くの市井の者たちが、川の氾濫(はんらん)で水害に()ってしまいました」


「何と……」


 思わず王子は声を上げた。



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バーブラから明かされる、衝撃の真実!! え、え、どういうこと!?
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