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こんなはずではなかった!~悪役令嬢バーブラに転生した高齢者、梅子の運命はいかに!?  作者: 星野 満


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10. バーブラの舞いと予言

✧ ✧ ✧ ✧



「──それは千年に一度という、滅多にない大災害でございます。多くの市井の者たちが、川の氾濫(はんらん)で水害に()ってしまいました」


「何と……」


 バーブラは王子の反応をまことしやかに無視した。


 すると、バーブラはまるでソネット(定型詩)()むように抑揚(よくよう)をつけて語リ始める。


「──その時、突如女神の如く、マリリン嬢が白い衣装を纏って、市井の広場の登壇(とうだん)に現れました。そのまま彼女が呪文を唱えると、あら不思議、不思議。王都の水がまたたく間に河に戻されていくではないですか!──民たちはその光景を目の当たりにして大歓びです。民衆はマリリン様に向かって『王国の大聖女様、万歳!万歳!』と口々に(たた)えたのです!」


「⋯⋯⋯⋯」


 王子は口をポカーンと開けていた。

 だがそんなのはお構い無しにバーブラの口上は続く。


「──その後、市井の女神となったマリリン嬢と貴方様は、運命の如く出会い惹かれ合うのです。──そしてめでたくご結婚されます。殿下は王妃となったマリリン妃の介助で、より一層王国中から“偉大なる堅王”として()()()()、讃えられるのです!」


 バーブラは細い手を高々と振りかざして、体をくるりと一回転した。


「!?」王子はギョッとした。


 無理もない。

 突然、バーブラはそのままの状態で、王子が一度も見たことのない不思議な踊りをしたのだ。


 まるで舞台女優さながら、なんともへんてこりんな舞いであった。


 なおかつバーブラの踊る姿は、余りにも滑稽(こっけい)でおかしかった。


 猫背で踊るバーブラ。

 ヨタヨタとバランスを崩し、時にはふらつきながら、両手を左右に掲げてあらよ!っと掛け声をかけて踊っていた。


 ───うはぁ! うはぁ!


 バーブラの踊りはよく見る社交ダンスには、ほど遠かった。


 でもなぜだか、王子は以前どこかで見た記憶もあった。


 ──あれ、どこだったかな?  

 このおかしな踊りは以前、どこかで観たことがあるぞ!


 

 一体どこで?


 「!?」 


 そうだ、思い出した!


 確か子供の頃、世界史の教師が見せてくれた、異国の東洋人の祭りで踊る振り付けとよく似ているんだ!



「ぶ~ぶぶぶ──!」


 王子は溜まらずに吹きだした!


「ぶぶぶ?」


 楽しそうに踊っていたバーブラも、王子の苦笑で動きを止めた。


「ぶっははははは!──あはははは──!」


 途端に王子は発狂するかのような爆笑だった。


「ひーっ!やめてくれバーブラ!そのおかしな踊り、腹が、腹がよじれる!ひーっ、あはははは!」


 王子はひーひーと腹を抱えて大笑いした。




 ✧ ✧



 (──はぁ……嫌やわ、()()()()、日頃の金髪碧眼、端正なお顔はどこへいったんや?)


 バーブラはジト目で笑い転げる王子を観察した。

 

 (それにしてもこの人、ホンマによう笑うお御人(おひと)やわ。とっても笑い上戸なんやねえ~)


 何故かバーブラの体内から、老婆の低いしわがれ声が聞こえてくる。

 バーブラは、ずっと笑い転げている王子を見ていい加減ゲンナリした。


 (しば)しレッドフォード王子の爆笑は、一向に(おさま)まらない。


「ぶっははは!──あははは!」


 バーブラは少々不貞腐(ふてくさ)れて笑い上戸の王子に訊ねた。


「あの〜殿下。とても楽しそうな時になんですが⋯⋯そのご様子ですと、私の話をまったく信じてませんわね?」


「クククッ……悪い、ぶぶすまん」


 レッドフォード王子は涙を流して返答した。


「だがバーブラ、君は何だね~新手(あらて)の預言者か?本当は君こそ真の“聖女”なんじゃないのか、イヒヒヒッツ! あ~駄目だ、おかしくてたまらん!」


 王子は再びバーブラのキョトンとした顔を見てさらに大爆笑した。


「いいえ、いいえ殿下!これは笑いごとではございませんよ! 私は大真面目にマリリン嬢の話をしたんですう!」


「わかったわかった、すまん!君が余りにも(えつ)(ひたっ)ってる姿がおかしくて、それにとても愛らしくてな!」


「は?愛らしい──私が?」


 バーブラは意外な王子の言葉に頬がポッと火照(ほてっ)った。


「あ、いやその⋯⋯大笑いしてすまなかった」

 ようやく王子はいつもの表情に戻った。


「──そうだな、実際の話、王都の河川側が街沿いになっている。大嵐がくれば水害のリスクは高いだろう。以前から問題視していたのだ。うん、マリリン嬢が聖女としての力が本物ならば大いに役立つだろう。だがバーブラ、一つ質問してもいいかい?」


「はい、なんでしょう?」


「どうして僕がマリリンと結婚しなくてはならない?バーブラ、その根拠を教えて欲しい」


 レッドフォード王子は真面目な顔になって質問した。

 その顔つきは、バーブラの話を真摯(しんし)に受け止めようとする姿勢が感じられた。



 ──ああ、この人は高貴な王子様とは思えないくらい、とても朗らかで優しい御方(おかた)だ。


 ホントに殿下は優しい……。


 なぜか、バーブラは急に胸がズキズキと痛みだした。



 ──あ⋯⋯もう無理。

 

 この方に最後まで、嘘をつき通すことはできない。


 バーブラは良心の呵責(かしゃく)(さいな)まれて観念した。


「殿下、分かりました! ()()()()()()()()!私の秘密をお教えしましょう!」


「え、ならばよござんす?」


「私は降参致します! もう金輪際(こんりんざい)、何から何まで世にも不思議な秘密をお話しやしょう!」


「しやしょう? バーブラ……その言葉?」


 王子は、バーブラの素っ頓狂(すっとんきょう)な言い回しに面くらったのか、逆に彼の瞳は爛々(ランラン)と光り輝いた。


 まるでこの先、バーブラから、一体どんな面白い話が飛び出すのか、王子は子供のようにワクワクしていた。

 

 バーブラも同様に決心したのか。


 ──んにゃ、この方なら、もしかしたら私の荒唐無稽(こうとうむけい)な話を信じてくれるかもしれない。


 バーブラは自分の過去を一つ一つ、丁寧にそれでいて、ざっとかいつまんでレッドフォード王子に説明していった。




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― 新着の感想 ―
バーブラの舞いにさすがに王子もこらえ切れなかったんですねww ん?ん?バーブラちゃんの様子が更におかしくなったぞ??
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