4. レッドフォード王子のモノマネ
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「殿下、ここは物語の世界ですわ。不思議ですけど異世界に私たちは生きているのです」
バーブラのシルバーグレイの瞳はキラキラと煌めいて当然のようにいった。
「くっ……」
またしてもレッドフォード王子は、バーブラの答えに、爆笑したくなるのを懸命に耐えた。
──まこと、バーブラが大真面目な顔をしていうのだ。
もしここで僕が笑ったら、バーブラの機嫌を損なうだろう。
しばし我慢だ、我慢──。
と王子はなんとか必死で笑い出すのを堪えた。
「んむむぐう~。現実でなく異世界の世界だと?バーブラ、君は夢でもみたのか?」
「いいえ殿下!夢ではございませんのよ。私の意識は恐ろしいくらい、ハッキリしておりますです!」
「はあバーブラ、確かに君は頭を打ってから人が変わったな。アンリが妹にとんでもないお願いをされたとかなんとか……」
「はて殿下。とんでもないお願いなど、いつ私が兄に申しましたでしょうかしら?」
きょとんとしたバーブラの顔を尻目に、レッドフォード王子も、よし、いっちょう流れに乗ってやろうと閃いた。
──うん、とても面白い。
王子は突然、仰々しく両手を固く握り、ネコなで声でバーブラ令嬢風のモノマネをした。
「『おお、どうかアンリお兄様~!私の懺悔を聞いて下さいませ。これまで私は数々の悪事をしてきました。時には私の意地悪で病に倒れた令嬢がいたり、二度と学園にこなくなった令嬢も大勢いました。──どうかお願いです、こんな悪女の私をすぐさま、山奥の修道院へ追いやってくださいまし、およよ……」
と、王子はバーブラの泣き真似までマネして見せた。
あっけにとられて、その王子を凝視するバーブラ。
さらに王子はバーブラ真似を続けた。
「『どうかアンリお兄さまあ~!さすれば私はその場所で日々神に懺悔しながら、余生を過ごしとうございます』と、君はアンリにいったそうじゃないか!」
「ああ、驚いた。いったいどなたの真似をなさったと思ったら、私でしたのね〜!」
バーブラは口を窄めた。
「まったく、アンリお兄様ったらおしゃべりですわね〜」
王子はバーブラの戸惑った反応が面白くて、ククッと口を押えながら聞き返す。
「アンリはカンカンに怒っていたが本当か?」
「はい、仰る通りですわ」
「修道院に行くと言ったのも?」
「はい、仰る通りですわ」
オウムのように王子の質問に答えるバーブラ。
「はあ?バーブラ、君はやはり頭を打っておかしくなったな」
レッドフォード王子は呆れて半眼になった。
「そもそも父君のストライド公爵はその事をご存じなのか?」
「いえ、父にはまだ話しておりません。これから折をみて話しますわ!」
「むむむ……」
レッドフォード王子はバーブラの堅固な表情を凝視した。
──あいや〜不味いな、どうやら彼女は本気だ。これは不味い、さすがにどうにかしなければ。
さすがの王子も、先ほどとは打って変わって真剣な面持ちになった。
「いいかねバーブラ。そもそも僕たちの婚因は子供の頃、公爵家と王家が取り決めたことだ。婚姻を解消しろなど君の意思で、できないのは重々承知だろう?」
「はい殿下、重々承知しております。ですから殿下から国王様に直接、マリリン嬢を見初めて気が変わったと申し出てください。そして私たちの婚約解消をとっとと進言してくださいませ!」
「はあ、マリリン嬢だって──?」
突然、バーブラの口から、王子が知りもしない令嬢の名が飛び出た。
これにはレッドフォード王子も驚愕した。




