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こんなはずではなかった!~悪役令嬢バーブラに転生した高齢者、梅子の運命はいかに!?  作者: 星野 満


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3/13

3. 突然、猫背になったバーブラ

 ✧ ✧ ✧ ✧



 前述したように王子の婚約者、バーブラ・ストライド公爵令嬢は自宅で転倒して頭を打った。


 幸いにも頭のケガは大事には至らず、拳骨(げんこつ)ほどのコブができただけの軽傷で、そのコブも数日で完治した。


 だがその日からバーブラはガラリと人が変わった。


 以前の冷静沈着なバーブラではなく、高慢チキな態度は影を(ひそ)め、家族の顔や使用人を見る度に『ひゃい!』などと変な悲鳴をあげたり、返事もろくにせず、妙にオドオドして顔もよく赤らめた。

 

 とくに侍従たちが驚いたのは食事だった。

 バーブラは食事のマナーを忘れたのか、やたらガチャガチャと食器の音を立てて、食べにくそうにしている。まるで平民のような食べ方だった。

 

 特に晩餐など、何本もあるフォークとナイフの使い方がまるでなってなかった。

 フィンガーボールの水をゴクンと飲んだバーブラを見たメイドは卒倒した。

 

 さらにバーブラの食事マナーを父親の公爵に指摘されると、本人もどうしていいかわからず、(しま)いには人前で食事すらしなくなり、部屋に引き(こも)ってしまった。



「なぜだ、どうしたのだ!娘がおかしくなった!誰か医者だ、医者を呼べ!」

 父親のストライド公爵は真っ青になって、すぐさま主治医にバーブラを|徹底的に()せた。


「公爵様、不思議なことですが、どうやらお嬢様は頭部打撲による一種の記憶傷害のようです」

「なぬ!記憶障害だと?」


「はい、全てではありませんが、部分的に記憶の欠落(けつらく)があるようでして、そのせいで貴族の所作(しょさ)や言動などを忘れてしまったのではなかろうかと……」


「なんと!!」

 医師の診断を聞いたストライド公爵は、およよ……とそのばで軽い眩暈(めまい)をおこした。


✧ ✧



 数日後、バーブラの兄アンリはレッドフォード王子にその(むね)を伝えた。


「レッドフォード殿下、妹は転倒してから貴族の所作や食事、あろうことかダンスの踊り方まですっかり忘れてしまった。更に言動まで時折おかしくなって……ああ、なんたることだ!」


所作しょさや言葉遣いまでか?あのバーブラが? いや、それは信じられんな」


「そう思うだろう、だがな本当だ。ああ何より俺が一番嫌だったのは……」

  とアンリが王子に嘆いたのは、バーブラの歩く“姿勢”だった。


 記憶障害後のバーブラは、常にヨタヨタと猫背(ねこぜ)で歩くようになった。



 ※ ※


『ストップ!やめろバーブラ!ちっとも治ってないぞ!なぜそんな手長(てなが)(さる)みたいな歩き方をする!──もっと以前のように背筋をシャンと伸ばして歩きなさい!』


『はい、お兄様──』

 とアンリが注意すると、バーブラも一旦は背筋を伸ばして歩くのだが、すぐにダランと猫背になってしまう。


 変な癖がついてるのか、これがなかなか治らなかった。


 何度(いくど)となくアンリが注意しても、バーブラの猫背は治らなかった。


 そのまま背骨を曲げて、ヨタヨタと歩き続ける。


 

『おお、なんたることだ、常に氷山(ひょうざん)の如く上を向いて、女王のように闊歩(かっぽ)していた我が妹が!!』

 そのぶざまな姿を目にしたアンリは、天を仰いだ。


『これではまるで、腰を曲げて歩く()()()()()()じゃないか!』



 ✧ ✧



 ──ふふ、確かに。


 腰の悪い老婆とは言い得て妙だ、アンリは中々うまいことをいう。


 レッドフォード王子はアンリの言葉を思い出して、ククッとほくそ笑んだ。



 ──確かにバーブラの歩き方は老婆と見間ごうてもおかしくない。いったい……

 

 とはいえレッドフォード王子は、目の前で落ち込んでいるバーブラが少し気の毒に思えた。


「バーブラ、そんなに落ち込むな。言葉遣いも猫背も、記憶を失ったのなら仕方があるまい。──だが、君の最後の言葉だけは、僕は少し引っ掛かる」


「え、最後の言葉ですか?」 

 バーブラは、顔をあげてレッドフォード王子を見つめた。


「そうだ、物語がスムーズに運ばないと君は言ったね。それはどういう意味だい?」

 王子が質問をした途端、バーブラの顔はパァッと晴れやかになった。


「はい殿下!お答えしますわ、この世界は信じられないでしょうけど、現実ではなくて()()の中なんです!」


「はぁ?」

 

 王子はバーブラの言葉に目が点になった。




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公爵家のみんなも、バーブラがいきなり豹変したらびっくりしちゃいますよね〜! 物語…??
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