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こんなはずではなかった!~悪役令嬢バーブラに転生した高齢者、梅子の運命はいかに!?  作者: 星野 満


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12/13

12. バーブラ=梅子

 ※ ※ ※ ※



 梅子は悟った。

 いやはや、とてもではないが、日本人で年配の私が高貴なバーブラ公爵令嬢など、とうてい生きていけない。


 今はまだバーブラが記憶喪失症とみなされているからいいが、いずれこのままでは梅子の本性が如実に表れて、周りの人々から薄気味悪がられるに違いない。 


 それに『マリ笑み』でのバーブラの未来を考えたら……


 梅子の身体はゾッと悪寒(おかん)がしてならなかった。



 ──はて、どうしたものか?


 梅子は寝ずに思案した。



 そして結論として(ひらめ)いたのは最初から観念すればいいんだ!と気付いた。

 

 このままでいいんだよ!と梅子は思った。

 

 つまりバーブラは頭を打って、別人のように気が触れたのだと、公爵家や周りの人たちが判断して頂くのが一番よいだろうと。


 由緒なる公爵家にとって、頭がおかしくなったバカ娘を社交界に置いとくわけにはいかない。

 

 さすれば、このまま放置しておくと名家の恥となる。

 

 弱り果てた公爵閣下は、いやがうえにでも可笑しくなったバーブラを修道院に入れざるを得えないだろう。


 そう修道院へ逃げ込めば、マリリン嬢や殿下もバーブラの命だけは取らないかもしれない。


 

 ──そうよ、私がバカのふりをすればいいんだわ!


 梅子は急に意欲が(みなぎ)ってきた。

 

 王都から追放されれば、過去のバーブラを知る者は誰もいない。

 

 もっともっと庶民らしく、気楽に生きられる。



 そもそも長年庶民で生きてきた梅子には、異世界の豪奢な貴族生活はとうてい性にあわなかった。


 更に梅子は考えた。



 ──そうだ、それならばいっその事、()()()()()()()()()に自分が、なればいいではないか?


 マリリンとレッドフォード王子の仲を取り持てば、彼らから同情されて、物語の先のバーブラの悲惨な最期はさらに免れるだろうと。


 こうしてバーブラは、何とかして王子とマリリン嬢が結ばれる未来を、早く誘導しようと思い立ったのだ。


✧ ✧



 こうして梅子は正直に、洗いざらいの前世の自分と、バーブラになってからの経緯(いきさつ)を王子にすべて説明し終えた。



「殿下、以上が私の世にも奇妙な話でございます。どうかお分かりになりましたでしょうか?」


「⋯⋯⋯⋯」


 レッドフォード王子は長椅子に腰かけて、腕組みをしながら、バーブラ(梅子)の話を無言で聴いていた。


 その表情は先ほどの茶化していた時とは違って、口をへの字に曲げながら怒っているようにも思えた。


「…………」


 レッドフォード王子が無言のままなので、バーブラは不安になったが再び哀願した。


「殿下、お願いします!たとえ外見が若くても、中身が七十の老婆では、殿下との結婚は到底無理でございます。私の精神が追いつきません!いえ、それより私はこの世界とはまったくかけ離れた世界の人間なので、王族や貴族社会の生活にはまったくなじめないのです!どだい私は……」


「もういい、ストップだ、バーブラ!」

 とレッドフォード王子は片手をあげてバーブラの話を(さえぎ)った。


 王子が不機嫌そうな顔つきをしたのでバーブラ(梅子)は一瞬(ひる)んだ。

 

 だが王子はへの字に曲がった口元を急にゆるめて、いつものように屈託なくアハハハと笑いだした。



「あはは!バーブラ、長々と摩訶不思議(まかふしぎ)な創作話をするとはな。あろうことか君が70代の高齢者だって!うん、なかなかどうして面白い、実に愉快な作り話だった、あははは!」


 とレッドフォード王子は腹を抱えて笑い出した。


 そしてすぐさま真顔になると

「だが、悪いがとうてい僕は信じられんな!」と首を大きく横に振った。 


 バーブラ(梅子)の顔は情けなさそうに歪んでいく。


 (ああ、やっぱり王子はんは、私らの話を絵空事だと思っているようだね)


 バーブラ(梅子)は王子の反応に落胆したと同時に、心の声の梅子がぼやいた。


(そうよねぇ……けれど殿下はんよ。こんなケラケラと笑い上戸で、あんたはんはこの先大丈夫なんかね?──将来国王となる御方(おかた)が、こんな(ほう)けた人では、国の政治(まつりごと)を果たせるのじゃろか?)とも。


 レッドフォード王子は言った。


「バーブラ、正直に言おう。君の話を信じろといってもとても無理だ、余りにも荒唐無稽(こうとうむけい)すぎる。君が別の異世界からきた老婆だなんて、ブッ!無理だ!⋯⋯なぜってその外見からは⋯⋯やはりどうしても信じられん……悪いがバーブラ、僕にはとても無理だよ」



 (あらら殿下はんは()()も無理と言ったね)


 まあ無理もない。

 信じろというのが土台無理な話なのだ。


 バーブラ(梅子)ハァ~ッと、大きな溜息をついた後で、


「ええ、信じてくれるとは半分も期待してませんでした。ですが貴方様が信じようが信じまいが、私が話した内容は真実でございます」


 バーブラ(梅子)は諦めなかった。


「──殿下、実を申しますと、このマリリン嬢が主役の物語は、私、つまりバーバラ嬢の結末はとっても悲惨なのです。──この後、バーブラ嬢は殿下から婚約破棄を言い渡されて、プライドをズタズタにされて嘆き悲しみます。そして、あろうことか最期(さいご)には、彼女自ら()()を選ぶのです!」


「なに、自害だと?」


 さすがにレッドフォード王子の顔色が変わった。


「はい、左様でございます。私はせめてそれだけは、何としても避けたいのです。──どうか殿下、バーブラ嬢に御慈悲(おじひ)を与えてやってくださいまし。せめて修道院だけでも行かせてあげて下さいまし」


「バーブラ……」


 バーブラ(梅子)は自分を凝視する王子から、敢えて(うつむ)いて目線を()らした。


「それでは私はこれにて失礼致します」

 深々と王子に一礼をして、バーブラは生徒会室を出ようとした。


「待て!」

 王子はバーブラの手首をぐいっと強く掴んだ。

「殿下!」

「だめだ、バーブラ、君は僕から逃れられないよ!」


 手を掴まれたバーブラは一瞬ビクッと驚いたが、我が身の危険を察知したのか、氷のような冷たい眼でレッドフォード王子の顔を睨みつけた。



挿絵(By みてみん)

※ 次回が最終回です。(*^。^*)

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― 新着の感想 ―
必死に梅子=バーブラが説得しても、王子はわかってくれないんですね……んー、どうしたらいいんだろう??
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