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こんなはずではなかった!~悪役令嬢バーブラに転生した高齢者、梅子の運命はいかに!?  作者: 星野 満


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13/13

13. 最終話・こんなはずではなかった!

※ 最終話です。

 ✧ ✧ ✧ ✧



 レッドフォード王子は冷たく輝くバーブラ(梅子)の瞳を、なぜかとても愛おしそうに見つめた。


「今さらそんな怖い顔をしても無駄だ!君は明らかに変わった!」


 殿下の碧い瞳がいつものような温かな瞳ではなく、突然妖しげに(きら)めいてるなとバーブラ(梅子)はふと感じた。


「殿下……」

「君が率直に話したから僕も率直(そっちょく)に言おう。僕は昔からバーブラ、君の事は悪いが殆ど関心なかったんだ」


「はぁ……でしたら話は早いです。私との婚約解消するのは願ったり叶ったりなのでは?」

 といってバーブラ(梅子)は、王子の手を無理やり振り払った。

 そのまま(のが)れるようにドアへとスタスタと歩きだした。


 されどもバーブラ(梅子)の心中は王子から『バーブラに関心がない』と言われて、なぜか『自分に関心がない』と冷たく聞こえてしまい、なんだか無性に悲しみが襲ってきた。


 バーブラ(梅子)の目に涙が溢れそうになったので、慌てて目頭をぐっと押さえてドアに手をかけた。


「待て!話はまだ終わっていない」

 レッドフォード王子は、バーブラ(梅子)の肩を強く(つか)み、そのまま無理やりドン!と彼女を壁に押し付けた。


「キャッ!」

 思わずバーブラ(梅子)は、突然王子の荒っぽい行動に悲鳴を上げた。


「バーブラ、どうか僕の話を聞いてくれ!」

「か……壁ドン!?」 

 梅子の声が口から可笑しな言葉が零れ(こぼ)れた。


「カ……カベドンって何だ?」王子は聴き返した。

「あ、いえ……何でもありません。殿下、どうか離してください!」

「駄目だ、さっき僕は逃がさないといったろう?」

「ひぃ……殿下……」

「──いいから最後まで僕の話を聞いてくれ!バーブラ、どうか頼むよ!」


 レッドフォード王子はバーブラ(梅子)の顔に自分の顔がくっつきそうなくらい寄せて、彼女の耳元に哀願した。

「は、はい……」

 バーブラ(梅子)は耳たぶに王子の熱い吐息(といき)を感じてとても心臓がドキドキして困った。


 王子はいたって真剣だ!


 (──はて、こんな王子はん、みたこともないわ)

 梅子はびっくりやら怖いやら、体が強張って来るのが分かった。


「確かにバーブラ、君は絶世の美女で麗しかった。だが“氷の公女”の表情は余りにも、僕には冷たすぎて、まるで真冬に寒中水泳するようなものだ。僕は彼女と接するといつも心が凍りついた」


(真冬に寒中水泳とは、王子はん、あんたはんは面白いたとえをするだわね)


 またもや、梅子のしわがれ声が聞こえてくる。

 

 とはいえ王子の顔はとても真剣すぎて怖いくらいだった。

 これまでバーブラ(梅子)が一度も見た事がないくらい、王子は苦しそうに己の顔を歪めていった。


「わかるかい、僕と会話しても以前のバーブラは『左様ですか』『殿下のご自由に』『私はかまいません』とおざなり程度の返事ばかりだった。あの女は、あいつは何ひとつ僕の事など関心を示してくれなかった。皇太子という地位だけだ。正直、僕はそんなバーブラが大嫌いだったんだ!」


 バーブラ(梅子)は『バーブラが大嫌い』と言われて、更に心がズキンズキンと痛んだ。


「だが──君は違う!君は僕の言葉に真っ赤になったり、急に青褪(あおざ)めたり、驚くくらいくるくる表情を変えるじゃないか!ええ、なぜ突然、氷のようなバーブラが僕の言葉ひとつで、顔色が変化するんだい?」


 レッドフォード王子はバーブラ(梅子)をじっと見つめて、ワクワクして笑った。


「あ……それは……」


「いや、まだだ。僕の話を聞いてくれ!君は意外かも知れんが僕が笑い上戸だなんてねぇ、バーブラはこれっぽっちも知らないよ。そう僕の事などあの女は何一つ、何一つ知らなかったんだ!」


「⋯⋯殿下」

「分かるかい?──君の前だから僕は思い切りバカ笑いができるんだ! 今のバーブラだから思いっきり笑えるんだ。おかしいんだよ、君の表情は!──目まぐるしいほど生き生きと変って、面白くて、つまり、その……とっても愛らしいんだよ!──僕は君といると楽しいから自然に笑えるんだ! バーブラ、いや()()!」


「はい……」


「どうやら僕は君を愛してしまったらしい!」


「!?」

 バーブラ(梅子)は胸が詰まって何も言葉が発せなかった。


「だから君との婚約は絶対に解消しない!ずっとこれから先も、君は僕のものだ!」


(ひえええ、王子はん、それはどうなのよ!)

と、梅子のしわがれた叫びが木霊した。バーブラ(梅子)は真っ青になった。

 

「で、でも殿下……私と添い遂げると、それではこの王国は滅びて……」


「は、迷信だ!戯言(ざれごと)だ。僕は信じない!」


「けれど……マリリン嬢は偉大なる聖女様です」


「そんなの、別に結婚しなくたって良いではないか──偉大な聖女なら、なおさら王都の聖教会で大いに職務を果たせばいい。本物の聖女ならば、見返りなく民の奉仕に応じてくれるだろう」


「それは……そうですけど……」


 バーブラ(梅子)は王子が自分の耳元で、甘く囁くので顔が茹蛸(ゆでだこ)みたいに真っ赤になっていく。


「それに……君の話が正真正銘の話ならば、もう運命は変わった!そうだろう?」

「え?」

「考えても見ろ、君は“老女の梅子”から今は“バーブラ”に転生したんだから!」

「あ、そう言われると確かに……そうですね……」


「ならば、バーブラは既に悪役令嬢ではない。優しく思いやり(あふ)れた令嬢に変身したではないか!」


「殿下……」

 バーブラ(梅子)のシルバーグレーの瞳がキラキラと揺れ動いた。


 同時にバーブラを見つめるレッドフォードの王子の碧い瞳も煌めく。


「あ……あの殿下……」

「ああ、もう互い黙ろう。僕も喋りすぎた!」


 王子は壁ドンから、バーブラ(梅子)の体を自分の体にぐっと引き寄せて抱きしめた。


 そのまま有無をいわさずに、王子の唇がバーブラ(梅子)の唇に(ふた)をした。


「!」

 バーブラ(梅子)は息が止まった。


 そのままバーブラ(梅子)は無ずすべもなく、レッドフォード王子にされるがままに(まぶた)を閉じるしかなかった。


 バーブラ(梅子)はドキドキと胸の鼓動を感じながら観念して思った。



 ──()()()()()()()()()()()


 何故だ、どうしていつの間にこんな事になってしまったのか?


 ああ駄目だ──多分、もう梅子(わたし)は殿下からは、二度と逃れることはできないだろう。


 梅子は確信した──。



 いつしか脳内から、老女梅子のしわがれ声がうっすらと聴こえてくる。


( なんとまあこの異世界という所は、年寄には余りにも“甘美すぎな世界”じゃね〜!)


 

 梅子の異世界物語はここからがスタートだった。


挿絵(By みてみん)



 ──完──



※ 最後までお読み頂きありがとう御座いました。

※ この物語は2025年4月に短編を連載に大幅修正したものです。

※ 完結編の後、新たに続編も書きたいと思ってます。その時はまた、よろしければ一読くださいませ。

(≧▽≦)

※ キスシーンの画像は交流者のくろくまくんが生成AIで作ってくれました。

くろくまくん、いつもありがとうございます。

(≧▽≦)

※清坂 正吾様、くろくまくん。誤字脱字報告沢山ありがとうございました。


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― 新着の感想 ―
ラスト面白過ぎです〜!!ww ついに王子が「梅子!!」と呼んだ!!ww でも、梅子は大真面目〜w 少しずつ少しずつ、問題解決できるようにしていけたらいいですね♪ とても楽しくも面白い、そして夢のあ…
めっちゃ面白かったです。 一気読みしちゃいました。 素晴らしいアイディアでした。 今後の梅子さんの活躍も楽しみにしています。
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