955 力の集約
本当に分裂するか否か。
混沌が本当に分裂するならそれは大事件だ。現在、ファウダーが自分は分裂しないけど……的な話をしていたがそれがどこまで信じられる情報か分からない。自分が吸収されるという可能性はどうなのか、ここもはっきりしない状況だ。
もし、ファウダーが吸収されてしまったら、そのときはブライトが落ち込むどころの騒ぎじゃないだろうし、彼は悲しみと怒りに飲まれるに違いない。そもそもエトワール・ヴィアラッテアがどこまで力を欲しているかにもよる。
混沌の力を手に入れたところでどうしたいのか、手に入れて何になるのか。私たちにはわからない。結局はこの世界のすべてを意のままに的なところなのだろうけど……世界を巻き戻すために混沌の力が必要だと思っているのかもしれない。
「分裂する可能性はあると思う?」
「なくはねえだろ。言い切れる保証はないが、可能性としてはあり得る。ただ、一つに力を集約させたほうがいいのはその通りだ。だから、あの偽物聖女様は自分の力にするために混沌の力を奪いに来るんじゃねえか?」
「ファウダーを守る必要があるってこと?」
「それかもしくは、混沌直々にあいつの力を奪いに行く……とかな」
「でも、混沌は現状まだ完全に目覚めていない状況なのよ。現状でできることなんて多くないと思うのだけど。だから、今の状態で混沌が自ら立ち上がるっていうのは得策じゃないと思うのだけど、どう思ってるの?」
「まあ、それもそうだな。逆に吸収されちまったら元も子もねえ」
「それに、そんな危険な橋……ブライトが通らせるわけないと思うんだけど」
私が言うと、アルベドは「あー」と気の抜けるような声を出した。
ブライトとファウダーは親密とは言えないが、彼らは前の世界の延長線上にいる。だからこそ、お互いにお互いを思っているし、歩み寄るとしている。でも、それが上手く行っていない。
ブライトからしてみれば、少ししか可能性のないことに全ベッドするのは怖すぎるはずだ。私だって賭け事はあまり好きじゃない。確実な方法があるのならそれにかけてみたいと思う。アルベドだって慎重を期しているだろうに。焦っているのも伝わってくるが、焦っていてはどうにもならない。
「実際のところどうなのよ。混沌の力について」
「どうって、あれが完全に発動すれば、闇魔法の力も強くなる。その前に先手を打つ必要があるってだけだ。それ以上でもそれ以下でも何でもない」
アルベドは、頭をかきながらめんどくさそうにそう言ってスッと目を細めた。




