949 恥ずかしがり屋で意地っ張り
「スパイは欲しいとは思うけど……その人にそんな危険なことをさせたくないっていうのもある。もちろん、それはラヴィに対しても思っている。幹部の動きが、この前の世界と違うのよね」
「ああ、この間とは違う。違いすぎてこっちも対応に追われているところだ。つっても、ラヴァインのやつとうまく連携が取れているわけでもねえからな。あっちはあっちで上手くやっているはずだ」
「心配はしてないの?」
「ラヴァインだぞ?心配するだけ無駄だ。なにかあっても自己責任だ」
アルベドはめんどくさそうにぶっきらぼうな口調で返した。そこまで言わなくてもいいんじゃない? と思ったが、未だにかれのなかでラヴァインという人間はとても不安定な立ち位置にいる。弟として見てあげたいと思う一方で、ヘウンデウン教に早々に入信した彼のことを赦せない気持ちもあるだろう。もともと、アルベドは彼に殺されかけていたわけだし、幼いころからいろいろあったという話は両方から聞いている。
ラヴァインはアルベドのことを好いているが、アルベドはそこまでラヴァインのことを好いていない。ラヴァインも自分がアルベドの注意を惹くためには、アルベドにちょっかいをかけるしかなかったのだろう。彼はその方法しか知らなかった。
ヘウンデウン教に入信したのは彼がそうしようって思ったからだし、アルベドは別に止めてもいない。だから自己責任という言い方は間違ってはいないのだろう。もう少し優しい言い方というものがあるんじゃないかと思ったが、アルベドからしてみればそういうしかない……のかもしれない。
「この話、聞くだけ無駄よね。いつも帰ってくる言葉が一緒な気がする」
「そうだよ。だから聞くなよ。あいつはあいつの人生を歩んでんだ。ただ血がつながっているだけだ」
「それでも、彼がもし何かの拍子に消えてしまうのは嫌じゃないの?」
私の問いかけにアルベドの身体が少し動いた気がした。
なにが言いたい? と、アルベドは私のほうを見る。
「……あいつは、勝手にやってるだけだ。なにかありゃ、それも勝手にこっちに報告してくんだろ」
「嫌いじゃないってことね」
「………………勝手にそう思っときゃいいさ。あいつのこと、俺が本当はどう思っているなんて、俺しか知らなくていいんだから」
「恥ずかしがり屋なんだね」
「別に、そういうんじゃねえだろ。ともかく、あいつは……あいつも危険な状況に立たされているのは変わりねえ。なんたって、内側からヘウンデウン教を崩壊させようとしてんだからな」




