950 脱退不可
ずっとラヴァインは危険な橋を渡っている。
ベルがラヴァインのサポートをするとは到底思えないし、かといってベルも、ヘウンデウン教内に他の悪魔がいる可能性を示唆していた。どちらにせよ、二人が危険な状況であることに変わりない。ベルは他の悪魔に殺される可能性があるというのだ。悪魔も悪魔を殺すことがある。それは自分にとって相手が危険な存在、あるいは邪魔な存在だと認知したときだ。悪魔だって死ぬし、そうなった場合、ベルはもう一度何もない虚空へと送られることになるだろう。
(……ラヴィだけじゃないのよね、私が気にかけるべき相手は)
アルベドは、気にしていないと口にしながらラヴァインのことをそれなりに気にしている。彼が逐一アルベドに状況を説明しているかどうかは知らない。彼らのつながりは未だよくわからないものだ。少なくともラヴァインは、アルベドのことを大切に思っているようだし……愛情表現が行き過ぎているけれど、記憶を取り戻した今、同じ方法をしてアルベドの注意を惹くことはできないだろうと考えているはず……
「内側から崩壊させることができればいいけど。そんな簡単じゃないんでしょ?」
「簡単だったら、今頃あいつが大暴れしてどうにかなってるはずだろう。そうじゃないってことはお察しの通りだ。それは、あの偽物聖女様が彼らを統率したが故か、それともほかに理由があんのか。どうやら、前の世界では活躍していなかった……行動していなかった幹部が動いているらしいんだよな」
「幹部が増えたとかじゃなくて?」
「ああ……増えたとかじゃなく、元からいたがお前の妹がヘウンデウン教を率いるみたいになって離脱したっつうか、食指がわかなくなったっつうか……今の偽物聖女様だから動いてやるか……みたいなもんなんじゃねえの?あるいは、その聖女様に操られているか」
「ラヴィがそう言ったの……?」
「そうとも言える詩、俺独自に調べたこともある。ヘウンデウン教内部が様変わりしたのは言うまでもないだろう」
「……そう、なの」
ヘウンデウン教内に革命やらなんやらが起きているのはなんとなく予想はついたが、そこまで深刻とは。幹部であるラヴァインも動くにも動きにくいだろう。
ベルも幹部とはいえ、その動きが簡単ではないと思うし。
アルベドはそんな危険な空間に弟がいても、自己責任だと思っているようだ。それに、いま抜けることも多分彼のためにならないだろうと思っているに違いない。今ヘウンデウン教から抜けるのは非常に困難を極めるだろうし、実質不可能だろう。命の危険性もある。




