947 今の戦力じゃ無理
「たち……か。まあ、そりゃそうだな。お前は一人を愛しているかもしれねえけど、大切なもんは全部守りてえって思うやつだもんな」
「そ、そうよ……無謀だってわかってるんだけど。それでも捨てきれない気持ちもあるっていうか」
「大事に事態紋があるならそれを抱えて生きるしかねえだろ。成功率は高くねえってことだけは言っておくぜ」
「わかってる……わかっているつもり」
言葉がだんだんと弱々しくなっていく。
出来ると思ったらできるなんて生易しい世界じゃない。それも十分わかっているのだが、これまで何とかやってきた。誰かが死ぬなんて言う最悪な事態は避けてやって期は図なのだ。だから今回も……と思っていたが、すでに起きているイレギュラーに対応しきれていないというのもあり、この先上手くいビジョンは見えない。
アルベドは私が失敗する可能性も危惧している。
彼に不安を与えてしまうのは、私のこれまでの行動のせいである。
(上手くいくって思わないと上手くいかないけど、上手くいくって思ったとしても、上手くいくとは限らないじゃない)
アルベドの言う通りだ。
グランツがあちら側についている以上、こちらは劣勢といっても過言ではないだろう。アルベドは戦闘こそ慣れているが、剣術による攻撃をすべて裁けるわけじゃない。それは、裏を返せばグランツがそれだけ剣に情熱を注いできたから。それに勝とうと思うと、同等の技量を持っていなければならない。
魔法で防ごうにも、魔法を切ることができる魔法を使うグランツとアルベドは相性が悪すぎる。
となると、グランツに対抗できるのはリースぐらいで……
(グランツよりも、リースの記憶を取り戻すのは優先しなくちゃってわかっているけど、彼はエトワール・ヴィアラッテアの近くにいたせいで、彼も彼で記憶を取り戻しにくい……から)
魔法攻撃が一切通用しない相手には物理で行くしかないが、その物理も相手側の技量が高いせいで押されてしまうという虚しい結果になっている。
アルベドも劣勢を強いられるだろう。
それでも、負けないと言ってくれた。勝つとは保証してくれなかったけど、彼の性格上ただでは終わらないだろう。ないかしら、グランツに傷をつけるなりなんなりすると思う。
「……対策立てなくちゃね」
「おう。それが一番だな……さっき言ったみてぇに、あいつがヘウンデウン教に加担しているなら……それと、ヘウンデウン教のことなんだが」
アルベドは口を開き、こちらを見た。スッと細められた満月の瞳はなにを言いたいんだろうか。




