940 共犯者の可能性
紆余曲折あり、ようやく私たちは宮殿のほうへと戻ることになった。ロータリーには沢山の馬車が止まっており、我先にと貴族たちが各々の馬車に乗り込んでいく。そこで人間の醜い争いのようなものを垣間見てしまったが、スルーすることにしようと眉間を摘まむ。
「どうかしたのかよ」
「……いや、まだ逃げ切れていなかったって思ってね。まあ、そうよね。ブライトが一時的にどうにかパーティー会場から連れ出してくれていたけれど……それでも、パニックになっていたからみんながみんな自宅に戻れていないわよねって」
「そうだな。そもそも、あんなことがあってすぐに動ける人間はまずいねえだろ。俺たちだってこの前の世界とは全く異なる……いや、全くではないが異なることが起きてたんだ。すぐに対応できなかったんだ。一般的な感覚の人間はまず無理だろう」
「そうよね……でも、無事ならいいのかしら……?」
「いいんじゃねえの?まあ、それは人の感覚次第だな。俺は、必要以外の犠牲が出たときはあれこれ思うが……今回の場合は、奇跡に等しいわけで」
「アルベドどうかした?」
アルベドの言葉が一瞬止まったため、どうかしたのかと彼の顔を覗き込んでみる。しかし、彼は何事もなかったようにいいや、と首を横に振った。
気になるところだが突っ込むのも無粋かと思いとどまった。私がきいたところで、彼がすべて応えてくれるとも限らないのだから。
(今回のことは、エトワール・ヴィアラッテアの単独犯だったのかしら……)
可能性としては、彼女の単独犯か誰か知らの協力者がいたというのが考えられる。肉塊についてよく知る人物か、あるいはエトワール・ヴィアラッテアの糸を汲み取って動ける人物かの二択だ。もし協力者がいたとしたら、その人物は今もどこかで私たちを監視しているやもしれない。
エトワール・ヴィアラッテアの単独犯だった場合は、彼女に多くの人が巻き込まれたという胸糞展開で終わるのだが……
「今回、彼女が勝手に行動した結果こうなったのかしら」
「と言うと?」
「……他に協力者がいた可能性。ヘウンデウン教は、彼女のことを女神のように崇めているじゃない。ああ、えっと、女神っていうか、信仰の対象の一人として……多分」
エトワール・ヴィアラッテアなのか、彼女の力なのか、ヘウンデウン教がなにを見ているかも定かではない。
私の言葉に対し、アルベドはまたしばらく黙った後、そうだな、と言葉を区切って遠くを見据えた。




