939 芯の通っている強い男
同じ方向を向いているようで向いていない。それが今の私たちの現状といったところだろう。
リースに振り向いてもらうためにはまだいくつかやらなければならないことがある気がする。しかし、災厄はすぐそこまで迫っておりこのままみんなが違う方向を向いたまま進めるのは心もとないと思うのだ。リースの記憶、そしてトワイライトの記憶とまだまだ思い出してもらわないといけない人はいっぱいいる。そのためにできることなんて限られているかもしれないけど。
私がリースを見つめていれば、アルベドがポンと肩を叩く。びっくりして肩を弾ませれば、アルベドも申し訳なさそうにスッと手を引いた。
「なんだよ。そんなにびっくりすることないだろ」
「び、びっくりするでしょ……いきなり触られたら……一応、私女の子なんだよ」
「あーそうだったな」
「なによ。今思い出したように。確かに?性別なんて些細な問題かもしれないけど。私は触られたらびっくりするのよ」
「まあ、そういうやつもいるだろうな」
「ほんと、アンタって人に興味ないのね……」
「お前にはあるだろ。少なくとも、ステラには……興味なかったら一緒にいないと思うぜ?」
「そうやって、私をいい気にさせようと思って」
「な、なんか拗ねてんのか?」
アルベドのフラットなところ、少し意地悪っぽいところ。慣れてきたと言えば慣れてきたのだが、それでもこれまで生きてきた中で私と最も遠いところにいる人だなと感じてしまうことも多々あるため、どうしても近寄りがたくなってしまう。本人が一番それに気づいているだろうし、それを人に言われたからと修正することもしないだろう。アルベドは人に言われたからといって止めるような人間ではない。そこが彼のいいところだ。
芯の通っている人間ほど強い人間はいないだろうから。
「アンタはそのままでいいってことよ。ちょっとイラっとすることはあるけど、それでも、アンタのいいところでもあるし、そこを直しちゃったらアルベドじゃないでしょ?」
「何を言っているか分からなねえけど、けなされているって感じはしねえな。それはいいってことか」
「いいってことなのよ。けなすことないでしょ。私が……」
「いや?」
「い、いや?って、私一度もアンタのことけなしたことなんてないんだけど……!?」
いつけなしたか具体的に教えてほしい。私がそんなことする人間に見えるのか、私はアルベドをキッと睨みつけたが、彼は楽し気に頬を緩ませるだけだった。




