937 信用しないと突きつけられる
ブライトが信用しているから、信用に値する存在だというのは間違っていない気がする。むしろそれが一つの指標となるならば、リースの言っていることは間違っていない気がするのだ。
ブライトも前の世界ではアルベドのことを本気で信用しきれていなかった。そこには、彼が闇魔法の人間であること、そして多分彼が人殺しに対しても何の抵抗感もない人間であることに気づいてしまったからだろう。アルベドの醸し出す雰囲気というのは独特のものであり、それにあてられた人間は少なからずゾワッとした不快感を覚えると思うから。
リースも目ざといから信じられないのだろう。アルベドは正義のために人を殺す殺し屋をしていた。それは乙女ゲームの終盤で語られる。メインヒロインがトワイライトのときのみ、優しい教え方なのだが、私のときはそうじゃなかった。まず容赦がない。彼が殺人を犯している現場で遭遇してしまうからだ。今でもそれは焼き付いている。
私は彼のやっていることを肯定しているわけじゃない。アルベドだっていいものだと思っていやっていないだろう。だからこそ、少なくとも悪人を罰する人間になろうとしていたのかもしれない。
しかし、はたから見ればそれはただの殺人犯にすぎず、彼は表の世界でのうのうと生きているということは極めて残酷なことだという人は言うだろう。
彼は、アルベドのほうをじっと見つめている。やはりあと一歩のところを踏み込めていないのか、迷いは見られた。
独特の雰囲気に気おされてなのか、それとも彼の性格やら諸々が受け入れられないのか。理由は多くあるだろう。
ブライトが信用しているという事実を指標に、リースは信頼してみてもいいと前向きに考えているようだ。
アルベドはその答えを聞いて、静かに頷いた。
「まあ、信用してもらおうなんてはなからおもってねえよ。俺のことをどんな人間として見るのかは個人の問題だ。強要はしねえ」
「だが、少し寂しそうだな」
「そりゃあ、面と向かって信用できねえって言われたら多少なりとも傷付くだろう。それとも、皇太子殿下はそうじゃないって言いたいのか?」
「俺は、どうだろうな……信用に値しないと言われたら傷つきはするだろうが、そこまで落ち込むのかどうか」
「はっきりしないんだな」
「言われたことがないからな。想像してみたら……そうだな。傷つくには傷付くだろう。だが、やはりそれ以上何か人に対して関心を持つということはない気がする。そもそも、相手が俺のことを求めていないのだからな」
「はっきりしていて結構なこった」
アルベドはそう言って肩をすくめた。




