936 相容れない瞳たち
(会話が下手すぎるのよ!!)
どうして挑発するようなことをわざわざ言うのだろうか。それになんのメリットがあるというのだろうか。
私にはアルベドのやっていることが理解できなかった。彼なりにリースに対して思うところがあり、もしかするとこの挑発という行為が彼の記憶を呼び覚ますカギとなるのかもしれないけれど。自ら闇魔法の人間だから――というのはいかんせん心苦しすぎないかと思うのだ。彼がいいならいい……でも、あまり自嘲するのは好ましくないと思う。
アルベドがいいならいい……のかもしれないけれど、彼のルーツ、闇魔法の人間がどれほど淘汰され、苦しんできたか彼の口から聞いてからはその言葉がいい物でないことをわかってしまう。
リースは、アルベドの言葉を聞いて心底嫌そうな顔をしていた。その表情になるまでに彼の中でどんな心境の変化があったかはわからない。アルベドの何に対して不快に思ったのかすらも……
「で、どうなんだよ。俺のこと疑ってんだろ?」
「……自ら言うんだな。虚しくないのか?」
「話を逸らそうとするなよ。俺は聞いてるんだよ。やっぱり、皇太子殿下は光魔法の人間だから闇魔法の人間を信じ切れないよな?」
「そうではない。貴様が軽薄すぎるんだ」
「軽薄……ね」
アルベドはリースの言葉を受け、彼を見定めるような目で見つめる。
リースはその視線を受けても動じることはなかったが、彼もまたアルベドのことが気になる様子で見つめていた。
二人は前の世界から相容れない存在だった。きっとこの世界でも出会い方がどうあれ、性格が合わないのだから合わないんじゃないかと思う。
二人の間にバッとはいりたいけれど、アルベドなりに考えがあるならそれを邪魔するのも無粋というもの……私ははらはらとしながらずっと見つめることしかできなかった。
そんな私のほうをリースはちらりと見る。
私は目があってどうすればいいか分からなくなってしまい、にこりと微笑み返した。すると、リースは何か自分の中で整理がついたのかはたりと目を伏せた。
「すまない。そんなふうに詰め寄られるとは思っていなかった。レイ公爵子息がなにを思って今の発言をしたのかはわからない。俺に対してなにか思うところがあるのだろう。遠回しにする理由も……きっとあるのだろう。疑ってはいない。疑っているのであれば、こうやって貴様と目を合わせなかっただろうから」
「本当にそうなのか?」
「……ブリリアント侯爵代理が貴様のことを信用しているのだ。俺も貴様のことを信用するべきだろう……少しは」




