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7月7日の憂鬱   作者: 塩ウサギ
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第十五話 とどめ

さあ盛り上がって参りました!あと何話か乗り越えれば鬱展開の波が引きます!果たしてこの塩ウサギはちゃんとそこまで書けるのでしょうか!

朝、教室へ入ると机の上に菊が置かれている。今ではもう見慣れた光景だ。しかし、私は過呼吸を起こしそうになってしまった。

その日菊が置かれていたのは私の席ではなく、ハルちゃんの席だった。幸い、ハルちゃん本人は来ていなかった。確かに私がいじめの標的になったあの日、ハルちゃんは周囲の空気に流されず全員の前で私を助けた。その日から私は彼女がまた彼らに目を付けられることがないようにずっと1人でいたのだが、もはや手遅れだったのか。他のクラスメイトの視線が私に突き刺さる。

──次は春川さんか。あいつ良い子ぶりっ子だもんね。長月、お前も空気読めよな。

誰のものともつかない声が私の脳を殴る。

──ハルちゃんが標的に変わったってことは、このまま行けば私へのいじめはなくなる。

他でもない私の声がその中に混じった。

悔しいことにそれはその通りだった。このまま彼女を見捨てれば、私の苦しみは終わる。……でも、それで良いはずがない。

『真帆ちゃん』

私の思い出の中で屈託無く笑う、ふわふわとした茶色がかった髪のお姫様。その隣にはいつもハルちゃんがいた。私にとっても由梨ちゃんにとっても、彼女は大切な存在なのだ。

あの日ハルちゃんがそうしたように私も彼女の机の上に置かれた花瓶を持っていった。手が震えてしまい、持った瞬間に落としそうになった。それでもやっとのことで水飲み場にたどり着いたその瞬間、背中に衝撃が走った。

「あーごめん。ちょっと足が滑っちゃってさ」

ごめん、と言う割にはその声は笑っていた。背後には3人の女生徒。私の背中を蹴ってきたクラスメイトの目には、輝きが無かった。

蹴られた衝撃で落ちてしまった花瓶は、私の足元でガラスの破片と化していた。上履きは水に濡れ、ハイソックスまでべちゃべちゃだ。

「大丈夫?掃除、手伝ってあげようか?」

私を蹴った彼女の取り巻きとおぼしき二人はニヤニヤ笑いを浮かべながら私に近付き、濡れた雑巾を投げつけてきた。何も言わず座り込んだままの私が気に入らなかったのか、彼女らは去っていった。

「空気読めよ、ウザイ」

三人の中の誰か分からない声が、ポツリとそう言った。

しばらく呆然として座ったままだった私の上に、寝癖頭の長い影が伸びてきた。

「長月」

振り返らなくても分かった。デネブだ。

「……デネブ。ハルちゃんが何したって言うの?」

「……俺だって聞きたいわ。とにかく、春川を助けるのはもうやめろ。天界の狙いは最初からこれやったんや。お前に自責の念を与えて自殺させるつもりやったんや」

私は耳を疑った。まさか、彼女を見捨てろと言うのか。

「何言ってるの?ハルちゃんは私を助けてくれたんだよ?それに、ハルちゃんが悲しんだら由梨ちゃんだって……」

「それはお前も同じや。被害に遭うのがお前だろうが春川だろうが鈴村サンは悲しむやろ。それに、これでお前がクラスの空気に逆らったら奴らの思う壺や」

「……私なんかどうでもいい」

「良いわけないやろ!お前、死んでもええんか!?」

「あんたが私を死なせたくないのは天界への抵抗の為でしょ!?」

デネブは黙ってしまった。少なからず当たっていたようだ。それにますます腹が立ち、私は怒鳴った。

「思う壺でも良いよ!大事な友達も守れない私なんて、由梨ちゃんに受け入れられるわけないじゃん!そんな私になるくらいなら……あんたみたいなカッコ悪い生き方するくらいなら、死んでやる!」

私はべちゃべちゃの靴のまま、学校の外へ飛び出し、家に戻った。幸運にも今日は両親が仕事で早く出掛けていたので、家に帰っても誰にも何も言われなかった。自分の部屋に入り、引き出しを漁ると……あった。昔買った便箋と封筒。シャープペンシルを制服のポケットから取り出し、「遺書」の文字とハルちゃんを守れない罪悪感で死ぬという旨の文章、そしてハルちゃんと由梨ちゃん、 両親への謝罪の言葉を書いてまた学校へ向かって走った。

やけに空が澄みきった、天気の良い日のことだった。

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