第十四話 恋敵
今回はちょっとだけ短めです。文章ってなかなか書けないですね。
帰りのホームルームの終わりを告げるチャイムが鳴り、教室にいたクラスメイト達は一斉に各々の目的の為に動いた。真っ先に帰る者、友達も待つ者、部活に行く者。私は制服の集団の中から待っていましたとばかりに抜け出し、学校を出た。デネブを待った方が良かったのかもしれないが、早くこの空間から出ないと気が狂いそうだった。
私は走った。誰かに会ったら、また何か言われてしまいそうで怖かった。しかし、信号を待っていた時に背後から声をかけられた。
「あの……長月さん」
その男の声はデネブのものでも、ましてや由梨ちゃんやハルちゃんのものでもなかった。振り返ると、デネブよりよほど背が高く、優しそうな顔をした青年がいた。
「え、犬飼……?」
犬飼蒼太。クラスメイトで、由梨ちゃんの想い人で、正直私があまり関わりたくない人物だ。なぜよりによって今私に話しかけるのだろう。彼はこちらのそんな動揺も知らず、わざわざ私の隣まで来た。
「長月さん。今日大丈夫だった?」
何について「大丈夫」か聞かれているのかはすぐに分かった。そして、全く大丈夫ではないことも。私は何も言えなかったが、犬飼はお構い無しに続けた。
「……ごめんな、止められなくて。それにしてもあいつら酷いよな。別に長月が何かしたってわけじゃないだろ?ああいうの気にしない方がいいよ」
この男は一体何がしたいのだろう。ハルちゃんならともかく、別に前から仲が良かったわけでもない私を助ける義理は無いだろう。なのに、なぜこんなことを言うのだろうか。そう思っていると、彼は懺悔するように言った。
「俺の妹もさ、昔長月さんと同じようなことされてたんだよ。クラスの中で威張ってる奴らに目付けられて、鞄に塩入れられたり、体育の授業で全員から一斉にボール投げられたり。それであいつ、今でも学校行けなくてさ。……おかしいよな、こんなのが犯罪じゃないなんて」
犬飼は私が何も聞かなくても話し続けた。正直あまり彼とはいたくないが、何か言葉を発する気分になれない今の私にとっては楽だった。
「長月さん。何かあったら俺、話聞くから」
それじゃ、俺こっちだから。そう言って彼は横断歩道とは真逆の方向へ走っていった。
それにしても、デネブも言っていたがなぜハルちゃんや犬飼が洗脳されていないのだろう。私を殺すつもりならば、私を助ける可能性のある人間を残すのはあまりにも間抜け過ぎる。……まあ、いいか。私さえ耐え抜けばどうにかなるだろう。これは天界と私の戦いなのだ。
この時の私は本気でそう思っていた。「あまりにも間抜け」なのが自分だということにも気付かず、自分の周りの大事なものが音を立てて崩れ落ちることにも気付けずにいた。
明確にみんなが壊れ始めたこの日は、私が遺書を書く数日前だった。




