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復讐の鐘が鳴る時  作者: 柊なつこ
一章 荒れ狂うは雷の刃
24/28

オ買イ物 ソノ二

もうすぐ戦闘回と言いました。すみませんアレは嘘です。もうすぐ書けると思ったのですがもう少し先になりました

「あぁ、知ってるよ。ここを真っ直ぐ行って図書館を右に曲がったら直ぐナターシャ様のお家さ」


眩しい朝日が通りを燦燦(さんさん)と照らし、マリアとルークの眠気を吹き飛ばす。二人は時々訪れるそよ風に心地よさを感じながら、目的地である聖騎士ナターシャの家に行く為に情報収集を行っていた。


「ありがとう、おじちゃん!」


「お、おうよ! 聖騎士様のお家に何の用があるのか知んねぇがまぁ頑張ってくんな!」


長い時間、聞き込みを覚悟していたのだが、聖騎士と言う事もあってか一人目で家の場所が分かった。流石は聖騎士知名度が高くて助かる。


「どうしたのお兄ちゃん?」


「...何でもねぇ」


マリアにはある特殊な能力が備わっている。


人と...いや人だけでは無い。色々な生き物と親しくなるのが異常なまでに速いのだ。


現にさっきの老人も会った時は俺達の事を警戒していたがマリアが話し始めた途端、『あそこの店の飯は安くて美味い』『あそこの店は冒険に必要な物を安く手に入る』とペラペラと聞いてもいない事を話してくれた。


「よし! しゅっぱぁーつッ!」


俺の住んでいた場所は、殆ど妹と同じ位の年の()が居なかったせいか、みんなそう言うものなのかとばかり思っていたのだが――。


「――やっぱり違うか...」


「何か言った?」


「何でも無い。早く行こうぜ」


「そうだね」


老人の指差した方向に足を進める。


「...お兄ちゃん」


「何だ?」


「ナターシャさんの家に行く前に、その剣に入る鞘買って行こうね」


「――え? あ、...そうだな」


マリアの言う事は最もである。ルークは目的の事に対して集中し過ぎたせいか、周りで起こっている事に全く気が付いていなかった。


家に行く事に集中しすぎて忘れていた。今思ったら片手に魔剣を持ちながら歩いているのはおかしい。俺の住んでいた田舎だと怪しまれるだけだが、こんな大都市でそんな事をしていたら下手をしたら兵士に捕まってしまう。


そんな事になってしまったら大幅な時間の無駄(タイムロス)になってしまう。


制限時間(タイムリミット)は今日の日が落ちるまで。極端な話、一秒でも時間が惜しいのだ。


幸運にもさっきの老人に鞘のありそうな場所を聞いた。いや、勝手に教えてくれただけなのだが...。


「冒険者の店って何処って言ってたか覚えるか?」


「ちょっとお兄ちゃん! 人の話聞いてなかったでしょ!!」


「...ごめん。ちょっと考えながら聞いてたから」


「もう...確かこっちって言ってたかな.....」


一人でずかずかと早歩きでルークを置いて行く。幸いにもナターシャの家と同じ方向。目的地に行く途中に立ち寄ってから向う事にしよう。






「すみません。この近くに冒険者の道具を買える店知りませんか?」


老人に言われた方向に行ってみたがそう言った店らしき建物は無かった。このまま探し続ければ時間が掛かと判断したルークはマリアに頼み、また、道を通る人に店の場所を聞いてもらうことにした。そして、一人の若い女の人に行き当たる。


「ザックさんの店の事かい? あの場所看板とか無いから見つかりにくいのよ――えーと...あそこだよ。あの一見物置見たいな建物」


店を物置呼ばわりするのは失礼な気がするが。確かに見てみれば店と言うより物置と言った方が信じる人がいそうな程店の前には何か分からない道具の様な物が散乱している。埃が被っているのを見ると何年も外に置きっぱなしになっている様だ。


「...他の場所って無いですよね?」


マリアも何かを察知したのか警戒している。しかし、返って来た言葉は以外なものだった。


「あの店本当に大丈夫かって気にしてるんでしょ? もしそうだとしたら心配する必要は無いよ。店の中は汚いけど品質は高いし。ザックさんは駆け出しの冒険者相手に足元見たりしないからね。――あーでもちょっと口が汚いかな? まぁ冒険者組合(ギルド)指定の店だし。保障は出来るよ」


「うーん...どうする? お兄ちゃん」


外見はアレだが冒険者組合(ギルド)の保障があるのなら文句は無いだろう。それに、今から他の店を探している余裕も無いしな。


「ここにしよう」


「お兄ちゃんが良いなら良いんだど...」


「あんた達兄妹かい?」


「そうだけど」


「これから大変だろうけど頑張んなよ? それじゃあ私はもう行くから」


「え? 何の事?」


そう言うと女性は二人の返事を聞かずルーク達が泊まっている宿の方向へと消えていった。


「俺たちを見習いの冒険者と勘違いしたんだろ。それより早いとこ買いに行こうぜ」


「ちょっとお兄ちゃん持ってよ!」


開けっ放しの扉を尻目にそのまま入って行くと。...想像していた通りの場所だった。壊れかけの商品だなから商品が落ちかかっている、いや床を見てみると既に落ちている物もある。


「誰かいないのか?」


それに客が着たのにまったくザックと言う人物が出てくる気配すらない。


「すみませーん」


マリアが続けて声を出す。


「...」


本当に冒険者組合(ギルド)お墨付きなのか?


「お兄ちゃん」


マリアが目で合図を送ってくる。


「おう」


「「いっせーのーで――」」


「「すぅぅぅみぃぃぃまぁぁぁせぇぇぇんッッ!!!!」」


ルーク達は大きく息を吸うとこれでもかという程の大きな声で奥に引っ込んでいるであろう亭主を呼んだ。


「そんなでかい声出さんでも聞こえておるわァァァァァァッ!!」


「ひぃ!」


すると逆に暗闇から二人の声の二倍の音量の男の声が店内に響き渡る。店内は僅かに揺れが起こり。棚から幾つかの物が落ち、床に散乱した。そして鍛冶の道具の入った道具箱を抱えながら一人の鍛冶妖精(ドワーフ)が姿を現す。大人の腰ほどの身長に見合わない堀の深い顔。ソノ顔に蓄えられた立派な髭は身に着けているエプロンと同様、煤で真っ黒になっている。


「こ、この剣に合う鞘が欲しいんだけど...」


そう言ってザックの目の前に差し出すと、ザックはそれを分捕るように受け取り、頭を掻きながら再び奥に入っていった。


「...オメェこの剣何処で手に入れた?」


「何処で手に入れたのかは知らねぇ。その剣は親父の形見なんだ」


「......そうかい」


本当の事を言う訳にはいかないので嘘をついた。どうせ言っても信じないだろう。


でも何故だろう。この人には俺の嘘を見透かしている様な気がしてならない。一瞬だが目が合った時、鋭い眼光がそう錯覚させたのかも知れない。


でももしばれたら?


...いいや。そんな事ある訳ない、普通の人は十崩器が存在している事自体知らない筈だ。


でも、もし知っていたとしたら? この魔剣の事を知っているという事は分配された(いず)れかの国の関係者と言う事になる。


だとしたらどうなる?


そんなの分かりきった事だ。この魔剣を求めて国が俺達の所にやってくる。


どうなったら俺はマリアを守れるのか?


答えは(ノー)だ。相手は訓練された騎士や兵士。もしかしたら聖騎士だって来るかも知れない。そうなったら俺が逆立ちしても相手の足元にも及ばない。


クソ! 


今になってこいつがどれだけの価値があるか実感してきた。もし奪われてもしたら――


「ほらよ」


「ッ!」


気付かぬ内に鞘に収まった魔剣が目の前に差し出されている。


もう終わったのか?


「ベルトも鞘も新品だ。埃を被っちゃいるがな。ホラ...合わせて銀貨一枚だ」


ザックの顔色を伺う。


...ばれた様子は無い。本当に気のせいだったのか?


「え! そんなに安いの?」


「新品だがもうずっと売れ残っていたからな」


「ありがとう! ザックさん! ...あ」


何かに気付いたかのか壊れた人形の様にぎこちない動作でルークを見つめる。


「ど、どうしたマリア」


「えーと...お兄ちゃんお金持って......無いよね?」


「はぁ!?」


その言葉に反応して元から険しい顔の鍛冶妖精(ドワーフ)がより一層、険しくなっていくのが分かった。


「あ、だ、大丈夫だちゃんと持ってるぞ! ほれ」


危機を感じたルークは急いで目の前にいる


「ったく。...待ってろ、今釣り持ってくっから」


ポケットに入れていた金貨を一つ取り出しザックに差し出した。それを受け取ると今度は魔剣が収まった鞘をルークに向って放り投げる。


「おっと!」


「付け方分かる?」


「付け方って、俺は子供じゃねぞ」


受け取った鞘を慣れた手つきで腰に取り付ける。そして何度か跳躍(ジャンプ)をし、強度を確かめると鞘から魔剣を抜き出す。


「何か問題あったの?」


「いや。何でもない」


恐ろしい程馴染む。まるでこれ剣専用に造られた鞘みたいだ。...考えすぎだ。この人が狙っている訳が無い考えすぎだ。昨日のトルエラさんの話を聞いてからどうも神経質になりすぎている気がする。


気のせいだ。


ルークはそう自分に言い聞かせながら魔剣を鞘に戻した。そして、丁度ザックが戻ってくる。


「ほれ。釣りだ持ってけ」


ザックから渡されたのは小さな入れ物(ポーチ)だった。肩に提げれるように紐が付いており、中身は財布が入っている。


「あの」


「どれももう使わん物だ。売るにしても冒険者らには小さすぎて売れん。見た所オメェら入れ物一つも持ってないだろ? あって便困るもんじゃない。持ってけ」


「でも...」


「いらんのなら良いんだぞ?」


「おっと!」


ザックが入れ物(ポーチ)に腕を伸ばそうとした瞬間マリアが間に入った。さっきまでザックの声に怯えていたとは思えない程、目はキラキラと輝いて見える。


「おいお前」


「良いじゃん唯でくれるって言ってるんだから。貰わないと損でしょ? おじさんありがとうまた来るね!」


「おい! ちょっと待てよ!」


マリアは取られる前に此処を出ようとルークの手を握りザックの返事も聞かずに早足で店を出た。


「ったく...親が親なら子も子だな(・・・・・・・・・・)


呟くように言うと再び道具箱を携え、店の奥へと入って行った。




「おい、もう良いだろ離せよ!」


「はいはい」


店を出て少しした所で立ち止まる。


「...」


「どうしたの? お兄ちゃん」


「何でもない」


「ふーん。それはそうとその入れ物(ポーチ)私にかして」


「渡してどうするんだ?」


「お兄ちゃんお金の管理なんか出来ないでしょ? だから私がするの」


そう言うとルークの右手からポーチを奪い取る。


「...しょうがねぇな。それより早くナターシャの家に行こうぜ」


「ちょっと待って!」


歩こうとした瞬間。マリアがルークの腕を掴んで止める。
















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