表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

174/394

174.合流

「というかなんだそれ、何持ってるんだ、重そうだな。持ってやろうか?」

アトを見つけたアルゲドが驚いたように言った。


「え、あ、うん、えーと、うん、ありがとう」

アトは、オクロドウさんの反応をちょっと気にしながら、アルゲドの好意に甘える。


「うわ、重いな、これ、なんだ、斧、きれいだな」

「うん、領主に伝わる、すごい斧だって。知らなかったんだけど」


「・・・アト様」

静かに上から声をかけられた。オクロドウさんだ。


「は、はい」

自分の命にかかわるという斧を、あっさり他の人に持たせて怒られるかも、とアトは若干身が縮んだ。

その様子をみてオクロドウさんはまたため息をついた。何かをあきらめたようだ。それでも、小言のように言った。

「くれぐれも、気をつけてくだサイね」


「はい。あの、ありがとうございます」

「はい」

オクロドウさんは、それからアルゲドに向かって

「では、アト様をよろしくお願いしマス」

と言って、一人で真っ直ぐ歩きだした。


「え、オクロドウさん? どこへ?」

アトの問いに、オクロドウさんは振り返って、答えた。

「イングス様に頼まれた、ナナキーナという人について、書庫をさがしマス。情報は、多い方が良いでショウ」


「あ、はい」


アルゲドと、アトで、オクロドウさんの後姿を見送った。


「俺、オクロドウさん、初めてちゃんと声かけてもらったかもしれない」

真顔ながらもちょっと顔を上気させて、アルゲドが言った。


***


アトは、自分に会いに居城に来ていた、アルゲドを始め、キロンとクリスティンとも合流した。

そして今、一階の台所に繋がっている部屋の大きなテーブルに四人で座っている。


というのは、合流そうそう、三人が口々にいろんな話をしてきたが、アトには良く分からなかったのだ。

少し座って、話をゆっくり聞こう、アトの部屋でお茶でも飲みながら・・・と思ったら、メチルは今居城には居なかった。

そうだ、モリジュお婆ちゃんが亡くなったんだ、今日は葬儀だ・・・とアトがオクロドウさんに教えてもらった事を思いだしたら、キロンが、「それは違う、モリジュお婆ちゃんは生きている、間違いだ」などと言う。

混乱しまくりである。


とにかくやっぱり落ちついて話を聞きたい、お茶もちょっと飲みたい、という流れで台所まで来て、料理中のサルトを発見した。マチルダさんもモリジュの葬儀で今は居城にいないから、父イングスに頼まれて、サルトが皆の食事の準備をしていたのだ。


というわけで、サルトにお茶を貰って、1階の台所の傍にあるテーブルにてお茶を飲みつつ話を聞く事になった。ここなら、サルトにも、同時に話を聞いてもらえるし。


ちなみに、なぜか、町の外から来た商人の男の人も、台所にいる。

不思議だ。なぜこの人が台所にいるのだろう。

と思っていたら、サルトが説明してくれた。

「料理を手伝うから、その分はやく子どもを見つけて欲しい」という事で、商人の男の人も今料理をしているのだそうだ。


商人の男の人は、クリスティンやアトを見て、何か言いかけたが、サルトが手で抑えるような仕草に抑えたようで、結局何も言わなかった。

それでも時折チラチラとアトたちを気にしつつ、ムスっとした表情で、手際良く料理を作っている。とても色鮮やかな、見慣れない町の外の野菜たちが、ゆすられた鍋の上を舞う。


意外な状況で、どうやら、自分が眠っている間に、とてもたくさんの色んな事が起こったんだな、と、アトは思った。


ちなみに、斧は、余っている椅子の上に置いている。聖なる斧の割に、アトに見つかって以来、その扱いは雑である。


さて。

「えーと、つまり」

三人からの話を聞いたアトは、話をまとめようとした。


「昨日、石見の鏡で、皆が死体を見つけたんだね。で、父上たちが確認したら、それは老人の死体だって、いう話になった」

アトの発言に、アルゲドが答えた。

「うん、そう。死体は、石見の鏡に沈んじゃったんだけどな」


「一方で、キロンは、モリジュお婆ちゃんの姿を、死体を見つけたあとに、見た」

「アルゲドも一緒だったんだ。でも覚えてないってさ」

とキロンが答える。


「うん、で、二人でモリジュお婆ちゃんが塔から出てくるのを待ったのに、出てこなかったんだよね」

「そう」


「で、それなのに、石見の鏡で見つかった死体、老人の死体は、モリジュお婆ちゃんだ、って、話になった、と。死体を見つけたあとにモリジュお婆ちゃんの姿を見てたのに、それはおかしい、って事だよね」

「キロンが、そう言ってる、って話だぞ、それ」

アルゲドが注意する。


「うん。アルゲドは、モリジュお婆ちゃんは見たけど、死体の前に見たのか後に見たかまでは分からない、でも状況をみると、町で行方不明なのは、あの…商人の子をのぞくと、モリジュお婆ちゃんしかいなくて・・・だからモリジュお婆ちゃんが亡くなってるというのが普通だ、って言うんだよね」

「そう」

「でも、絶対、見たんだ、死体を発見した後に、モリジュお婆ちゃん!」

「うん、キロン」


台所で料理中のサルトが、自分たちの会話を、心配そうに気にしている。


「で、えーと、クリスティンとも合流して、とにかく石見の池や石見の塔にいって、モリジュお婆ちゃんを探そう、ってなったんだね」

「そ」


「で、クリスティンが、石見の塔の外をよじ登って、窓まで行った、と。これ、本当に本当なんだよね?」

正直、石見の塔に登れるなど信じられなくて、つい確認してしまう。

「本当です、アト様! 行けたんです」

クリスティンが訴えた。

「よじ登ったのは、本当に本当。ただ、窓まで行ったかまでは、霧で見えなくて、俺たちは見てない、でも嘘をつく必要ないだろ」

とアルゲドも言う。

隣では、キロンが頷いている。

どうやら、信じられないけれど、でも本当に登ったみたいだ。良く分からないけどすごいなぁ、と、アトは思った。


「皆、食べて。どうぞ」

サルトが、四人がいるテーブルの上に、できたての料理を並べ始めた。

「さっきから話を聞かせてもらってるけど・・・食べれるときに食べておいた方が、良いかもしれないね」


四人で顔を見合わせた。

「うん、ありがとう」

食べる事にする。

「あ、しまった、僕、今義手つけてない!」

アトが声を上げた。


「あ、じゃあ、口に放り込んでやるから」

「あ、うん、ありがとう」


「まず何食べる?」

「えーと、サラダ。口一杯に」


「口一杯に入れたら、話せないだろ、アト」

「うん、まぁ」

「口半分にしろよ、とりあえず。別に手間じゃないしさ」

「うん、ありがとう」


「うわ、サラダ、取りづらいなー…あ、ごめん、サルト、悪口のつもりじゃないから、そうじゃなくてさ・・・アト、手づかみで入れても良いか?」

「え、うん、分かった」


「んーとー」

もぐもぐ口を動かしつつ、飲み込みつつ、アトたちは話を続けた。


「クリスティンが、石見の塔の外側を、よじ登って、窓まで行ったんだね」

「うん、そうそう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ