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157.子どもたちは塔にたどり着く

キロン、アルゲド、クリスティンの三人は、石見の塔にたどり着いた。少し急ぎ足で来たから、多分普通より早くたどり着いただろうと思う。


ちなみに、一旦は石見の池、キロンとアルゲドたちが死体を発見したところで足を留めはしたのだが、着いた時に思い知った。


沈んでしまったという死体を確認する術を、自分たちは持っていない、という事に。


行けばなんとかなるのじゃないかと思って来たのだが、実際は、来てみてもどうしようもなかった。

悔しさと無力さを感じるばかりである。


とはいえ、先ほどクリスティンが口にしたように、死体を確認しなくても、モリジュお婆ちゃんを見つけさえすれば良いのだ。

そう、森で迷子になっているかもしれない。早く見つけないと。


少なくとも、今のキロンにとっては、ならば死体は誰なのか、という事は関係ない。


というわけで、道を進んだ。

そして、今、塔までたどり着いたのだ。

この場所は、キロンとアルゲドがモリジュの姿を最後に見た場所だ。(ただし、アルゲドは記憶に無いと言っている)


今、キロン、アルゲド、クリスティンの三人の少年は石造りの古めかしい高くそびえる塔を見上げた。


当たり前の事だが、今日はこの三人の運命の日ではないので、木製の重厚な扉はピッタリキッチリ閉じたままだ。


「さて。来たぞ。どうするんだ」

と、キロンに付き合う形でここまで来たアルゲドが、キロンとクリスティンの2人に尋ねた。


「とりあえず、周りを見てみる。モリジュお婆ちゃんがいないかどうか」

キロンは、塔の周辺を歩き始める。


クリスティンはどうすんだ、と、アルゲドがクリスティンを見やった時、クリスティンは、木製の扉のまん前に立ち、けれどじっと塔の上を真剣な表情で見上げていた。


「・・・」

アルゲドがクリスティンに声をかけようとした時、クリスティンが叫んだ。

「石見の塔の老婆様!! 僕、クリスティンです! お願いです、開けてください! 僕、ダロンを見つけなきゃ! お願い、どうしたらいいか教えてください!」


アルゲドはあっけに取られて、マジマジとクリスティンを見つめた。


「老婆様! クリスティンです! お願い、開けてください! お願いです!」

ドン、ドン、とクリスティンは扉をノックするように叩いた。

「お願いします! お願いします!」


「・・・おい、セレス・・・じゃない、クリスティン・・・」

子どもの間のあだ名で呼びかけかけて、本人の前なので正しく言い換える。


ムダだ、止めておけ、とアルゲドは言いたかった。

だが途中で言うのを止めた。


そうか、そうだ、コイツは、これを頼みに、ここまで来たんだ。


真剣だな。当たり前だけど。


アルゲドも、塔を見上げた。

「俺も探すか・・・」

塔の付近を探す事にした。


***


「石見の塔の老婆様! 僕、ダロンを探したい! お願い、開けてください! 僕のせいで、ダロンが聖域にー!!」


***


 クリスティンの、声がする


世界のどこかで誰かが聞いた。


 あぁ、愛しい稀な存在、クリスティンの、声がする


キィィンと、世界のどこかが共鳴した。


***


 私たちは願う あの子の助けとなれますように


 私たちは祈る 私たちがあの子の力になれるように


***


オォオオオン・・・


***


 私たちクリスタルスレイは願う


 稀な愛しい存在 クリスティン


 世界を愛でるその声の持ち主


 鉱石たちを通じて 世界が喜ぶ声が 私達のところに届く



 私たちは願い続ける


 あの子の助けとなれるよう


***


キ・・・ィ・・・ンン・・・


それは、遠いどこかから、けれど、ずっとずっと、伝えられていた想い。


***


・・・ゴゥウウウ・・・ン・・・・


ある世界の片隅で

人の耳には聞こえない低い低い音を発して

稀なる事に

鉱石が、動いた。


****


アルゲド、キロン、クリスティンは、塔を見上げた。


どうしてそんな気になったのだろう。

来たときはそんな気持ちになどならなかったのに。


石見の塔の周辺を探し、勿論高くそびえる塔を見て・・・。

やはりこちらも、池と同じように、自分たちの手が及ぶところでない、と、途方に暮れかけたのだ。


もう、自分たちにはどうしようも無いのではないかと。

ここではないところに助けを、手がかりを求めるしか無いのではないかと。


塔の正面、木製の扉、クリスティンが咳き込むほど叫んだところで、アルゲドとキロンも傍に立ち。

そう思って、塔を去ろうとした。


それなのに。


ふと、それでいて、皆が。塔を振り返った。

そして、見上げた。


どうしてだか、ふと、そんな気がした。

「登ってみようか」

誰かがポツリと口に出した。


正面ではなく、石組みの塔の、外側から。


塔の外を、登る。


できるはずはないし、できないものだと、知っているのにも関わらず。


なぜか、いける気が、したのだ。


***


さてイシュデンの町の方では、イングスが集まってきた町の皆に状況を確認していた。

「すまない、皆、尋ねたいのだが、昨日、石見の鏡での死体の話が出た後に、モリジュと話した、いや、姿を見たというものはいるか?」


皆がざわざわとして顔を見合わせた。

だが、誰も「見た」と声を上げる者は無い。


ヨリエはイングスの傍にいるが、耳が悪いせいもあって状況が明確に掴めないからなのか、皆の様子を黙って伺っている。


「トールランドに確認した方が良くないか」

誰かが言った。


トールランドというのは、モリジュの息子だ。言いかえれば、グィンの義弟、マチルダの実弟、メチルの叔父。

とはいえ、モリジュは元気に一人暮らしをしていたから、つねにモリジュとトールランドが一緒にいたわけではないのだが。


「呼んでくる」

一人がバタバタと駆けていった。モリジュが暮らしていた家の方向だ。

モリジュの家でも、葬儀の準備をしているのだ。家の葬儀の方を、トールランドが仕切っているはずだ。

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