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128.約束する

「もっと必要か」

「・・・あ、エネルギー?」


「そうだ」

「・・・足りました」

セフィリアオンデスの口調が丁寧になる。

いやだって空気の中に下手したら壊れそうな何かがあるんだよぅー!!


セフィリアオンデスは顔を引きつらせながら、まじまじとトートセンクの様子を見詰め、観察した。


トートセンクの顔色は本当に白くて、泣いた跡が残っていて、しかもまだ泣きそうで、そんな中で静かに口にしたのがエネルギーが足りたかってことで。

それはつまり、この自分について心配したってことで。

泣くほど心配したってことで。


・・・そうか。

と、セフィリアオンデスは思った。


泣くほど、心配させたんだ。トートセンクは動揺したんだ。

自分が、帰ってしまうかも・・・第五世界からいなくなってしまうかもしれない、って。


私が元の世界に去る。

つまり、トートセンクは、一人になる。


あぁ。トートセンクは、怖かったんだ。


セフィリアオンデスは困惑した。

どうしよう。これは・・・うかつに、帰れなくなった。


自分ですら、もう自分がいつまでこの世界で過ごせるか分からなくなっている。

当初は把握していたのに、トートセンクのスミカの下の水に落ちたりこっちの世界のエネルギーを補給したりして、自分があとどのぐらい活動できるのかさっぱり把握できなくなったのだ。


エネルギーを補給し続ければ長くいれるかもしれない。トートセンクに提案のようにそう言われて、自分もそのつもりではいる。

だけど、もしエネルギーの補給が間に合わなかったら。


自分が、一番初めにエネルギーが切れた時、急に倒れた。だから次にエネルギーが切れる時も、同じように急に来る可能性が高いと、セフィリアオンデスは思う。


エネルギー補給というフォローが間に合わなかったりしたら、前触れもなく急に倒れてしまう。そのまま、自分が去ってしまったりしたら。

トートセンクは、大丈夫だろうか。


もう、大丈夫ではないかもしれない。


大丈夫じゃない気がする。


それに、大丈夫でない方が当たり前だと思う。


当たり前の状態に、トートセンクは居て。

で、私は、トートセンクをまた一人残すわけには、絶対にいかない。


少し前までは、どうせ私が帰ったってこの世界に「ヌケガラの体」が一つ増えるだけだしな、なんて思ったけど。

もうダメだ。そんな状態じゃなくなってる。


中途半端にしちゃいけない。

絶対、最後まで、少なくとも私が離れてもトートセンクが笑って安心できてるような状態になるまで。そこまで、私は、ここにいるんだ。

自分がこの世界に現れて、自分がトートセンクに働きかけて、自分がトートセンクに頼りにさせたんだから。


「心配かけた、ごめん、大丈夫。エネルギーが尽きたとかじゃなかったんだってば」

セフィリアオンデスは穏やかに優しくなるよう努めて語りかけた。


「そこ、なんか変でさぁ。体が重くてじたばたしてただけ。エネルギーくれて助かったよ。大分疲れちゃってたから。でも大丈夫、もうホント平気だし」


トートセンクが白い顔のまま、真っ黒い瞳でセフィリアオンデスを見つめている。その黒い瞳には感情がうつっていないように見えた。

セフィリアオンデスはその黒い瞳に自分の姿を写してそれを見た。


アンタに向かって約束しよう。

己に向かっても宣言しよう。


「約束するよ。絶対、私たち― クリスタルスレイは、私たちの世界全てにかけて誓う。絶対、アンタを、トートセンク、アンタを一人にはしない」


トートセンクの黒い瞳がわずかにたじろぎ、その揺らぎが目のふちに水を呼んだ。

セフィリアオンデスがじっとその目を見つめる中、表情は変えず、トートセンクはパタパタと滴を落とした。まばたきさえ、余り無かった。


もう一度セフィリアオンデスは言った。

「絶対、一人にしない。約束するよ。皆で、あんたを大切にする」

どうやって? という疑問のような課題は、勿論自覚しているけれど。


セフィリアオンデスの宣言に、ふっとトートセンクが肩の力を抜いた。

目線を地面に落としたので、涙がボツボツッと地面に落ちた。

トートセンクは少し口の両端を上げ、微笑んだ。

「そうか」


それからトートセンクは再びセフィリアオンデスに目線を合わせて微笑みをセフィリアオンデスに見せた。

「感謝する、セフィリアオンデス」


トートセンクはそうして、両手を自分の背中に回し、プツっと一枚の羽根を自分の翼の中から取った。

「受け取れ。信頼の証になる」


「へ? そうなの? うんアリガト、もらっとくけど」

ちょっとキョトンとしつつもセフィリアオンデスはそれを手にしようと両手を伸ばした。


「呆れたな。お前が初めにこの羽根を狙ったのは、そうと知っていたからではないのか?」

どこか笑ったように呆れているその表情はセフィリアオンデスにとって新しいものだ。


「いやー? 羽根が信頼の証とかっていうのは知らなかったよ」


この答えにはトートセンクの顔が訝しげにしかめられる。

ではなぜ羽根を狙ったのか、とその表情が聞いていたので、セフィリアオンデスは続きを口にした。


「んー、そうだね、とにかく、第五世界の鉱石の王の場所―アンタのスミカの場所が知りたくてさー。ホント、全然見つけられないし、唯一出会うアンタはさっぱり受け付けてくれないし、追い払ってくるばっかだし。で、羽根貰えばそこから取り出せる情報もあると思ってさ。あと、アンタと鬼ごっこ的な交流もできるし?」


まぁイロイロ行き詰って、思いついた行動だったのだが、結局直接トートセンクにスミカに案内してもらえる状況になったので、羽根は要らなくなったのだ。

それがこんな風に羽根を受け取る事になるとは。未来って本当にどうなるか分からない。


「感謝する」

トートセンクがまた言った。羽根をセフィリアオンデスの両手に手渡しながら、その羽根に額をつけた。

それがきっと、トートセンクたち有翼人種の感謝の表し方なのだろう。

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