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127.喪失の危機

慌ててエネルギーを取りに戻っていた自分のスミカで、トートセンクは固まったように動けずにいた。

今、ただ唯一存在していた、自分以外の者・・・セフィリアオンデスの『気配』が消えた。


トッ トッ トッ・・・

上から下へと規則的に流れ落ちるエネルギーの滴。それを受けるべく手にした器から、エネルギーが溢れだし、流れ出してまた下に滴を垂らす。

そんな風になっていても、身動きできない。


トッ トッ トッ・・・


トートセンクの目は開いていたが、前を見ているわけではなかった。ただ見開いていただけだった。

思考が停止する。


トッ トッ トッ・・・


トッ・・・ トッ・・・ トッ・・・


手が、カタカタ、カタカタカタと持っている器ごと小刻みに震えだす。震えにつられて、器の中のエネルギーが散る。


・・・ トッ・・・ トッ・・・


トートセンクは思った。

もう、無理だ。もう無理だ。もう、耐えられるはずがない。

また、


トッ・・・ トッ・・・ トッ・・・


ただ、一人、で・・・


トッ・・・ トッ・・・


トッ・・・ トッ・・・

エネルギーの落下を真似るように、トートセンクの頬をつたって滴が落ちる。


いっそ、全てを壊して。そして、自分も。


“トートセンクー!! あーチキショー・・・”


・・・?


ズリ・・・。

消えたはずのセフィリアオンデスの気配が、なぜかにじり出るようにまた現れた。

トートセンクは瞬いた。まつげから細かいしずくが飛んで跳ねた。

ガタっと、器を持つ手が動いた。大きくエネルギーが散った。

その光る液体の軌跡をやっと目にして。


“ぁああ・・・ つかれた・・・ クソー・・・”


ブツブツと、ここまで聞こえるほどに大声で文句を言っているのが聞こえて・・・。


トートセンクは顔を上げた。


生きている。


トートセンクは慌ててその部屋から飛び出し、スミカかから飛び上がった。


すまなかった。自分がお前を攻撃しようとしたのが悪い

と、トートセンクは思った。


小さな事に腹を立てて、あまつさえヤリで威嚇するなど。本当におびえさせ、走り回らせ、体力を失わせたのは自分のその愚かな行為のせいだ。

なんということをしたのだろう、自分は。


生きてここにいているだけで。それだけで、どれほど自分を強く助けてくれていたか。

それなのに、それに気がついていなかった。


すまなかった。 

 

“あー・・・疲れたっ! 疲れたっ!!”


文句垂れ流し状態のセフィリアオンデスのところへトートセンクが急いで向かう。


***


「だぁ もう、疲れたあああぁぁぁぁああーー!!」

セフィリアオンデスがようやくの思いで変な地面の部分からはいずりだし仰向けに転がり、文句ながらも大声を出す事で元気を取り戻そうとしつづけていたところ。


やっと地面に影が落ちて風が吹いた。

トートセンクが戻ってきたのだ。


「あぁートートセンク」

仰向けのまま、宙にいるだろう場所に向かって声をかける。


遅いよアンタ。とか思いながらそれは口に出すのはなんとか控える。


セフィリアオンデスからは様子がきちんと見えないが、トートセンクは、セフィリアオンデスの頭部あたりに降り立った様子だ。


ずぃっと、セフィリアオンデスの胸元に光るエネルギーの球体が差し出される。


「あ、ありがと、助かるー」

相当じたばたしまくって疲れまくったセフィリアオンデスは、目の前のそれをそのまま受け取ってもらうことにした。飲むように吸収する。


いやー、こんなにこっちのエネルギーにお世話になるとは思わなかった。


はぁー。

飲み終わって、一息。

ウン、元気入った感じ!


セフィリアオンデスは、腹筋でエイっと元気よく上体を起こした。


「あー、大変だった、ホント、あ、でもエネルギー切れじゃなかったんだけどさ、そこさー、なんか、大地、ヘンなんだよね。トートセンク、知ってた? 他と違ってさー、なんか切り離されてるって言うか・・・」

と元気よくしゃべりながら、セフィリアオンデスが、後ろに立っているはずであろうトートセンクを上体をひねって見上げてみると。

「ギャア」

思わずセフィリアオンデスの口から悲鳴がこぼれた。


「なに! コワ! 死にそうな顔!! えっ、なに!?」

セフィリアオンデスがやっとみたトートセンクの顔は、もともと白い上にさらに生気が抜けたような感じで、しかもなんか泣きそうだ。


なんでさ!


いやまて、よくガン見してみれば、頬に涙の跡とかついてるし。

すでに泣いてたんか!?

なんでだ! 何してたのさ!?


「ちょ、えっ、何、ちょっと待ったー」

予想外の様子を目にして若干顔と身を引きつらせながら、セフィリアオンデスはぐるっと半回転し、トートセンクに向き直った。

すると、トン、と、トートセンクも地面に足をついた。と思えばそのままペタリと膝をおって地面に座った。まるでメインの糸が切れた操り人形のようだ。動きはあるのに、ぐったりと見える。


ど、どうしたっていうのさ。セフィリアオンデスは慄いた。

よく分かんないけど、ものすごく大変な感じが。


ちょっと待て待て、考えよう。コイツ、トートセンク、絶対、自分で説明できるところに今、ないよね。

えーと、ちょっと待て待て・・・。


セフィリアオンデスが状況を整理しようと努めていると、トートセンクが静かな声を出した。

「足りたか」


「んぁ??」

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