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122.勇気を出して話す

「起きると、父からの手紙と小箱をもらいました。小箱には、クリスティンが彫った、行方不明の女の子の像が入っていました。名前は『ツォルセティーナ』だと知りました」

アトは話し続ける。

「手紙にあった時間に合わせて父と会って、母のいる特別な部屋に連れてきてもらいました。そして、また、白い世界・・・そっちの世界に行こうと思いました。でも・・・行く前の、やっぱり白い場所でケルベディウロスが待ってました。ケルベディウロスは初め話すことができないみたいで、僕はどうしていいのか分からず、ずっとそこで止まってた。名前を呼んだら、やっとケルベディウロスは話す事ができるようになった。それで・・・僕を助ける、と、ケルベディウロスは言いました。僕が、世界を助けるなら、助けてやる、って」


アトは思い出した。

「・・・そうだ、忘れていました。イシュデンには、運命を教えてくれる老婆がいます。昨日は、僕の運命の日で・・・老婆にあって、変なことを・・・言われました。僕は、世界を救うだろう。早く旅だちなさい、って。・・・それで、ケルベディウロスにまで世界を助けるとかなんとかいわれて、僕は正直よく分からなかった。今だってよくわからない。とにかくケルベディウロスは僕にとても期待しているのは感じました。ただ、途中で怒り出して、話にならないと思ったので、横をすり抜けるようにして、白い世界に行きました」

あの時は、アトは本当に困ったと思い出しながら、話す。


「行くと、黒い・・・パンデフラデ=トータロス=プラムが居て。僕は嬉しかったです。イシュデンで一緒に居る、フォエルゥという動物と、似ていると思って。親しみを感じるんです。パンデフラデ=トータロス=プラムは、話ができないみたいでした。それから、そのうち、すぐ、背中に羽根のある・・・・トートセンクさんが飛んできた」


あ。

「そうだ、パンデフラデ=トータロス=プラムが、僕の義手を壊してしまったのだけど・・・トートセンクさんは、それを危険だ、っていった。話の途中で、トートセンクさんは、またいきなり飛んでいってしまいました。・・・どうしたんだろうと思ってたら、声が聞こえた。ケルベディウロスでした。母が、連絡用に渡してくれていた手鏡を使って、ケルベディウロスが話しかけてきた」


分かってもらえるよう、アトは情報を付け足す。

「僕は、白い世界に、『ツォルセティーナ』という女の子を捜しに来ました。でも、周りにいそうになかった。人影が無かった。だから、ケルベディウロスが『別のところに出してやる』というので、一度戻って・・・人影が見える場所を見つけて、そこに出ました。そこが、たくさんの、白い像があった場所です。」


また、一度息を吐いて、話を続ける。

「人影だと思ったのは、トートセンクさんの姿だったと思います。セフィリアオンデスさんも。トートセンクさんが僕たちの近くにやってきて、何しに来たのか尋ねました。僕は、ツォルセティーナって女の子を捜している、と言いました。トートセンクさんが、ツォルセティーナを見たっていうから、とても嬉しかった。見つかった、連れてかえれるって、思った。その途端・・・」


アトは、瞬間に恐怖が沸き上がってくるのを知った。それをアトは抑えつけようとした。話し続ける。

「パンデフラデ=トータロス=プラムは、確かに、ちょっと、何か払うような、ちょっと動きました」


でも、とアトは思う。言い訳のように、けれど、それを真実だと思いながら。

「でも、何かに体当たりしたわけじゃない。僕だって、何も触ってない」


でも、ひょっとして。

「もしかして、パンデフラデ=トータロス=プラムは、ちょっと当たったのかもしれない・・・でも、そんなものは関係ない感じで、いきなり、傍にあった白いモノが音を立てて割れ出したんです」


思い出す。恐怖がまだすぐ傍にある。肌のすぐそばに、触れている。


「何が起こっているか分からなかった。トートセンクさんが急いでこっちに降りて来るのは分かった。・・・パンデフラデ=トータロス=プラムはバランスを崩したみたいで、しりもちをついて・・・その衝撃で、周りのものが倒れていくように、見えました。色んなところで音が出て・・・割れていった」


怖い。怖かった。怖い。

「何が起こったのか分からなかったけど、周りの物が崩れていくのだと分かった。トートセンクさんたちが必死で止めようとしているのも分かった。僕もしりもちをついた。それが、余計に周りのものを崩した」


「僕は」

アトは、次の言葉を失った。 


***


誰も言葉を足さなかった。誰も助けない。

皆が、アトが再び話すのを静かに待っていた。


少し呼吸をして空気を取り込んで、自分を落ち着かせる。

アトはまた口を開いた。自分が話す番だから。

「・・・トートセンクさんが怒って、僕たちを殺そうとした。セフィリアオンデスさんが、それを止めようとして、僕たちを逃がしてくれた。僕たちは逃げるように、ケルベディウロスのいる場所に戻った。介抱してもらいました。感謝しています。行きは、怒り出して手がつけられないと思ったのに。戻った時は、丁寧に介抱してくれた。・・・良い人だったんだと思いました」


落ち着いてきた。

「休みが必要だと、ケルベディウロスに言われました。それで、イシュデンに戻りました。パンデフラデ=トータロス=プラムも一緒にいたのですが・・・一緒に戻ったと思ったのに、イシュデンには来なかった。ケルベディウロスの場所にももう居ないって・・・。もしかして、パンデフラデという場所に行ったのかもしれない」


本当にどこに行ってしまったのだろう。


言葉を切る。

それで、僕が言いたい事は・・・・なんだろう。


「・・・僕がどうしてそちらに行って、何をして、今戻ったのかは、今話したとおりです。僕は、行方不明の女の子・・・ツォルセティーナを捜してる。さっき、セフィリアオンデスさんが、また行方不明になった、って言ったけど・・・詳しく教えて欲しいと思います。イシュデンに連れて帰りたいんです。皆が探してる。心配している。それから・・・僕、僕たちは、トートセンクさんが大切にしていた場所にいった」

アトは震える心を、奮い立たせた。


「何をしたのか、僕には分かってない。何もしていないと僕は思うから。でも・・・何かをしたのでしょうか?」

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