120.セフィリアオンデス、語る
セフィリアオンデスは、アトたちが白い世界とは別の世界から来た存在だと分かっている。
クリスティンから頼まれて、ダロンじゃない子・・・ツォルセティーナも見つけてあげたいと思っている。
途中でツォルセティーナを見つけた(!!)っぽいけれど、また行方が分からなくなった。
そして、
『ちゃんとトートセンクが話せるか分からないから、言っとくよ』
と、セフィリアオンデスは言った。
トートセンクは戦いが始まってから生まれた人みたいで、ずっと家の中で暮らしていた。
他の人は戦いにいったっきり、戻ってこなくなった。
家の外に出て探して、皆の固まった姿を見つけた。それからずっと一人きりで、その場所を守り続けていて、きっと皆がまた元に戻るに違いないと信じている。
アトは黙っていたけれど、酷く不安になった。
トートセンクが守り続けていた場所というのは、間違いなく、アトたちが顔を出した、たくさんの像がある場所で・・・壊れてしまった場所のことだと思ったからだ。
セフィリアオンデスの話は続く。体力についての話になった。
セフィリアオンデスは、別のところからやってきたから、いつか体力が切れて帰る時がくるそうだ。
でも、さっき、トートセンクに栄養をもらったら体力が戻った。
トートセンクが、定期的に栄養をくれるって言ったから、栄養補給し続けて、もしかして思っている以上に居る事が出来るかもしれない。
それから、セフィリアオンデスは、自分が見たことについて話をした。
白い世界にアトたちがやってきたという話。 黒いワァワァ吼えるのと。“アト様”と。少し長いこと白い世界にいたけれど、二人とも、昨日今日といきなり現れた。『ツォルセティーナ』も、多分、いきなり現れた、と。
アトたちが、正直、何かをやったようには思わなかったけれど、トートセンクの大切にしてきた場所を壊す原因になった気がする、とセフィリアオンデスは言った。
『トートセンクの大切にしていた場所が、半分近く、砂となって壊れてしまった』
誰かが口を挟む前に、セフィリアオンデスは話を続けた。
『長く変わらなかったものを、変える事ができる状態になっているかもしれない』
『正直、私が一番、傍観者の立場にいると思うんだけどさ。だからこそ、聞いてみるんだけど。トートセンクたちの世界は、元に戻るんだろうか? 止まった時間って、動かしたら、どうなるんだろう? あんたたち、一番のオネガイゴトって、一体何になるの?』
セフィリアオンデスは、問いかける。
『トートセンク。言うけどさ。もし、何事もなく時間が戻ったらさ。そのままここは戦場になるよね。アンタがさっきから揺らすたくさんのヤリが、ここらに全部突き刺さるんだ。それって、どれだけ悲惨な状態になるか、想像つかない? アンタの望みは、ただ、時間を動かすってものとはまた違うよね。アンタの望みは、皆と、楽しく過ごす時間を取り戻したいのであってさ。今止まったままのものを動かしても、それは手に入らないと思うんだ』
一息いれて、次に問う。
『えーと、ケルベディウロス。アンタも同じじゃない? アンタ、初めはトートセンクたちと仲が良かったのに、仲違いしたって言ってたね? で、戦争になったんだ。時間を動かして、戦争を続けて、で、トートセンクたちを倒して、で、幸せになるのがアンタの願い? ぶっちゃけ言うけどさ、まず、アンタたちが勝つかアヤシイよね。大分長いこと戦ってこの状態だ。アンタ賢そうだから本当は分かってんじゃないの? 意地になって戦ってるだけで、本当は、どっちも勝者になれないってさ。どちらか、一人になっても残った方が勝ちだとか? 無意識に思ってたのだとしたら、アンタたちはすでに負けてるよ。だって、今、残ってるのはトートセンク一人だけだ。で、トートセンクが幸せになってるかって言うと、違うよね』
ケルベディウロスが静かに言った。
『セフィリアオンデス。それを確認して何を知ろうというのだ』
『私は、ただ、助けになりたいと思ってここに来た。ケルベディウロス。アンタが戻りたいと願いながら、入れなかったアンタの世界に、私は今居て、動く事ができる。私に何かできることがあるなら、動いてやりたいって思うんだ。でもさ。自分が納得できない事は手助けしない』
セフィリアオンデスの声は、真っ直ぐ届く。
『アンタたちの願いは、「時間を元に戻したい」だろ? でも、それをしたら、私は、逆に、助けたかったものを壊しちゃうように思ったんだ』
多くの言葉で、気持ちが語られる。
『アンタたちは、時間が止められたって怒ってるよね。でも、私はさっき、思ったんだけどさ、時間が止められた事は、ものすごい、皆にとっては助けられたことなんじゃないのかな、ってさ。アンタたち、自分の手で自分たちの場所を壊そうとしてる。それを止めてもらったんだよ。時間を止めた人たちってのが居て、「時間を止めた方が良い」って、何かの理由があって止めたのは確かだと思うんだ』
一拍の、静けさ。
『あ、そうだ。まだ話してない事があった』
また話し出したのは、セフィアオンデスだ。
『”アト様”たちが現れて、トートセンクが大切にしている場所、みんなの体を壊した時のコトだけど。・・・声が確かに聞こえたんだよ。ちっちゃい声だけど、“壊れたことでかえってよかった”みたいな事を、言ってたんだよ。・・・アンタたちの戦いは、止められたんだよ。本当のコトは分かんないけどさ。でも、他者の判断による善意で止められたんだと、私は思う』




