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118.ケルベディウロスの話から、思う

ケルベディウロスは語った。

その口調は、まるで歴史の教科書を人前で読んで聞かせるように、妙に冷静で、淡々と聞こえた。


戦いが起こった事。

戦いの途中で、異変が起こった事。

ケルベディウロスが元の世界に戻れなくなった事。

元に戻ろうとした事。戻ろうとしている事。

アトたちの世界-ケルベディウロスの言う『小さき世界』-にいろんな変化が起こった事。


母が、生まれ変わった姿だということ。ケルベディウロスの世界にいた、エクエウの一人であったという事。

(母だけでなく、ローヌというところには、たくさんいること)

(もう亡くなった人もいるということ)


アトが、ケルベディウロスが心待ちにしていた、『ケルベディウロスの世界』に行って来れる人間である事。

(つまり、今までいなかったらしい)

アトがイシュデンの生まれのせいなのかもしれないという事。

イシュデンの霧や、森のいろいろなものが、ケルベディウロスの世界の影響・・・ケルベディウロスの仲間のひとたちの『生まれ変わりの姿』だということ。


(アトについての不思議については、父が理由を知っているだろう、という事も。)



話を聞いて、アトは・・・そして、母も、父も・・・きっと、トートセンクという人も、混乱していたに違いない。自分たちのことも、その話に入っていたのだから。


母が、生まれ変わりだと語られたときに、母は疑わしそうな声をあげた。

一方、トートセンクという人は、何かに急いだような声で、名前を聞いてきた。

母は自分の名前を「サリシュ」だと答えたけれど、ケルベディウロスは『リナッフ』だったと答えた。『イフエルの弟だ』とも。


母はそれに「はぁ!?」と答えたけれど、トートセンクの『あぁ』と、息を吐くような、それでいて少し幸せそうな声が聞こえて・・・正直アトは、不思議な居心地の悪い思いさえした。

どうしてそんな思いになったかよくわからなくなったけれど、それでも、思いっきり怪訝な顔をしている母の顔をみて、父とも目を見合わせて・・・。父も眉根を寄せていたから、きっとアトと同じように、何だか変な、複雑な気持ちをしていたに違いない。


母が誰かの生まれ変わりだと言われても・・・。

まるで母が、本当は『ここにいるのは仮の姿で、本当は違う人なんですよ』なんて言われたような

まるで『ここには仮にいるのですよ』なんて言われたような。

そんなことを言われているのではないと思いたいけれど、まるでそんな感じがして。

正直、ちょっと嫌だった。


この人は僕の母で。他の誰でもない人だと、アトは言いたかったのかもしれないけれど、

その気持ちも自分でもよく掴めなくて、

ただ、もやもやした気持ちを抱えたまま、話を聞いているしかなかった。


***


トートセンクの敵、クォルツと呼ばれる種族の一人であるという、ケルベディウロス。


隣で時折、激しく怒って空の無数のヤリを鳴らすトートセンクをその都度、こっちも必死で怒鳴ったりしてなだめながら、異世界からの訪問者であるセフィリアオンデスは考えていた。


セフィリアオンデス自身は、すでにトートセンクの話を聞いている。

それに、この世界の唯一の鉱物、『第五世界の鉱石の王』からも、歴史と地図を教えてもらっている。

そして、自分がこっちで実際に動いて感じたあれこれ。


そこに今、加わった、ケルベディウロスの話。

 

うん、この世界のコト、大まかなところは、わかった感じ。


昔は仲良かった住人たちが、激しくケンカして、そのケンカの最中に時間が止まった。

止まったっていうか、止められたんだよね。たぶん。時間を止めたのは・・・あの時かすかに聞こえた声の・・・アイツら・・・かもしれない?

この世界を壊すほどの激しい戦いだったから、とにかく止めようとした・・・とか、かしらん?


ま、世界を壊すほどの戦いだったっていうのは、確実に間違いないよね。トートセンクが怒って落とそうとする、上空のたくさんのヤリとか、もうハンパないもんね。あれ、全部今落とされたら私確実に死ぬね。この変な構造の大地もきっとぐちゃぐちゃになるね。


ていうか、そうなる事ぐらい気付いて、自分たちで戦力を抑えろってば! 皆、頭に血がのぼってたのかしらん。

 

でもって、敵側・・・クォルツっていうか、えーと、ケルベディウロス、たちも、多分同じぐらいの攻撃力を持ってたんだろう。戦いが長引いたってことは、勝ち負けがなかなか決まらない、つまり同じぐらいの戦力だったからってコトだ。


もう、皆がアホか! 誰か気付いて『もう止めよう』とか言ってみようよ!


って今言っても無駄なワケなんだけどさ。


真面目に激突すれば、この世界は住人もろともボロボロだ。


自分の場所を、自分を育てるものを、壊して、他に守るモノがあるなんてのは、錯覚だよ。


それにしても・・・時間を止めるなんて、すごいコトができたものだよね。


『第五世界の鉱石の王』からの話でも、この世界にはクォルツとエクエウって2つの種族しかいないってことだった。

その2つともの時間が止まっちゃったわけだから、この世界以外のもの・・・たぶん、別の世界の者が、手を出した-時間を止めたってコトだよね。


・・・まぁ、別の世界からこの世界に実際来ちゃってる私がいうのもなんだけど、なんかフツーはしない、よねぇ・・・。

なんでそこまで、別の世界なのに、ものすごい事をやったんだろう?


・・・・。助けを、誰かが呼んだのかな? 誰かこの戦いを止めてくれ、って?


で、頼まれたので、時間を止めるって形で、戦いを止めちゃった、とか?


うーん。適当だよなあ。でも、まぁ『止めたから良いでしょコレで』、的な人たちが止めたのかもしれないしなぁ。

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