繋がり
失踪事件で知り合った警官と連絡を取ってから数日。
署まで来てほしいと連絡がきたため、しばらくぶりに警察署を訪ねる。
無骨でシンプルな建物の中を案内され、応接室内で連絡を取った警官と話をする。
しばらくすると、事件の捜査をしているという刑事、佐久間さんが部屋に入ってきた。
「捜査のご協力、ありがとうございます」
「いや、いい。それで、どうだったんだ」
「……まず、あなたには今回、事件の被害者ではなくAランク探索者として、事件捜査の協力を求めたい」
「それはかまわないが」
佐久間さんはこほんと咳をして改めて切り出した。
「情報を頂いてからこちらで調べてみたところ、ノヴァリンク・ファーマと真導の会の接点が確認できました」
「……そうか」
「名目上は真導の会への支援、ということで、寄付や物資の受け渡しがあったようなのですが、すぐにわかる範囲では特に問題はなさそうでした」
「……」
「ただ、失踪事件が起きていたと同時期に、その援助が活発になっていたようなのです」
……そうか。
もちろんすぐに明らかになるとは思ってはいないが。
表向きは普通の製薬会社っぽいんだよな。
「それと、ノヴァリンクは海外企業との共同研究も多い会社です。例の薬剤が日本で研究されたものか輸入したものかはわかりませんが……」
「宗教施設に何か残っていたりはしなかったのか」
「それが……あなたを救助していた際、資料室らしき場所が、魔法で意図的に爆破されていました。」
ノヴァリンクか真導の会かはわからないが、用意周到なことだ。
しかし、そうなると今はまだ詳しいことは分からないのか。
「俺が誘拐されてた間の……真導の会の動きは、なんというか……人体実験じみたものだった気がする」
「では、あの薬剤のデータを取ろうとしていた、とか?」
「わからないが……」
「目的は宗教活動ではなく、薬剤の実験だった可能性もありますね」
沈黙が続く。
何か他に覚えていないかと考えてみるものの、ぼんやりとしていたせいかあまり記憶がない。
とにかく今は捜査を進めるしかなさそうだ。
「まあ、他に何かわかることがあればまた連絡をください。万が一、武力行使が必要になった場合はセンさんのお力をお借りします」
「ああ」
席を立ち、部屋を後にする。
真導の会。そしてノヴァリンク・ファーマ。
思わぬところで繋がった。
あの失踪事件は、まだ終わっていなかったらしい。
まさかAランクとしての初めての事件介入が、自分が被害者になった事件とはな。
分からないものだ。
side???
とある研究施設。
無機質な白い壁に囲まれ、様々な実験器具や薬剤が並べられた場所。
そこの責任者の研究主任は資料を眺めていた。
「主任、失礼します。少し、少しご報告が」
「どうした」
「はい。どうやら警察が我々のことを調べているようです」
「ふん、かまわん。どうせここまではたどり着かんよ。好きにさせておけ」
机に並んだ資料の中からまだファイリングされていない束を取り出す。
「そういえば例の実験の被検体はどうした」
「あの事件の後、警察に保護されています。現在はまた探索者として働いているようですが」
「ふむ……あれは逃がすには惜しい。魔人化できるサンプルなど中々見つからないからな」
「しかし、我々の研究の証拠そのものでもあります。消した方がよろしいのでは……?」
そう研究員が言うと、主任は少し考え込んで答える。
「いや。まだ生かしておけ。消すのは最後の手段だ。あれの身体を解析できれば研究もさらに進むだろう」
「は……」
「監視はしておけ。それと、少し試してみたいものもある。例の武器も丁度取り寄せられたことだしな」
「わかりました。人員を手配しておきます」
研究員は答えるとすぐにその場を後にした。
それを見送り、手に持っていた資料を机に広げる。
「被検体No.17……私の研究の礎となってもらおうか」
表紙にはセンの写真がクリップで挟まれている。
『被検体 No.17
探索者名 セン
神化実験 成功
制御 不可能
回収優先度 A』




