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合同説明会

「おー、中々似合っているじゃないか」

「……」


俺に拒否権は無かった。

社内の体格が似ている者から予備のスーツを借りた。

女性陣は嬉々として髪の毛を整えだし、いつもより視界が広くなって落ち着かない。

ミナと近藤さんが写真を撮りまくっている。勘弁してくれ。

時間になり、人事部の社員、そして社長と共に車で会場へ向かう。


「なんだか新鮮ですねぇ。それにスーツ、とってもお似合いですよ」

「……そうか」

「スーツのサイズも丁度よく見つかったしなぁ」


俺はとりあえず立っていればいいと言われた。詳しい説明はできないからな。

ついでに何人かをブースに案内をしてくれ、だと。

……適当にぶらぶらしながら声かけるか。


会場に入ると、すでに何社もの企業がブースの準備をしていた。

参加企業の名札を受け取り荷物の運搬を手伝っていると、隣のブースから声を掛けられる。


「あの、もしかして……死神のセンさんですか……?」

「……ああ、そう呼ばれているが」

「わ、本物……あ、配信見ました!めちゃくちゃすごいですね!」

「……どうも」


そうか。配信のせいでより顔が広まっているのか。

社長の思惑通りというわけか。

アークマテリアルの企業案内のパンフレットを手に取り、パンフレットコーナーで待機する。


……どうやら説明会が開始したようだ。

たくさんの就活生が会場へ歩いてくるのが見える。


「……あー、ダンジョン素材を扱う会社に興味はありませんか」

「ダンジョン素材……って、え?」


適当に近くにいた就活生に話しかけると、見事なまでの二度見をされる。

視線が痛い。穴が開きそうだ。


「えっ……ウソ、死神の……会社!?」

「あ」


中途半端に差し出したパンフレットをひったくるように手に取る就活生。

そんなに握りしめたら曲がるぞ。


「え、本当に本人……?」

「ん?」

「あ、あのっ、お話聞いてもいいですかっ?」

「あ、ああ。こっちだ」


ブースへ案内し、社長たちにバトンを渡す。

就活生は息巻いて席へ座った。

……これを続けるのか。疲れそうだ。

就活か。一応こういった説明会に行ったことが無いわけではないが……企業側はこんな感じなんだな。

まさか桃としてではなく俺がこの場に立つとは思ってもみなかったが。


その後も同じようにブースへの案内をする。

時間は……結構経ったな。ピークは過ぎて、少し人の波も落ち着いている。

パンフレットコーナーをぼんやりと眺める。


「……ん」


ふと目に留まった。

とある企業のロゴマーク。

株式会社ノヴァリンク・ファーマ。製薬会社か。「革新的な医療技術で、人と未来をつなぐ」ねぇ。

背筋がぞくりとした。

……どこかで見たことがある。

どこだ……?絶対に見たはずだ。

なんだか嫌な汗が出る。


……そうだ。真導の会だ。

誘拐、そして監禁……拷問。

記憶が蘇る。

あの薬剤……注射器にロゴマークがついていた。同じものだ。

危険な思想の宗教団体と繋がりがある企業……

パンフレットを一枚手に取る。

……何食わぬ顔で懐へしまった。


もしかしたら、とんでもないものを見つけてしまったのかもしれない。

残りの時間、ずっと考えながら仕事をする。

気づけばもう説明会は終わっていた。


「よおし、お疲れさん。センのおかげで人が沢山来たな」

「急なことだったのにありがとうございました、センさん」

「……いや」


素早く撤収作業を済ませ、会社へ帰る。

考えても仕方がない。

通報……警察に?

以前事情聴取で知り合った人ならいるな。

連絡取ってみるか。


「セン。今日は助かった」

「慣れないことをさせてしまって申し訳なかったです……でもとっても良かったですよ!」

「……ああ」


製薬会社のパンフレットを鞄に入れる。やはり、間違いない。


「なんか、センさん不機嫌でしたね」

「まあ、ちょっと無理やりだったからな……」


社長たちが話しているのも聞き流し、荷物を片付け会社を出る。

……少し、嫌な予感がする。


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