警報
会社帰り。黒いローブを脱ぎ、パーカー姿で道を歩く。
日は少し傾きかけ、俺と同じく仕事帰りの人がちらほらと歩いている。
『ビーッ、ビーッ、ビーッ……』
突然ポケットのスマホからアラートが鳴る。
周りの人もそれぞれスマホを取り出し確認しているようだ。
『ダンジョンブレイク発生情報。ダンジョン付近の方は指定の場所へ避難してください』
ダンジョンブレイク。
ダンジョンから魔物が溢れ出す災害だったか?
珍しいな。この辺で起こるとは。
あれ、もう一通連絡が来ているな。
『探索者名センへ通達。ダンジョンブレイクの鎮圧協力依頼』
なるほど、Aランクの仕事か。サクッと行って終わらせよう。
地図を確認する。
結構近いな。跳んでいくか。
地面を蹴り、蜘蛛脚を展開させつつ建物の上を猛スピードで過ぎていく。
……あった。あそこだ。
鞄から鎌を取り出し、今まさに人に襲い掛かろうとしている大型の魔物へ向かって飛び降りる。
ザン、と首を一閃。
一拍遅れて頭がずれ、魔物は大きな音を立てて倒れる。
「おい、大丈夫か」
「あ……は、はい。大丈夫、です」
「早く避難しろよ」
慌てたように逃げていく一般人。
遠くの方でギルド章をつけている者がいたからすぐ保護されるだろう。
再び倒れた魔物を見る。
……ああ、そうか。ダンジョンじゃないから魔物は吸収されずに残るのか。
服についた血にうんざりする。
洗って取れるだろうか。
ため息をこぼしつつ、次の獲物を確認する。
……結構いるな、面倒だ。周りに人はいないし、少し本気で暴れるか。
「……はは」
自然と口元に笑みが浮かぶ。
感覚が鋭くなる。
やはり、これは愉しいな。
切り刻んでやろう。
「ご協力、ありがとうございました!」
「……ああ」
「……あの、服を洗浄できる者を探してきましょうか?」
「いや、いい。予備がある」
2時間後、ダンジョンブレイクは無事収まった。規模もそこまで大きくなかったみたいだ。
俺はというと、全身に魔物の血を浴び、真っ赤になっていた。
鎌も血にまみれている。
一応、鞄に予備の服を入れていてよかった。桃に感謝だ。
建物の影で服を着替える。
表ではテレビ局まで来ているようだ。
裏から帰ろう。
翌日。
「え、怪我ですか?ダンジョンブレイクに巻き込まれて?……そうですか、分かりました。伝えておきますね」
いつも通り出勤し、ダンジョンに行こうとしたところで、何やら声が聞こえた。
「高橋さん、昨日のダンジョンブレイクで怪我して今日出勤できないって」
「え、今日って説明会でしょ!?高橋さん抜けたら人手足りなくない?」
どうやら高橋さん……松下の先輩が来れなくなってしまったようだ。
そして運の悪いことに、今日は会社の合同説明会がある。
確か社長も自ら参加すると聞いたが。
「あ、社長。今日高橋が怪我で来れなくなったみたいで……」
「なに、そうなのか……高橋は大丈夫なのか?」
「あ、数日入院だそうです。それより説明会、どうしましょう」
「そうだな……人手がないのか……」
あ。
ぼんやりと話を聞いていたら社長と目が合った。
……見なかったことにして目を逸らす。
「……セン。お前、一緒に来い」
「無理だ」
「キャッチぐらいできるだろう。来い」
「服が無い」
「社内にいるやつに借りればいい。いいから行くぞ」
……さっさとダンジョンに行っていればよかった……
桃じゃダメだったのか。え、広告塔?
なんで俺が……




