Aランク
週末、俺は一人で東京に来ていた。
Aランクの昇格には探索者協会本部での面接が必要だからだ。
ま、いつも通りやればいいだろう。
入館証を受け取り、案内されるままに協会の受付を通る。
本部の中はきれいでシンプルなつくりになっていた。
壁がガラス張りだ。天井も高い。
足音が反響する。
しばらく歩くと、部屋にたどり着く。
「では、お入りください」
「ああ」
ガチャリと扉を開く。
中には面接官が3人。
ん、真ん中の人は見覚えがあるな。
選手権で最後に話していた協会長か。
「よく来てくれた。さ、座りたまえ」
「ああ」
「……君ほどの実力があれば、ここに来るのはおかしくない。思っていたよりも早かったがな」
用意されていた椅子に座り、協会長を見る。
協会長は楽し気に笑みを浮かべている。
「君にも、そして桃にも聞きたいことがある」
「なんだ」
「そうだな……まず、Aランクになるということをどう思うかね?」
「……どう思うか?」
Aランク……たしか近隣でのダンジョンブレイク等災害が起こった時にほぼ強制で出動義務が発生するんだったか。
他にも色々とあったが。
「別に。今までと変わらない。呼ばれたら任務はやる」
「それだけかね?」
「他に何か?」
「ふふふ。そうか……事件によっては出動依頼が警察からも来るが、それもわかっているね?」
「ああ」
「では、私からもいいですか」
順番に普段の探索、会社での様子。他にも色々な質問を受ける。
ある程度答えたあと、桃に変わるように命じられる。
「ふむ、魂の分化に立ち会うことができるとはね」
「は、はあ……」
「いや、かしこまらなくてもいい。センも君も、同じ人物なのだろう?」
桃に戻った途端、肩に力が入る。
センの堂々とした姿が自分のことながら信じられない。
そして私への質問として、普段の様子や、人間関係のことを聞かれる。
「ではこれまでにしようか」
「あ、ありがとうございました。失礼いたします……」
ぺこりと礼をして部屋を出る。
扉を静かに閉めた後、ふうと胸を撫でおろす。
大丈夫だっただろうか……そして相変わらずセンだと取り繕わないな。
再びセンに変わる。
案内の人が二度見した。
「あ、で、では、しばらく受付前で座ってお待ちください。探索者名でお呼びいたします」
「ああ。分かった」
結構色々と聞かれたな。
適当に端の椅子へ座り、ぼんやりと名前が呼ばれるのを待つ。
……ん、誰かこちらへ向かってきた。
「君……久しぶりだな。どうしてここへ?」
「……ん?」
「まさか、忘れたのか?僕だよ、カナタだ!」
近づいてきた男の顔をじっと見る。
カナタ……ああ、あの白い勇者か。
鎧が無いと分からんな。名前を覚えるのは苦手なんだ。
「あー、うん。覚えてる」
「……本当か?あやしいな……じゃなくて、君この辺の地区じゃないだろう?なぜ本部に?」
「面接だ」
「面接……って、昇格したのか!?選手権の時Bだったんだろ?早すぎないか!?」
「ソロだと上がりやすいらしいな」
愕然とした表情で見たあと、信じられない、とぶつぶつと呟きながら頭を抱えている。
「……お前も本部に用があるんだろ」
「あ、ああ。僕は本部の運営する、ダンジョン攻略をメインとしているギルドに入っているんだ。定期報告に来ているだけだよ」
「へぇ」
「まあたまに災害援助や事件鎮圧にも呼ばれるけれど」
ギルドにも色々あるんだな。
聞けば各地を回ってダンジョンや魔物の傾向なんかを確認したりもするらしい。
初めて会ったときもその仕事中だったんだろう。
「……そうだ。そういえば、魔人化の調子はどうだ?制御できているか?」
「……大丈夫だ」
「ならいいんだけど。制御しきれずに壊れていく人はもう見たくないからね」
「……」
事件鎮圧の現場にはそういった例もあったのだろうか。
カナタの顔に影がかかる。
「探索者名センさん、受付までお越しください」
「ああ、行ってくるといい。そうだ、Aランクおめでとう。僕もすぐ追いつくよ」
「そうか」
カナタと別れ、受付へ向かう。
無事カードを受け取り、俺はAランクとなった。
……カードの色が少し違うな。角度を変えるとうっすらと金色に光っている。
なんだか随分と目立つカードになってしまった。
カードを仕舞い、本部を後にする。
東京の空を見上げる。
さて、帰るか。




