名前
出社初日。服装は自由で良いと言われたので数少ない男物の服からあまり派手ではないものを選ぶ。なんだか全身真っ黒になってしまうが、まあ動きやすいし良しとしよう。
ガチャ、と会社の扉を開ける。
「あれ、篠山くんじゃん!おはー」
ミナが元気に挨拶をして、レオが肩をすくめる。
「おはよう。社長命令でな、とりあえずは研修期間ということで俺らも同行することになった」
「ああ、おはよう」
「おはようございます」
昨日同行したパーティの皆が口々に挨拶をする。
出勤のボタンを押し、そのまま連れられて昨日と同じダンジョンへ向かう。
「それにしてもさー、毎回篠山くんって呼ぶのも面倒だし、何か探索者名考えなよ!」
「確かにそうですね。けれど毎回呼ばれることになるものですし、ちゃんと考えた方が良いですよ」
「考えておく」
そのままモモという名でも良いが、この体とは呼び分けた方が良いだろうか。
そんなことを考えながら魔物を葬っていく。
「なあ、俺、さっきから全然剣を使えないんだが」
「僕も詠唱してるうちに終わってしまう……」
パーティの中に「こいつもう一人でいいんじゃないか?」という思いが出ていることも知らず、ただ目の前に来る獲物を狩り続ける。
「う~ん……」
「ミナ?どうかしましたか?」
「ん?いや、ちょっと考え事……」
ずっと腕を組みなにやら考えているミナ。その後も探索は順調に進む。
そうこうしているうちに時間は昼に近づき、一度戻ることになった。
「会社に戻って飯にするか」
「篠山くん、君はずっと戦ってるし、一度休憩にしよう」
「わかった」
「私達はついて行ってるだけですけどねぇ」
「ほんとに最近潜り始めた新人なの?敵倒すスピード半端ないんだけど!」
コンビニ弁当をあたため、会社の休憩室で食事をする。午後は事務処理について教えてくれるそうだ。
「うーん、そうだ!ねえ聞いて!」
「さっきからずっと悩んでいた件ですか?なんです?」
「篠山くんの探索者名、思いついてさ!」
「ほう、なんだ、言ってみろ」
「セン、っていうのはどう?」
思わずミナの方を向く。
「セン?理由とかあるのか?」
「えーっと、篠山くんってさ、どんどん敵倒していくじゃん?で、千の魔物の死体を積み上げそう……ってのが理由!」
「なんとも物騒な理由だな。あー、篠山くん、気にしないで良いからな」
自分では良い名前は考えられそうにないし、と思っていたところだ。丁度いい。
「ん、じゃあセンでいい。」
「え、本当に?採用?」
「ああ」
そんなこんなで俺の名前はセンになった。後日、探索者協会で探索者名の変更をして、それは正式なものとなった。
その後レオ達から俺に必要な事務処理について教わり、想定よりも早く研修期間が終わった。
そうだな、一つ言うならば、思っていたより書類仕事があるんだな。




