事情
「さて、入社と言うには簡単だが、手続きもしなければな。ああそうだ、探索者カードはあるか?」
「ああ。これか」
探索者カードとはダンジョンに潜る際に必要となるものであり、その探索者のランクを示すものでもある。理屈は分からないが少し特殊な作りになっているそうで、魔物を倒した際に得られる少量の魔力を読み取ることができるそうだ。一定の量が貯まればランクを上げられるんだとか。ちなみに、はじめはFランク。その後Dまでは自動的に上がるがC以上は探索者協会の面接がある。最高ランクのSはそれに加えて何か大きな功績が必要だ。
「ん、魂、分化者?この備考欄は?」
「あー、分かりやすく言うと俺は体が二つある。今のこの体は後から生まれたものだ」
そう言って体を桃本来の姿へ戻す。
「探索者登録しているのは男の体なので、男性体での出勤が多くなると思います」
「っ……な、なるほど。名前は聞いたことがあったが実際に見ると驚くな。言葉遣いまで変わるのか」
「まあな」
再び男性体へと変化し、衣服を整える。
驚愕の表情でその様子をまじまじと見て酒井社長は、何か考えているようだ。
「事情は分かった。中々に面白いものを見せてもらったよ。ああ、もちろんプライバシーもあるので言いふらしたりはしない」
魂分化について少し調べるか……とつぶやく社長を尻目に差し出された書類に記入していく。
「では明日からよろしく頼む。基本的に出社時と退勤時は会社に顔を出してくれ。体調のチェックや収穫物の査定もあるしな」
「分かった」
いくつかの確認と全ての書類のやり取りを終え、帰路につく。
新しい仕事、どれだけ続くかは分からないがやれるだけやってみよう。




