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海上の戦い

沖の影が近づいてくる。まだ海水浴場から離れてはいるが……


「おい、あれ……やっぱりこっちに来てないか?」

「……そう、見えるね」


俺たちの他にも何人かが気づいているようだ。

浜辺に戻ってくるよう呼びかける声が聞こえる。

……一応戦う心づもりでいるか。

鞄を引き寄せ、中に鎌があることを確認する。

一応持ってきていて良かった。

再び海へ目を向けると、影のある部分が盛り上がり、巨大な触手が現れる。

タコかイカか……クラーケンとかいう魔物もいたな。

……さすがにこれ以上はまずいか。

ついに人がいるエリアへ入ってくる。


「っ、おい!皆浜辺へ戻れ!魔物がいるぞ!」

「レオ、避難誘導しよう!他の皆も、すぐ逃げられるようにするんだ!」


レオ達は一般客への呼びかけをし始めた。

浜辺は急に現れた大型の魔物に混乱状態に陥っている。


「……行ってくる」

「は?おい、セン。なにを……」


パーカーを脱ぎ捨て、鞄から大鎌を取り出す。

裸足のまま海へ向かって走る。


「おい、待て!……あいつ、沖まで泳ぐ気か?」


レオの呼びかけを聞き流しながら走る。

まあ、いけるだろう。





sideアークマテリアル


センが鎌を持って海へ走っていくのが見える。


「あいつ、どうする気だ?海の真ん中で……」


レオの心配はよそに、センはスピードを上げて走り、そして海の上を駆け抜けていく。


「は?センのやつ、海走れるのか!?」

「いや、違う。よく見たら足元にあの蜘蛛脚を出している!」


センは海面すれすれの所に一定間隔で蜘蛛脚を出現させ、足場として使っている。

時折空中に蜘蛛脚を出し、海の上を縦横無尽に跳び回る。

一本、また一本と触手が切り落とされる。

怒り狂った魔物が海から顔を覗かせた。


「ローブを着ていない分、いかに人間離れした動きをしているかが分かりやすいな……」

「なんであの攻撃を躱せているのか……後ろに目が付いているかのようだね」


とん、と一度高く跳び上がったかと思うと、魔物の真上で大きく体をひねる。

そして真下に向かって大鎌を振り下ろす。

ザン、と大鎌が海を裂く。

浜辺からは三日月型の攻撃の残影がはっきりと見えていた。

魔物は真っ二つになり、海に漂っていく。

倒したことを確認したセンが海の上を渡り戻ってくる。


「あー……センってばまたSNSで騒がれちゃうね」


ミナの言葉通り、周囲ではスマホを向けている一般客が何人もいた。

周りの客は、センが浜辺へ戻ると拍手をして賞賛の言葉を向ける。

特に応じるでもなく、パラソルの元へ戻ってくると、鞄から手入れ道具を出して鎌をぬぐっている。


「センさん、みんなめっちゃ見てますよ。なんか言わなくていいんすか?てか何やってるんすか?」

「ん、手入れ。海水に触れたしな」


そのいつもと変わらない、落ち着いた様子に影響されたのか、浜辺の雰囲気は徐々に戻っていく。

その後、一般客の何人かがセンに声を掛け、握手にだけ答える。

もちろんセンの戦闘シーンはSNSで広まり、新たな死神伝説の一つとして話題になった。


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