ナンパ
ぼんやりと海を見ていると、あたりにソースの良い匂いが漂ってくる。
「よし、焼きそばできたぞー。皆食べに来い!」
「やった、社長、ありがとうございます!」
社長が次々と焼きそばをよそって社員に渡していく。
そういえば、今日はちゃんとした食事をまだ取っていないな。
「ほら、センも食え」
「ん、ああ」
俺の分も用意してくれたみたいだ。
受け取って食べていると、匂いにつられてか何人かがパラソルの元へ戻ってくる。
……なにか飲み物も欲しいな。
自販機が近くにあったはずだ。買いに行こう。
鞄から財布を出し、人気の少ない自販機コーナーへ向かう。
……だから…………でしょ!
何か言い争っている声が聞こえる。知っている声だ。
一応のぞいてみるか。
「別にいいじゃん!ちょっとぐらい」
「そーそー、せっかくの海なんだしさ?遊ぼうぜ?」
「間に合ってます!もう、なんなの!?」
「あの、私達ほんとにぃ、もういいのでぇ……」
「……どうした。二人とも」
ルナとミナの姿が見え、とりあえず声を掛ける。
二人の周りにはチャラそうな男が三人いた。ナンパか?またベタな……
「あ、セン!」
「センさん!」
「何、知り合い?」
「男は呼んでねぇから。失せろよ」
どうしたものかと思っていると、ルナとミナが俺の元に寄り、がっしりと俺の両腕を掴む。
……二人の顔が逃がさないと言っている。
はあ……仕方ない。
「……そっちこそ、『失せろよ』」
少し、ほんのすこーしだけ威圧する。
しかし、それだけでも効果はあったようで、男たちは顔を青くして後ずさる。
「まだ何か用が?」
「い、いや。何もない……っす」
「すんませんした!」
「お、おい、行くぞ!」
震える声と足でそそくさと逃げ帰る男たち。
この威圧感が教員時代にも出せていたらな、と思わなくもない。
はあ。いらんことを考えてしまった。
「セン、ありがとー!マジで!」
「助かりましたぁ、ありがとうございますぅ」
やっと二人に腕を解放される。
どうやら二人も飲み物を買いに来たところを狙われてしまったらしい。
お礼だと言ってジュースを奢ってもらい、社長たちの元へ戻る。
大繁盛している社長の焼きそば店を横目に、再び日陰へ座る。
ジュースを飲みながら沖の方を眺める。
……何か、影のようなものが見えるな。
「おい、ノア。なんか沖にいねぇか?」
「ああ、海の魔物だろう。海の深い所はダンジョンと同じく魔力が貯まりやすいからな。そこで魔物が生まれることもある。生身の人が立ち入れる場所には普通来ないから気にしなくていいだろう」
「へぇ」
ふと見ると、レオも沖の方を見ていた。
しかし、あれは結構大きいな。
海の魔物は大きくなりやすいとかあるのだろうか。
……なんか、浅瀬に近づいてきていないか?




