海
適当にネットで買った黒い水着。そして灰色の薄手のジップパーカーを着て、浜辺に足を踏み入れる。
暑いので普段はおろしている、少し長くなった髪を後ろで縛っている。
砂浜は太陽の照り返しで白く輝き、裸足で歩けばやけどしそうなほど熱されている。
風が吹き、潮の匂いが広がる。
「お、セン。早かったな。ちょっとこっち手伝ってくれ」
「ああ」
荷物を置き、社長たちの手伝いをしていく。
パラソルを開き休憩スペースを確保してから、海の家から鉄板やコンロなどを運ぶ。
「何か作るのか」
「おう。焼きそばでも作ろうかと思ってな。センも食べろよ」
「お、いいですね、社長。楽しみにしてます!」
一通り準備し終わった所に着替え終わった他の社員たちも合流する。
ビーチボールや浮き輪など、それぞれが思い思いに手にもっている。
あ、ミナが走ってくる。
「セン!ちょっと、何この地味な水着。また黒じゃん!どこで買ったの!」
「ネット」
「ウソ、せっかくの海なのにー!」
「まあまあ、ミナ……」
ミナは赤いタンクトップビキニを着ている。胸元にフリルが付いていて、快活なミナに良く似合っている。
後から追いついたルナは白いシンプルなビキニと、腰にパレオを巻き、麦わら帽子をかぶっている。
周囲の人間がちらちらと二人を見ているが、本人達は気が付いていないようだ。
「しかし暑いなあ!早く海に入りたいぜ!」
「僕は日陰で座ってようかな……」
レオとノアもやってきた。
レオはさすが戦士と言わんばかりのがっしりとした体で堂々と歩いている。
ノアは水着を着ているものの、上にシャツを着て泳ぐ気はなさそうだ。
「……ふむ、なるほど」
「なんだ」
「いや、お前着痩せするのかと思ってな。思ったより筋肉がついてる。探索者始めてからそんなに期間経ってないだろうに」
「いつもあの重そうな大鎌を振り回してるしね。体幹ありそうだよね」
「あら?センさん、脇腹に傷跡が……」
「ほんとだ。よく見たらなんか細かい傷結構ついてない?」
そう言われて自分の体を見る。
見れば脇腹だけではない。腕や肩にも古い傷跡が残っていた。
「ああ、まあ大した傷じゃない」
「はあ……こんなに怪我を黙っていたんですねぇ」
「昔の傷だ。気にするな」
回復魔法では古傷は治らない。
探索者でも傷跡が残る者は少ない。普通は怪我をした時点で回復役が治すからだ。
俺はソロだからな……まあこんなものだろう。
なにか言いたげなルナ達を無視して日陰に座る。
他の社員たちも好きに行動しているようだ。すでに海へ行っている者もいる。
「あれ、センさん。泳がないんすか?」
「ん、ここで見てる」
松下が声を掛ける。
「なんか、センさんかっこいいすね……高身長で細マッチョとか、憧れるっす……」
「……そうか」
「僕も筋トレしようかな……」
何かを決意した松下はレオの元へ走っていった。
筋トレ方法でも伝授してもらうのだろうか。
ぼんやりと海全体を見る。それなりに一般客もいるな。
あ、レオが一般客らしい男と握手している。ファンだろうか。
……風が吹き前髪が顔をくすぐる。
たまにはこんなゆっくりした時間も悪くない。




