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復帰

朝。久しぶりの出社。

太陽に照らされる道を歩きながら考える。

ここ数日は警察の事情聴取で何度か呼ばれた。

返してもらったスマホは画面に罅が入っていた。使用する分には特に問題なさそうなので良しとするか。

あのあと施設は押さえられ、関わった者たちもそれぞれ確保されたらしい。

連日ニュースは大騒ぎだそうだ。

俺以外の失踪者は……助からなかった。

一歩間違えると俺と桃もそうなっていたかもしれない。

……もう会社に着くな。

明るく清潔な玄関を通り、オフィスのドアを開ける。


「おはよ、う?」

「センさん、ご退院、おめでとうございます!そして、おかえりなさい!」


拍手と共に大きな声で祝われる。

社員全員が俺に声を掛けてくる。


「もう、大丈夫なんだな」

「ん、ああ」

「本当に、良かったですぅ」

「皆、心配していたんだよ」

「セン!これ!」


ミナが何かを持ってくる。

包みを二つ手に持っているな。


「これはみんなからのプレゼント!これがセンの。で、こっちはモモに!」

「そうか。ありがとう」

「センには武器の手入れセット。モモにはお菓子と紅茶の詰め合わせだよ」

「……これ、高いやつじゃないのか」


このブランド、見たことがあるな。

それにわざわざ桃の分まで。

同一人物なのにそこまで気を使ってもらえるとは。

……それだけ心配をかけたのだろう。


「セン、おかえり。帰ってきてくれて本当に良かった。これからも、うちのエースとして働いてもらうからな。でも無理はするなよ?」

「……ああ」


社長が笑いかける。

後ろでレオがやれやれといった表情で首を振っている。


「あーあ、ついにエースの座を取られちまったなあ。ま、いつかこうなるとは思っていたが」

「いやー、後輩に抜かされちゃったね」

「うふふ、私たちも頑張らないとですねぇ」

「思っていたより早かったね。さすがセンだ」


さ、仕事だ。と社長が号令をかけ、皆が動き始める。

俺もダンジョンへ向かおうとすると、レオに声をかけられる。


「ああ、セン。今日はダンジョン組もここで仕事だ。備品の整理を手伝ってほしいんだとよ」

「そうか、わかった」


恐らく社長が仕事を調整したのだろう。

俺としては今すぐダンジョンへ行っても構わないのだが。

積み上がった段ボールの山を移動させながら、たまにはこういう仕事もいいかと思う。




昼休み。

休憩室のソファで休んでいると、ノアが話しかけに来た。


「あのさ、例の空間魔法のことなんだけど。君、魔力の操作を覚えたら空間魔法そのものも使えるようになるんじゃないかと思って」

「……ふむ。操作方法か」

「少し試してみないか?」


ノアが提案する。

専門用語はよく分からないが、とりあえず言われた通りに魔力を動かす練習をすることになった。


「まずはそうだな……君、魔力は感じられるんだよね?」

「ああ」

「じゃあその感じている魔力を動かそう。例えば……指先に持ってきて魔力の糸を作れるかい?」

「ん、やってみる」


体内である程度魔力は動かせる。

それを、指先に……糸のように細く……?

……む。


ニュッ


指先から小さな蜘蛛脚が出てきた。


「ちがぁう!それを出してどうするんだ!」

「……難しい」

「純粋な魔力だけを出すんだ!」


何度かやってみる。

たまにちゃんと魔力が出せても、ノアの言う細い糸のようにはならない。


ニュッ


「ああ、また……」

「うーん」

「あら、何をしているんですかぁ?」


休憩室の端でああでもない、こうでもないと試していると、ルナもやってきた。


「ああルナ。君、魔力の操作がうまいだろ?あれ、何かコツとかないかい?」

「え、魔力の操作、ですかぁ?……う~ん、私は感覚で何となくできるようになりましたからねぇ」

「君も感覚タイプだったのか……」

「うーん」


ルナを含め三人で試す。

しかしうまくいかない。

そもそもそんな細かな操作が出来るものなのか?それとも俺が下手なだけなのか?


「なあ、さっきからあの三人は端で何をしてるんだ?」

「さあ、知らない。なんか前にノアが、センが妙な力を手に入れたーって言ってたからそれのことかなあ」


通りかかる職員がちらちらと見てくる。

こちらに歩いてくるレオとミナ。

レオが机の端に置いてあった飲み物に当たり、床に落ちそうになる。


「あ」


スイッ


「え?」


床から蜘蛛脚が一本飛び出し、器用に飲み物を掴む。

ぎょっとした顔で固まる二人。

かまわずに蜘蛛脚で元の位置に戻す。

仕事を終えた脚は地面へ沈み込むように消えてなくなった。


「えっ、えっ。何!?今の!?」

「なんか、出た……」


混乱する二人を落ち着かせ、事情を説明するノアとルナ。

その間も魔力の操作を試みるが、やはりうまくいかない。


「……なんかもう、空間魔法とかいらないんじゃない?今のままで……」

「同感だ。なんというか、規格外すぎてどう思えば良いのかわからん」


ミナの言う通り、もう今のままで十分役に立ちそうだ。

ノアは少し不満そうだが……俺には魔力操作の才能は無かったのだろう。


「そもそも今の蜘蛛脚も理屈が分からないんだけど……もしかして空間魔法じゃなくてマガツグモが本体なのか……?」


できるものはできる。それで良い。

それにこの実験で蜘蛛脚が俺の体からも直接出せることが分かった。

使いどころはまだ分からないが……

もういい時間だ。

そろそろ午後の仕事へ向かうとするか。


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